鶏肉販売は暑さで不振、生産はほぼ順調 日本食鳥協会理事会

直近の需給動向や諸課題について活発に情報交換した

(一社)日本食鳥協会(佐藤実会長)は8月24日に平成30年度の第3回理事会を開き、鶏肉の需給動向や支部の活動、事業の実施状況などを報告した。

冒頭あいさつした佐藤会長は「暑さによる影響で人間は弱っているが、鶏は意外に丈夫で、熱死もゼロではないものの、あまり大きな被害にはなっていないようだ。そのような意味で生産は順調なため、内需拡大や輸出増加にしっかり対応していく必要がある。昨日の部会で、もも肉は少し苦戦しているが、そのほかは不足する部位も出てきているという話もあり、9月に入ると鶏の季節だと思っている。消費が順調に伸びることを期待している。食品メーカーなどの後押しも今後、予定されているため、多方面からご協力いただいて鶏肉の消費拡大につなげていきたい」などと述べた。

種鶏ふ卵部会の森泰三部会長は「部会の会員から今回、8月の理事会でひな価格の値上げをお願いできないかと依頼された。鶏肉相場が低迷している時期で申し訳ないが、このままの状態で推移すると、ひなの安定供給に支障が出る。今回の理事会を通して情報を発信していただくことと、支部の会議などで議論していただければありがたい。我々の部会だけでなく、他の部会の方々も厳しい状況にあることは重々承知しているが、種鶏ふ卵部会長としてお願いする」とし、ひな価格の値上げに対する理解を求めた。生産加工部会の阿部繁之部会長は、ひな価格の値上げを期間限定で了承したインテの事例を紹介した。

各部会からは、鶏肉の需給動向について次のように報告された。

▽生産加工部会=生産面では暑さの割に鶏は死なず、熱死も多少あったが順調に育っており、体重も予定通りの3キロくらいで、すこぶる順調。大腸菌症の発症が多少あったようだが、大きな問題にはならない。その反面、販売面はだぶついているが、きも、ささみ関係は夏の需要があるため、順調に推移している。

▽荷受部会=7月は猛暑で売れ行きが悪く、消費地での凍結在庫が増えている。特に、もも肉を中心に相当な在庫になっており、各荷受とも頭が痛い。むね肉、ささみ、きも、手羽先の売れ行きは順調。8月のお盆明けから少し涼しくなり、売れ行きも少しずつ戻っているが、全体的には手羽元、もも肉、砂肝は余剰感がある。

荷受のユーザーである量販店や小売り関係をみると、都市型の小売り・外食は比較的好調で、郊外型は少し厳しい。都市型の居酒屋関係は売れ行きがとても良く、郊外型は猛暑で外に出づらいため、調子が悪い。ブラジル産もも肉は高い相場で動いているため、国産とのすみ分けができており、ブラジル産の解凍品がスーパーに出回ることは、今のところあまりない。

関西、特に中国地域は地震や台風、豪雨による影響で、小売りも含めて休業や営業時間の短縮によってかんばしくないという話も出た。9月に入ると学校も始まり、涼しくなって、需要が回復することを期待している。最近、売れ行きが悪い時期に量販店などへのセールスが単調で価格の話だけになっている。本来は1次加工、1.5次加工などを提案したいが、人手不足により価格競争に終わっていることを反省している。

▽小売部会=〝暑すぎて物が動かない〟の一言に尽きる。7月は西日本を中心に豪雨や台風による影響で、休業や営業時間の短縮により売り上げが落ち込んだ。昨年はアニサキスの食中毒が多く発生し、需要が魚介類から畜産物にシフトした実績の反動も影響している。暑すぎて家から出たくない、家で調理したくない、生肉を持ち帰りたくないという消費者の気持ちも影響したのではないか。

夏祭りや花火などのイベントで焼き鳥が大量に売れるが、今年は暑すぎて主催者が熱中症などを懸念してイベントを中止したことも売り上げに影響した。

8月に入り、生鮮品は全般的に動きが悪い。8月7日に「林修の今でしょ!講座」というテレビ番組で焼き鳥が取り上げられ、健康効果を考えた時に名医が夏にすすめる焼き鳥の部位は1位レバー、2位ねぎま、3位砂肝であった。うちの店では翌日から焼き鳥の売り上げが150%に伸び、生鮮品のきも、砂肝などの内臓系も瞬間的に伸びた。焼き鳥はお盆明けでも好調に推移している。

給食や居酒屋からは加工品のオーダーが来るが、こちらも人手不足で対応しきれていない。都心では時給1200~1300円で求人を出してもパートが集まらない。

▽種鶏ふ卵部会=6月と7月は種卵の在庫が非常に多く、余剰感が強かった。この要因としてはチャンキーの生産性が向上したことと、日本養鶏協会の鶏卵生産者経営安定対策事業の成鶏処理・空舎延長事業が発動した関係で種鶏をアウトできない時期があり、種鶏の数が多かったことが挙げられる。7月下旬から種卵の問い合わせが増えてきた。全国的に猛暑で、特に岐阜県、愛知県、瀬戸内地域は暑かったと思うが、これら地域の孵卵場から問い合わせが増えているため、暑さによる受精率の低下などが想定される。これから年末需要期を迎えるが、全国的にバランスを取れば、需要期の入雛は問題ないと思っている。