鶏卵生産者経営安定対策事業は55億円に拡充 令和2年度の農水省概算要求

農林水産省は8月30日、令和2年度予算の概算要求をまとめ、財務省に提出した。このうち、採卵養鶏の「鶏卵生産者経営安定対策事業」は前年度を5億9600万円(12.3%)上回る54億5800万円に拡大されたほか、新規の「鶏卵・採卵鶏需給改善支援」は5億4800万円となっている。

新規に「鶏卵・採卵鶏需給改善支援」

農林水産省の令和2年度予算の概算要求は公共事業と非公共事業合計で2兆7307億円。今年度(令和元年度)予算を18.2%上回っている。

養鶏関係の主な予算は次の通り。

「鶏卵生産者経営安定対策事業」は、鶏卵価格が低落した場合に価格差補てんを行なうとともにさらに低落した場合、成鶏の更新に当たって長期の空舎期間を設けて需給改善を図る取り組みを支援し、鶏卵生産者の経営と、鶏卵価格の安定を図るもので、同事業が始まった平成23年度の約52億円を上回る54億5800万円(前年度48億6200万円)に拡充された。

令和2年度の鶏卵生産者経営安定対策事業

事業は価格差補てんと成鶏更新・空舎延長事業の2本立て。民間団体等に委託して行なわれ、令和2年度が事業の新しい3か年の4期目となる。国の予算は、これまでは単年度ごとで、事業で使い切れば打ち切り、余れば残額を年度末に国に返還していたが、生産者団体の要望もあり、国の予算が残れば次年度に繰り越す3か年の基金化を財務省に要請する。

『鶏卵価格差補てん事業』では、鶏卵の毎月の標準取引価格が補てん基準価格を下回った場合、平成23年度からの第1期と同じように、経営規模にかかわらず、その差額の9割を補てんする(補てん基準価格と安定基準価格の差額が上限。加入に当たっては、成鶏更新・空舎延長事業への協力金が必要との要件は現行と同じ)。財源は積立金で、国が1、生産者が7(前年度までは3)の割合。

『成鶏更新・空舎延長事業』では、鶏卵の毎日の標準取引価格が安定基準価格を下回った場合、その下回る日の30日前から上回る日の前日までに、更新のために成鶏を出荷し、その後60日以上の空舎期間を設ける取り組みに対する奨励金を交付するもの。2年度からは、交付する奨励金(現行は10万羽以上規模は1羽210円以内、10万羽未満層は1羽270円以内)を充実するほか、成鶏を処理する食鳥処理場に対する奨励金(現行は1羽23円以内)も増額する。財源の協力金は国が3、生産者が1の割合。

「鶏卵・採卵鶏需給改善支援」は、鶏卵の需要に応じた生産・供給の取り組みを推進するため、①鶏卵の生産者、卸売業者、加工業者などによる鶏卵の需給見通しの作成への取り組み②粉卵、成鶏肉の国内外での需要を創出するため、国産粉卵、成鶏肉を活用した新商品開発にかかわる技術開発、機械整備等――を支援する新規事業で5億4800万円。①の需給見通しの作成は民間団体等に定額で委託。②の新商品開発事業は民間団体等に2分の1以内、定額で支援する。

「食肉等の流通合理化に向けた施設整備への支援」は、安全で高品質な国産食肉等の供給体制を構築するため、流通・処理コストの低減や、製品の高付加価値化等に必要な食肉等流通処理施設(産地食肉センター、食鳥・鶏卵処理施設、家畜市場)の整備を支援するもの。補助率は3分の1以内(衛生管理施設、ハラール対応施設、動物福祉対応施設等は2分の1以内)で、上限額は20億円。〝強い農業・担い手づくり総合支援交付金〟296億700万円(前年度230億2400万円)の内数。