鶏卵・肉の放射性物質 4月以降は「不検出」続く
東京電力の福島第1原子力発電所から放出された放射性物質による農畜水産物の汚染が心配されている。畜産物では当初、汚染された牧草を食べた福島の原乳などで暫定規制値を超えていたため、出荷制限措置が取られ、農林水産省は汚染したとみられる牧草などの給与を禁止するよう各県や生産者団体に通知した結果、原乳などからの放射性物質は徐々に規制値を下回り、出荷制限の解除が続いていた。
しかし、原発から30キロメートル以上離れた地域で、野外で乾燥させていたとみられる稲わらを食べた牛肉から、暫定規制値を超えた放射性セシウムが検出され、福島県の牛肉出荷が停止された。福島県では、全頭検査と出荷できなくなった牛の全頭買い上げ、出荷制限解除のためのルールの明確化などを政府に対して緊急要望した。放射性物質に汚染された稲わらを食べさせた牛肉の問題は、福島県だけでなく、他の県にも波及しており、消費者の国産畜産物に対する信頼が失われることが懸念されている。
福島原発事故で放出された放射性物質の量は、専門家の間でもさまざまに推測されている。放射性物質が特に問題とされるのは、体内に入って免疫機能の遺伝子を破壊することで、小さな子供ほどその影響は大きいとされている。このため子供を持つ母親は、体内(内部)被曝を避けるために、遠く離れた産地の食べ物を共同購入したり、より安全な所へ子供を疎開させるなどの自衛策を取るケースも目立っている。
鶏卵や鶏肉については、鶏舎内で飼養されていることや、エサは輸入原料を主体とし、飼料工場で配合された配合飼料ががほとんどのため、各県の検査でも、ヨウ素やセシウムの放射性物質はほとんど検出されていない(左表参照)ため、安全だとみられている。
ただ、放出された放射性物質は風に乗って拡散し、その後の雨によって福島県内だけでなく、広範囲にわたって農作物や土壌を汚染したとみられている。現在は水素爆発や核爆発の可能性が少なくなり、放出量も減っているとみられるものの、依然として放射性物質の放出が止まっていないため、警戒を続けなければならない。汚染された稲わらによる牛肉の出荷停止を教訓に、養鶏の現場でも、使用するエサや水だけでなく、日常の管理面でも細心の注意を払い、消費者に不安を抱かせないように取り組む必要がある。