令和2年の食中毒 事件数は減少、患者数は増加

アニサキス1位、カンピロ2位

厚生労働省は、3月22日に薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会(部会長=五十君靜信東京農業大学教授)をオンライン形式で開き、令和2年の食中毒発生状況などを報告した。

令和2年は新型コロナウイルスの影響で飲食店の利用が少なかったことなどから、食中毒事件数は前年比174件減の887件で直近20年では最も少なかったが、患者数は大規模事例の発生もあって1595人増の1万4613人となった。

患者数が500人以上の大規模事例は、埼玉県の飲食店で2958人(6月26日、海藻サラダ、病原性大腸菌O7H4)、東京都大田区の仕出屋で2548人(8月28日、不明〈仕出し弁当〉、毒素原性大腸菌O25〈LT産生〉)、山形県の仕出屋で559人(12月21日、不明〈当該施設が調製した弁当、推定〉、ノロウイルスGⅡ)の合計3件(前年は0件)。

死者が発生した事例は①鹿児島県の家庭で1人(1月31日、グロリオサ球根〈推定〉、植物性自然毒)②栃木県の家庭で1人(8月2日、野生のキノコ、植物性自然毒)③徳島県の家庭で1人(10月13日、フグ、動物性自然毒)――の3件3人(前年4件4人)。

病因物質が判明した事例のうち、事件数が最も多かったのはアニサキスの386件(前年比58件増)、次いでカンピロバクター・ジェジュニ/コリ182件(同104件減)、ノロウイルス99件(同113件減)、植物性自然毒49件(同4件減)、動物性自然毒35件(同7件増)の順。サルモネラ属菌は33件(同12件増)であった。

患者数が最も多かったのはその他の病原大腸菌の6284人(同5911人増)、次いでノロウイルス3660人(同3229人減)、ウエルシュ菌1288人(同122人増)、カンピロバクター・ジェジュニ/コリ901人(同1036人減)、サルモネラ属菌861人(同385人増)の順。

原因食品・食事が判明した事例のうち、事件数が最も多かったのは魚介類の299件(同26件増)、次いで複合調理食品45件(同8件減)、野菜およびその加工品43件(同3件減)、肉類およびその加工品28件(同30件減)、魚介類加工品13件(同3件増)の順。卵類およびその加工品は2件(同2件増)であった。

患者数が最も多かったのは複合調理食品の4403人(同3235人増)、次いで魚介類711人(同118人減)、肉類およびその加工品682人(同144人減)、野菜およびその加工品161人(同98人減)、卵類およびその加工品107人(同107人増)の順。いずれの分類にも該当しないその他の事件数は284件(同176件減)、患者数は8089人(同639人減)であった。

原因施設が判明した事例のうち、事件数が最も多かったのは飲食店の375件(同205件減)、次いで家庭166件(同15件増)、販売店49件(同1件減)、事業場31件(同2件減)、仕出屋26件(同7件増)の順。

患者数が最も多かったのは飲食店の6955人(同333人減)、次いで仕出屋4310人(同3442人増)、事業場984人(同119人増)、製造所631人(同240人減)、旅館508人(同1211人減)の順。

都道府県別では、事件数は北海道113件(同7件増)、東京都113件(同6件減)、神奈川県59件(同14件減)。患者数は東京都3358人(同2493人増)、埼玉県3136人(同2837人増)、福岡県674人(同356人増)の順に多かった。

月別では、事件数は10月の123件(同20件増)、患者数は6月の4003人(同3139人増)が最も多かった。一方、緊急事態宣言が出されていた4月の事件数は30件(同77件減)、患者数は53人(同1341人減)で最も少なく、5月の事件数は56件(同43件減)、患者数は337人(同721人減)であった。

令和2年(2020年)病因物質別食中毒発生状況(速報値)

食中毒の事件数と患者推移