鶏肉販売の伸び鈍化 食鳥協理事会

迅速なAI対応や補償求める声も

(一社)日本食鳥協会(佐藤実会長)は3月12日、令和2年度の第6回理事会をオンライン形式で開いた。

冒頭あいさつした佐藤会長は「東日本大震災からの10年間に生産基盤が拡充され、ある程度万全な体制になった。生産量の増加に伴い消費量も増え、豚肉を抜いてトップになっている。今シーズンは鳥インフルエンザが史上最悪のペースで発生した。発生防止や発生後の対策について、どのような手を打つべきなのか課題はたくさんある」などと述べた。

理事会では、令和2年度事業の実施状況を報告し、令和3年度事業計画・予算案と㈲松尾孵卵場(香川県三豊市、種鶏ふ卵部会)の入会を了承した。

最近の鶏肉の需給動向について、各部会から次のように報告された。

▽生産加工部会=生産成績は寒さの影響で大腸菌症、腹水症、IB(伝染性気管支炎)が発生して苦戦したが、何とか乗り切った。3月に入って暖かくなり、成績は順調に回復している。むね肉の変性(硬くなる現象)が各地で多く出ている。鳥インフルエンザの関係で工場の稼働を止めなければならなかったところが数社あった。

販売状況は、もも肉、むね肉、ささみ、手羽類は良いとは言えないが、何とか売り切っている状況で、もも肉が凍結に回り始めたところもある。副産物や串関係は外食が思わしくないため苦戦している。

鳥インフルエンザの防疫体制では、宮崎県はスピーディーに対処してくれるが、他県は慣れていないこともあって遅いため、何とかしてほしい。発生農場に対する補償はあるが、移動制限や搬出制限のエリアに入って出荷できず、大きくなりすぎて処分せざるを得なかった鶏に対する補償はないため、考えてほしい。ウインドレス鶏舎を限定とした補助金も、実際には鶏舎の構造を問わずに鳥インフルエンザが発生しているため、どうなのかという意見もある。

▽荷受部会=売れ行きは全体的に落ち着き、鍋物需要はそろそろ終わり。大手量販店の2~3月は前年比100%をやや超えている。産地での大腸菌症などにより5%程度の出荷調整をしているため、入荷量は減っている。生鳥重量は3.3キロとも聞いており、そろそろ荷が潤沢になるが、人の出方によって行楽需要の売れ行きも変わる。

荷受各社は先行きの入荷量が不安で、量販店に特売の話は積極的にしていない。量販店も相場が高くて販売しにくい状況にあり、今後仕掛ていくと売れ行きが上がる期待もある。もも肉、むね肉、ささみ、手羽先、手羽元、砂肝は何とかさばいているが、肝はほとんど凍結に回っている。外食・業務筋もなかなか良い方向にならない。地鶏と銘柄鶏は大変苦戦しており、値引きをして何とか売り切っている。

コロナ禍の影響で世界的にコンテナが不足し、輸入品の通関や船積みが遅れている。実際に輸入畜産物の出回り量が減っており、国産チキンにとっては優位な情勢になっている。

▽小売部会=小売りでは生肉のまとめ買いがなくなり、買い物頻度が以前より増えている。加工品は買い物頻度が増えたことと、飲食店の営業時間が夜8時までの影響で、夕方に焼き鳥やから揚げ、お弁当関係が良く売れている。生肉のような素材は落ち着いてきたが、半製品関係が非常に好調で、これから伸びるカテゴリーだと思う。

業務卸は飲食店の営業時間短縮で引き続き厳しく、1回目の緊急事態宣言の時のように通常の売り上げの40~50%になっている。相場が高くて量販店は特売しにくいという話もあったが、専門小売店では価格をあまり気にせずに販売でき、売り上げを取りやすい環境にもあるため、利益を確保している。これから気候が良くなり、例年では花見や行楽シーズンになるが、今言われている〝おうち花見〟はそれなりに行なわれると予測して対応しなければならない。仕入れはおおむね順調で不足感はない。

▽種鶏ふ卵部会=種鶏の導入羽数は平成30年を最後に500万羽を切り、今年の計画は約480万羽。チャンキーの生産性が向上しているため、種鶏の導入を減らしていることも事実で、ひなの自社生産を7~8割とし、不足分を他社から購入するインテが増えている。これには鳥インフルエンザなどのリスク分散という考えも含まれるが、根本にあるのは自社の余剰分を減らすために他社から購入するという考えのため、蓋を開けてみると種鶏の導入が減っている。

結論としては、全国的に今年は7月末から来年2月まで各社は種卵の確保に動くと予想される。コマーシャルえ付け羽数を前年実績から1.5%増で計算すると、ひなが不足するのは間違いないが、市場が混乱することはない。しかし、今年10月は過不足の数が大きいため、かなりの長期貯卵や若い日齢の鶏の種卵を市場に投入しなければ回らないとみている。