飼料などの生産資材改革の必要性を強調 平成29年度農業白書

政府は5月23日、平成28年度食料・農業・農村白書を閣議決定し公表した。
白書では、冒頭の特集で「日本の農業をもっと強く」と題して、昨年秋にまとめた農業競争力強化プログラム「変動するわが国農業」と題して2015年農林業センサスなどを用いた経営構造分析を取り上げている。
「日本の農業をもっと強くする」ための農業競争力強化プログラムでは、配合飼料製造業の再編と銘柄数の絞り込みや、全農の生産資材の買い方と農産物の売り方の見直しも必要としている。
それによると、わが国の配合飼料製造業は65社115工場で、工場の操業率が93%に対し、韓国は56社95工場で大きな違いはないが、操業率は237%と高く、極めて効率の良い生産体制となっている。配合飼料の銘柄数も、わが国ではメーカーの販売戦略や、畜産経営者の細かい要望への対応などから現在は約1万6000銘柄となっており、1銘柄当たりの年間生産量は1456トンと韓国の約3分の1にとどまっており、このことがコスト高につながっていると分析。
このため、農業競争力強化プログラムでは、多品種少量生産が低生産性の原因となっている飼料などの生産資材について、産地の状況を把握しつつ、銘柄数の削減を進めるとともに、生産性の低い工場が乱立している現状について、国際競争に対応できる生産性の確保を目指した業界再編・設備投資などを推進する――としている。
全農が進める自己改革では、生産資材流通に占める全農のシェアは肥料で約5割、農薬で約4割、配合飼料で約3割で、生産資材価格の引き下げに向けては、生産資材業界の再編と併せて、全農の生産資材の買い方の見直しが必要――としている。
このほか、飼料用米の生産コスト低減を進めるとともに、耕種農家と畜産農家の連携により、飼料用米を輸入トウモロコシの代替品として利用するだけでなく、その特徴をいかして畜産物の高付加価値化を図る取り組みを進めることや、配合飼料価格安定制度の借入金の計画的な返済と安定的な運営に務めることなどにも言及している。
「変動するわが国農業」の中では、農業総産出額に占める各品目の割合では、畜産が35%で最も高く、次いで野菜27%、米17%の順で、農業総産出額がピークであった昭和59(1984)年と比較すると、米が半減する一方で畜産と野菜の割合が高まっているとしている。
農業産出額の上位20位市町村を地域別にみると、九州8市、関東・東山6市、東海3市、東北、北海道、東北、北陸が各1市。上位20市町村の産出額1位の部門をみると、米1市、野菜8市、果実2市、花き1市、肉用牛2市、乳用牛1町、鶏卵2市(鹿児島県南九州市と茨城県小美玉市)となっており、野菜と畜産を1位部門とする市町村が多くなっている――と分析している。
「食料、農業および農村の動向」については、①食料の安定供給の確保に向けた取り組み②強い農業の創造に向けた取り組み③地域資源を活かした農村の振興・活性化について④大規模災害からの復旧・復興――の章立て。
トピックスとして、2020年のオリンピック・パラリンピックでの食材供給の強化や輸出拡大の取り組み(畜産物では日本版GAPの運用)を取り上げている。農産物輸出をめぐる事例紹介では、国内向けよりも大振りな特別仕様の焼き鳥を香港に輸出した山口県山口市の㈱秋川牧園(秋川正社長)を取り上げている。
主要農畜産物の生産動向などでは、鶏肉、鶏卵について、「平成27(2015)年度の鶏肉の生産量は、消費者の健康志向の高まりなどを背景に、消費が好調なことから増加傾向で推移しており、過去最高の151万7000トンとなった。引き続き、国産鶏肉の生産量を維持していくためには、加工・業務用をはじめとした国産鶏肉の利用拡大を図る必要がある。
また、平成27年度の鶏卵生産量は252万1000トンとなっており、横ばいで推移している。引き続き、国産桂卵を安定的に供給していくためには、需給バランスを踏まえた生産により、養鶏経営の安定化を図っていくことが重要となっている」と指摘している。
このほか、平成27年3月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画における食料自給率の目標、グローバルマーケットの戦略的な開拓や、日本食・食文化の海外展開の取り組み、世界の食料需給と食料安全保障の確立、食の安全と消費者の信頼確保の取り組みなども盛り込んでいる。
米国の離脱によって暗礁に乗り上げている環太平洋連携協定(TPP)については、発効に向けて「今後どのようなことができるか、関係国と議論していく」との記述にとどめている。

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