AI活用し斃死鶏を発見 マルイ農協とNECが開発

2020年度の実用化目指す

マルイ農協の組合員農場で実施している実証試験㊤と「斃死鶏発見システム」の画面㊦

マルイ農業協同組合(上田正組合長―本部・鹿児島県出水市)と日本電気㈱(NEC、新野隆社長兼CEO―本社・東京都港区)は、鶏舎内の鶏の健康管理と鶏卵の品質を向上させるため、AI(人工知能)を活用した「斃死鶏発見システム」を共同開発した。マルイ農協の組合員農場で2017年5月から実証実験とシステム強化を重ねており、2020年度の実用化を目指す。

鶏舎のケージ内にいる斃死鶏を見逃すと、他の鶏が産んだ卵をせき止めるなど、鶏卵の品質に重大な問題を引き起こす可能性があるため、作業員が毎日、鶏舎を回ってケージ内の斃死鶏を目視で検知しているが、作業員にかかる負荷が非常に大きくなっている。近年は農場の規模拡大に伴い、鶏舎設備の機械化や自動化は進んでいるものの、斃死鶏の検知は作業員に依存している。

同システムは、NECの画像認識技術と機械学習技術を組み合わせ、斃死鶏の検知作業を自動化するもの。具体的には、鶏舎内の通路を専用の台車で回り、ケージ内を撮影。この動画をあらかじめ学習させた36万枚の画像と照合し、斃死鶏を検知する。

これにより、1鶏舎当たり約8万羽に及ぶ鶏を作業員が1羽ずつ目視で確認する作業が不要になるとともに、鶏舎のどのケージに斃死鶏がいるのか一目で分かるように位置情報を表示できるため、作業の効率化が期待できる。

これまでの実証実験では、90%以上の高精度で斃死鶏を検知するとともに、斃死鶏の検知に要する時間を従来の5分の1に削減できた。

今後、両者は食の安全と作業員の負荷軽減の両立を目指し、実証実験を重ねることで、将来的には同システムにロボティクス技術を組み合わせた台車の自動走行の実現も視野に入れて取り組む。