消費税含む『総額表示』の完全義務化始まる

消費者に向けた価格表示が対象

商品やサービスの価格に消費税分を加えた『総額表示(税込み価格表示)』の完全義務化が4月1日にスタートした。消費者が支払う金額をより分かりやすくするためで、これまでは2013年10月施行の『消費税転嫁対策特別措置法』によって一定条件下で税抜き表示が認められてきたが、同法の効力は今年3月末で失効。小売店や飲食店、直売所などが総額表示での販売に取り組んでいる。

財務省によると、事業者が消費者に対して行なう価格表示が対象で、各店舗の値札・棚札、メニュー表のほか、チラシ、カタログ、広告、ホームページなど全ての表示媒体が含まれる。事業者が希望する場合は税抜き価格や消費税額を併記できるものの、あくまでも明瞭な『総額表示』が前提となる【同省公表の上図参照】

鶏肉などの量り売りは、その単位ごとに消費税を含む価格表示が必要。各商品の本体(パッケージ)への表示については、個々に税込み価格が表示されていない場合でも、棚札やPOP広告などで税込み価格が一目で分かるようにすれば同表示義務上は問題ない。通信販売も、ウェブサイトやカタログ上で税込み価格が表示されていれば、送付される商品自体が税抜き価格のみの表示でも問題ないとのこと。

また、新型コロナ禍の下でテイクアウトを始めた飲食店も多いが、この場合は店内飲食(税率10%)と、軽減税率が適用されるテイクアウト(同8%)の両方の総額表示か、どちらか一方の総額表示を任意で選べる。飲食大手のモスバーガーのように、今回の義務化を機に店内飲食とテイクアウトの税込み価格を統一する動きもみられる。

一方、事業者間での商品売買や、製造事業者などがカタログやパッケージに表示する『希望小売価格』は消費者への価格表示ではないため義務化の対象外。ただ小売店側が、表示された希望小売価格を自店の小売価格とする際は対象となり、(表示が税抜きの場合は)棚札などでの情報補完が必要になる。

同省主税局の担当者によると、違反した際の消費税法上の罰則はないが、「消費者にとって分かりにくかったり、誤解につながるような表示はクレームやトラブルにつながりかねない。そのような連絡が税務署に入った場合など、何らかの行政指導を受ける可能性はある」という。

このほか、日々発表される鶏卵・食鳥相場などは事業者向けの『指標』に当たり、消費者が対象ではないため義務化の対象外。荷受けの1社は「今回の変更によって相場発表時の表示が変わることはない」としている。