採卵鶏の鶏種別能力比較 群馬県畜産試験場が成果を発表

生産性と経済性、鶏卵品質を調査

群馬県は2月5日、前橋市の群馬県庁で令和元年度の農林水産業関係機関成果発表会を開き、畜産分科会では、群馬県畜産試験場養鶏係の後藤美津夫係長と藤本龍也主任が「採卵鶏の鶏種別能力比較試験」の結果を発表した。

同試験場では11鶏種を対象に実施した平成30年度「採卵鶏の鶏種別能力比較試験」を73~90週齢(30年8月下旬~12月下旬)まで延長。鶏種別能力比較試験では、育成期の飼料摂取量・育成率・体重、成鶏体重、50%産卵到達日、ヘンデイ産卵率、平均卵重、飼料摂取量、飼料要求率、生存率、規格卵率、経済性(重量取引と個数取引)、排せつ物量・水分、卵形指数、卵殻厚、卵殻強度、ハウユニット、卵黄色(カラーファン)、卵黄・卵白のBrix――について調査。赤玉鶏種では肉斑の出現率と卵殻色の調査も追加した。【生産性と経済性の成績表】【鶏卵品質の成績表】

白玉鶏種の結果

白玉鶏種ではジュリア、ジュリアライト、ハイラインマリア、バブコックB400、ボバンスホワイトの成績を比較。

90週齢までの生産性と経済性について報告した後藤係長は、①成鶏体重は、60週齢以降に低下するなどの変動がみられたが、どの鶏種も指標値におおむね準じて推移。体重の変動係数は平均7%前後で、そろった鶏群で試験ができた②産卵成績は、ヘンデイ産卵率やヘンハウス産卵個数など、ほとんどの鶏種が高い産卵持続性を示した③平均卵重が大きく、飼料要求率が良いジュリアとジュリアライトは重量取引に有利。平均卵重が小さく、産卵個数が多くて飼料摂取量が少ないバブコックB400とボバンスホワイトは個数取引に有利だと考えられた④平均卵重が小さい鶏種はM~MS卵が多く、卵重が大きい鶏種はLL~L卵が多かった⑤重量取引と個数取引での差益は、産卵個数が多く、飼料摂取量が少ない鶏種のほうが高かった⑥排せつ物量は、飼料摂取量が少ない鶏種と、水分が少ない鶏種が比較的少なかった――とし、「ヘンハウス産卵個数が450個前後の鶏種は、100週齢時に500個以上に到達することが期待できる。卵重が大きい鶏種は、栄養価の低い飼料を使うことで、より適正な卵重コントロールとコスト削減が可能になると考えられる」などと述べた。

藤本主任は、90週齢までの鶏卵品質について、①卵形指数は、高いと丸くなり、低いと細長くなるが、鶏種にかかわらず加齢に伴い低下して70週齢以降は横ばい、または微増となった②卵殻厚は加齢に伴う変動が少ない。卵殻強度は加齢に伴い低下したが、問題のない範囲の強度が保たれた③ハウユニットは加齢に伴い低下するが、多くの鶏種が90週齢時でも80以上を示して良好だった④卵黄色はおおむね11~12の範囲で、鶏種や週齢により若干変動した⑤卵黄Brixは加齢に伴いわずかに低下したが、90週齢には30週齢と同等の値に回復。卵白Brixは加齢に伴い低下し、60週齢以降はおおむね横ばいで推移した――とし、「卵重コントロール、飼料要求率、経済性の追求はもちろん大切だが、ある時期に、ある鶏卵品質が下がりやすいということもある。どの鶏種も育種改良により鶏卵品質は向上しているが、加齢や環境、栄養摂取の影響は避けられないと思う」などと述べた。

赤玉鶏種の結果

赤玉鶏種ではピンク卵鶏のハイラインソニア、さくら、赤玉鶏のボリスブラウン、シェーバーブラウン、ノボブラウン、もみじの成績を比較。

90週齢までの生産性と経済性について報告した後藤係長は、①成鶏体重は、赤玉鶏は50週齢以降平均2200グラム前後で、各鶏種の指標値より若干大きく推移した。ピンク卵鶏はおおむね指標値に準じた体重。体重の変動係数は全期間を通して平均10%未満で良好だった②産卵成績は、ヘンデイ産卵率、ヘンハウス産卵個数、飼料要求率が白玉鶏より低かった。原因としては体重が大きくて飼料摂取量が多いことが考えられた⑤規格卵の分布は、白玉鶏と同様に平均卵重と連動しており、平均卵重が大きい鶏種はLL~L卵、小さい鶏種はM~MS卵が多い⑥重量取引と個数取引での差益は、飼料費が少なく、規格卵の分布が良好なハイラインソニアが最も高かった。赤玉鶏は鶏種特性に一長一短があり、取引方法により評価が変わる結果となった⑦排せつ物量は、水分の少ないボリスブラウンが比較的少なかった――とし、「赤玉鶏は白玉鶏に比べて暑さに弱く、生産性が減退するため、長期的に飼育するうえでは適切な防暑対策をとることが重要である」などと述べた。

藤本主任は鶏卵品質について、①卵形指数は鶏種にかかわらず加齢に伴い低下し、70週齢以降は横ばい、または微増した。白玉鶏に比べて丸みを帯びた卵が多かった②卵殻厚は加齢に伴う変動が少ない。卵殻強度は加齢に伴い低下したが、問題のない範囲の強度が保たれていた③ハウユニットは加齢に伴い低下したが、白玉鶏に比べて若干低い値(80未満)がみられた④卵黄色はおおむね12前後で、鶏種や週齢により若干変動した⑤卵黄Brixは加齢に伴いわずかに低下したが、90週齢には30週齢と同等の値に回復。卵白Brixは加齢に伴い低下し、60週齢以降はおおむね横ばい。白玉鶏より高い値で推移した――と報告。

赤玉鶏種のみで調査した肉斑の出現率については「肉斑の大きさにかかわらず、どの鶏種も加齢に伴い増えていく。赤玉鶏種に関しては肉斑の問題がポイントになる。肉斑自体をゼロにはできないので『卵とはこういうものだ』と理解してもらえるような消費者教育を考えていく必要があるかもしれない」とした。

卵殻色については「加齢とともに白っぽく、ボケた色になっていく。同一の農場で週齢が異なる鶏群を飼育するケースがあると思うが、その際に卵を混ぜて出荷すると色のバラツキが目立ってしまうので、注意が必要である」と指摘した。