我慢の時期が続く鶏肉需給 食鳥協理事会

生産面は過去最高の成績で順調

理事会であいさつする佐藤実会長

(一社)日本食鳥協会(佐藤実会長)は11月15日に理事会を開き、令和元年度の事業の進ちょく状況を報告。鶏肉の需給動向については、生産面は過去最高の成績が出るほど順調だが、販売面では最需要期を控えて少しずつ動きが出てきたものの、依然として苦戦している状況が報告された。

理事会であいさつした佐藤会長は「昨日は生産加工部会の運営委員会に参加して状況を確認したが、史上最高の成績が出たという報告が各社からあり、生産面は良い状況である。しかし、あまりすっきりしないような相場展開で、なかなか寒くならず、もも・むね合計でようやく830円を超える水準になった。12月に向けて一番の需要期が控えているため、鶏肉の消費がますます増えることを我々としては期待している。主要産地協議会の数字をみると、年明け以降も順調に出荷される計画のため、我慢の時期がしばらく続くのではないかと思う。皆さんと知恵を出しながら消費促進のキャンペーンを実施して、いくらかでも鶏肉の消費拡大につなげたい。ご協力をお願いする」などと述べた。

各部会運営委員会の協議事項や各支部の活動状況、令和元年度事業の進ちょく状況などが報告されたほか、今秋の台風被害への支援対策のうち、非常用発電機の導入や、一時的な発電機の借り上げにかかった費用の一部を補助する「養鶏経営災害緊急支援対策事業」(農畜産業振興機構により実施)の概要についても説明があった。

鶏肉の需給動向については、各部会から次のように報告された。

▽生産加工部会=今回の運営委員会に出席した16社のうち、6社が台風の被害を受けた。水害や土砂流入などにより数万羽単位の被害があり、それに伴い工場の稼働がストップした。被害はなくても道路の通行止めにより、飼料や生鳥の運搬の対応に苦慮した。

生産面では各社とも安定している。一部で寒暖の差により大腸菌症が発生したり、成績を崩しているところもあるが、10月に過去最高の成績を収めたのが4社あった。それぞれ育成率、日増体、飼料要求率が改善された。PS(プロダクションスコア)も平均で400を超え、最高で462が出たとのこと。

捕鳥機を導入して試運転している会社からは、捕鳥や手羽折れについては問題ないが、捕鳥機自体がオーバーヒートすることもあり、もう少し改善が必要であるという報告もあった。

▽荷受部会=売れている部位と売れていない部位がはっきりしている。もも肉とむね肉、手羽もとは少しずつ動きが出てきたが、ささみと内臓類は悪く、手羽先は普通くらい。全体的には寒くなってきて、もも肉が動き出した。焼き鳥屋向けのこにく、ハラミ、やげんなどの動きは悪く。量販店だけでなく外食、ホテル関係も良くない。

今後期待するクリスマス期については、今年は平日で曜日が悪く、量販店は骨付きももを売る意欲がない。ローストビーフなどのオードブル商品が売れていると感じる。

今年は鶏肉の出回り量が多いため、競争が激しい荷受では物流費を値上げする環境ではない。一部の荷受では少ない注文は断ったり、配送時間を変えるなどの工夫をしているが、各社とも非常に厳しい。

ASF(アフリカ豚コレラ)による影響なのか、輸入畜産物の価格が上がっており、輸入チキンもこれから少し高くなると予想されているため、少しずつ国産チキンに流れが来ればいいなという希望的観測も出ている。

大豆ミートがハンバーグのパテなどの原料として少しずつ出回るという予想もあるが、開発費が高く、冷凍鶏肉の価格帯までにはなっていない。

首都圏や大阪圏では冷蔵庫の状況がきつくなっている。畜産品は通常回っているため入庫してくれるが、水産品などはほとんど再保管で新潟などの地方に持っていく状態である。我々が凍結すると言うと冷蔵庫側は渋るため、何とか生のまま売り切ろうとしているが、いずれにしても保管料がアップしているし、それに対する物流費もかかり、大変である。

生産量が増える中で、中間業者の荷受は副産物も含めて赤字覚悟で販売しているところが多く、業績は厳しい。在庫を持っているインテが、荷受価格の下をくぐって投げているという話も聞いている。こういうことをしていると流通のひずみができて、中間にいる荷受は大変厳しい。

▽小売部会=9~10月は台風の影響や増税、特に西日本は残暑が厳しくて動きは非常に悪かったが、11月に入って多少動きが出てきた。

台風については今年は関東、昨年は関西で被害があったが、昨今は鉄道の計画運休に伴い、百貨店やショッピングセンターが休業する。このような事態を来年以降も台風の時期は予測しておかなければいけないと思う。

増税に伴う駆け込み需要は日用品などではあったが、生鮮食料品ではなかった。増税後は全体的な消費マインドが下がり、集客も悪くて厳しかった。業務卸の外食関係は、それほど影響はなかったと言う人と、影響があったと言う人がまちまちであった。

荷受部会からの話もあったように、冷蔵庫が一杯で、従来はqか所に預けていたが、現在は数か所に預けなければならず、コストがかかっている。また、人手不足により時給を上げても募集に来ない状況で、既存のパートの時給も上げなければならず、コスト高になっている。

むね肉が2キロで5枚あり、非常に大きい。小売店のミンチ機はそれほど大きくないため、切ってからでないとミンチにもできない。逆に砂肝は小さいため、焼き鳥にするとロスが出てしまう。

クリスマスは30年ぶりに祝日がなく、地域により良いところと、悪いところがあるため一概には言えないが、総合的にはそれほど盛り上がらないのではないかと予想している。

▽種鶏ふ卵部会=10~11月に関しては、当初からひなが不足すると計画していたが、チャンキーの生産性向上や、種鶏をアウトしたくてもできない〝自然アウト延長〟による種鶏残存数の増加により、納品はできたと感じている。

ただ、今回の台風で千葉県周辺のレイヤーで被害が大きかったことにより、ブロイラー種鶏のアウトが計画より前倒しで進み、ふたを開けてみれば10月中旬から種卵が足りなくなった。特に不足ということではないが、11月1~15日のえ付けは過去最高の羽数ではないかと思っている。これだけのえ付けになると孵卵機のキャパが足りないという問題が出てきて、何とか回したという状況になる。

需給バランスの予想は非常に重要だと感じているが、レイヤーとの関係で種鶏のアウト計画が確立できないと、今後もスポット的な種卵不足が起きると考えている。来年も年末は不足する種鶏導入計画だが、コマーシャルも含めてチャンキーの生産性が向上しているため、市場が混乱するような事態にはならないと思うが、同業者や関係者の情報を得ながら、何とかひなを安定的に納品できるように進めたい。