危機対応へ力を合わせて 2022年の養鶏産業の課題

2年余り続くコロナ禍に対する各国の様々な規制・対応により、経済活動が幅広く停滞する中、生産諸資材が急速に値上がりし、これに人手不足も加わり、鶏卵・鶏肉産業の先行きに強い不安が広がっている。

国産チキンは、昨年は輸入鶏肉の不足・値上がりもあって、相場はもも・むね合計950円台となった。ただ鶏肉流通の現場は、もも肉の販売に苦慮し、業務向けの地鶏なども需要低迷が続いている。

鶏卵も、内食需要は平年を上回ったものの、外食需要は回復していない。特に秋以降は期待された消費増がみられない中、昨シーズンの高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)被害で減少した羽数が回復し始めたことなどから、相場は上昇力がないままに推移した。

HPAIは今シーズンも21年12月20日現在、8県9事例で発生し、関係者は強い緊張の中に置かれている。ウイルスの亜型は2種類、野鳥の低病原性を合わせると3種類と、複数の亜型が同時に侵入している。欧州の大発生や中国大陸での常在化などで発生リスクが大幅に高まっている中、飼養衛生管理基準の順守は必須だが「完全に防ぎきることはできない」「より強力な経営再建への支援やワクチンの導入が必要」との声も聞かれるようになった。同基準の改訂では埋却地の確保も規定されたが、用地があっても住民の反対で埋却できないケースが今シーズンも出ている。迅速な防疫の観点から、焼却方式が円滑に取り入れられることも急務だ。

持続可能性向上やアニマルウェルフェア(AW)への対応も求められている。採卵鶏では、鶏それぞれにとって平等な鶏舎環境を与え、鶏と糞も分離することで、つつきや疾病を防ぎ、生産性を上げてきたが、欧州を中心とする考え方では、行動発現の自由が重視されている。ただ、日本のような国土が狭く、夏は高温多湿の気候風土で成立するのか。さらに(公社)畜産技術協会が指針で示す推奨値以上に飼養密度を低減しても、血液中のストレス指標に有意差がみられないとの知見も出ているほか、欧州型の飼養形態の導入により鶏病や死亡率、廃棄する卵、飼料消費量が増加することについて、本当にAWに沿い、サステナブル(持続可能)なのかを検討しながら、日本型のAW基準を見つけていかなければならない。

今年は、消費者の行動変化がある程度定着し、特に外食関係についてはコロナ禍以前の水準に戻ることはないともみられている。生産面については、配合飼料価格をはじめ諸資材が高騰し、鶏卵・鶏肉の生産コストは否応なく高くなっている。需給に基づいて価格が決まる現状の鶏卵・鶏肉相場の下では、コストに見合った価格を実現するには、まず「需要に見合った生産」に徹するしかない。その上で、各企業がコロナ禍による商流の変化に対応し、加工度を上げた「即食」「中食」可能な商品やメニューの開発などとともに、新たに登場しつつあるオンラインサービスなども活用しながら、なお一層の需要拡大に努めていく必要がある。

ただ現在は「ディスラプション(破壊的な大変革)」という言葉でも表現される、歴史的な大波にさらされている。国内の多くの消費者が求める安全・安心な鶏卵・鶏肉を安定的に供給していくためには、行政も含めた関係者が力を合わせて対応していく必要がある。