配合飼料価格安定制度の見直しに意欲 飼料用米への取り組みも強化 日本飼料工業会・山内会長

(協)日本飼料工業会(会長=山内孝史日本配合飼料(株)社長)は2月26日、飼料・畜産業界の報道関係者を招いて飼料・畜産情勢に関する懇談会を開いた。
配合飼料価格安定制度の見直しについて、山内孝史会長は「平成25年度は7~9月期に飼料基金が財源不足に陥ったため、国が半分面倒をみる代わりにトン当たり1325円を飼料メーカーが負担することになり、各社の決算に大きな影響を与えた。10~12月期は全農との公示価格が1000円以上も異なるなど、波乱の1年であった。飼料基金の借入金が膨大な額になっており、各社の重荷になっている。我々の利益の何倍もの積み立てをして、初めて飼料製造の業務ができる状況になっているため、これを抜本的に見直すため会長に就任以来、何度も農水省に足を運んで議論を重ねてきた。
議論の基本は、これ以上の借金は無理であること、財源に見合った補てんを実施すること、ヒアリングのあり方を見直すことで、いろいろと知恵を出していただき、3つの事項が改定された。
1つ目は通常補てんを公正・客観的・透明性のある指標で実施するために、異常補てんと同様に輸入飼料原料の価格で決定する方式に見直すこと。2つ目は国と飼料メーカーが積み立てている異常補てんの機能強化で、発動基準の特例を新設して発動しやすくすること。3つ目は飼料基金の借入金の返済計画の見直すことである。
抜本的という意味ではまだ先は遠いが、少しずつ前に進んでいる。過去40年間続いた制度に風穴を開ける最初の一歩であり、これを抜本的な改革につなげたい。ただ現場で混乱が起きないように、工業会では全国各地で制度見直しに関する説明会を開いて体制を整えている」と説明した。
飼料用米については「昨年末に政府が決定した米の生産調整の見直しと、飼料用米への支援の拡充はとても大きな政策転換である。いろいろ議論はあると思うが、我々飼料畜産業界にとっては大きな転換点であるし、うまく定着すれば国産の飼料原料の確保という意味で良い政策であるため、積極的に取り組みたいと基本的に考えている。今年すぐに、というのはなかなか難しいかもしれないが、数年かけてできるだけ定着させていきたい。工業会ではプロジェクトチームを立ち上げ、稲作農家や畜産農家へのヒアリング調査や、飼料メーカーへのアンケート調査を実施した」とした。
26年度の抱負については「配合飼料価格安定制度のさらなる見直しを求めていく。飼料基金の補てん財源が枯渇している中で、民間の飼料メーカーがこの制度を支えるには限界が来ているため、国にはもっと前面に出てきて関与していただかなくてはいけないと考えており、農水省に引き続き働きかけていきたい。
飼料用米への取り組みについては、国の施策を含めてほとんどが農協を中心に行なわれているため、商系の工業会メンバーも使えるようにしてほしいと農水省に要請している。
もう1つ取り組まなければならないことは品質面の問題である。工業会では数年前に安全飼料製造規範を策定したが、世界の趨勢であるGMP(製造品質管理基準)に則しており、農水省消費・安全局への説明でも一定の評価を得られている。欧州や米国だけでなく、東南アジア諸国でもGMPを法制化する動きがあるため、日本だけが取り残されないようにしなければならない。
飼料業界はフードチェーンの最も川上の存在であり、我々の取り組みを畜産生産者だけでなく、消費者にも理解していただけるように、これからは情報発信にも積極的に努めたい」と強調した。
平野昭専務理事は、飼料用米プロジェクトチームによる「飼料用米の使用に関する論点整理」の中間とりまとめについて説明した。中間とりまとめでは飼料用米の現状、アンケート調査の結果、飼料用米の検討課題、工業会の当面の取り組みを中心に論点を整理しており、今後は工業会内部で幅広く議論を深め、6月をめどに最終とりまとめを行なう。
配合飼料価格安定制度の見直しに伴い、これまで各社が四半期ごとに行なってきた飼料価格の改定額の発表について、山内会長は「発表する、しないも含めて各社がそれぞれ判断することになる。ホームページに掲載する会社もあれば、ユーザーに個別にお知らせする会社もある」と述べた。補てんの決定時期について(一社)全日本配合飼料価格・畜産安定基金の松原敏春常務理事は「4~6月期であれば7月くらいになる。計算ができるのが早くて10日すぎ、決まるのが20日前後ではないか。6月分の貿易統計が出ると、補てんが出るかどうか、ある程度は計算できる」と説明した。

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