飼養衛生管理基準の見直しなど議論 家きん疾病小委員会

令和2年度シーズンに高病原性鳥インフルエンザが過去最大規模で発生したことを受け、農林水産省は防疫指針などの見直しに向けて6月17日に食料・農業・農村政策審議会の家畜衛生部会に諮問するとともに、23日には家きん疾病小委員会を開いて改正案の概要を示した。

農水省では、次シーズンが始まる9月中の改正に向け、都道府県から意見を聞くとともに、パブリックコメントを募集する予定。

家きん疾病小委員会に示した改正案の概要は次の通り。

【家畜伝染病予防法施行規則本則】

飼養衛生管理基準の順守に関する是正措置について、発生予防に向けた指導・勧告・命令の猶予期間をそれぞれ2週間から1週間に、まん延防止に向けた命令の猶予期間を1週間から3日間に短縮。

【飼養衛生管理基準】

鶏その他家きんの基準

①飼養衛生管理を行なうに当たり踏まえるものとして、これまで記載があった飼養衛生管理基準に加えて、飼養衛生管理指導等計画を追記。

②大規模農場では、畜舎ごとに担当の飼養衛生管理者を配置することを新設。

③家畜の頭数が多く、殺処分等に多大な時間を要すると都道府県知事が認める家畜所有者は、対応計画を策定することを新設。

④これまでの「埋却地の準備」に代え、「埋却等に備えた措置」として、埋却地または焼却施設を確保することとし、これらが困難な場合は代替として埋却・焼却・化製に関する都道府県が求める取り組みを実施することを規定。

【飼養衛生管理指導等指針の変更】

①都道府県は、家畜所有者による埋却地の確保が困難な場合のセーフティネット(焼却施設との事前協定締結、移動式レンダリング装置の活用準備等)を家畜所有者と共同して対応することを追記。

②都道府県は、埋却地等の確保と周辺住民の理解醸成に向けた取り組みを指導することを追記。

③埋却地の確保や指導計画の見直しに当たって、地域協議会等の活用を追記。

④家きんの所有者等が毎年行なう措置として、飼養衛生管理基準の順守に関する一斉点検を追記。

⑤国と都道府県はクロスコンプライアンス導入を推進することを新設。

⑥命令違反時は、都道府県が原則公表することを追記。

【特定家畜伝染病防疫指針の一部変更】

①発生に備えた都道府県の取り組みとして、以下の点に留意した動員計画と調達計画の策定、国への報告について規定。

▽都道府県内の最大規模の農場での発生を想定する。

▽家畜衛生担当部局、畜産・農業関係団体のみではなく、都道府県を挙げた動員体制とするとともに、事前に関係者との合意形成を図る。

▽都道府県内からの動員のみでは迅速な防疫措置の実施が困難な場合に、農林水産省、他の都道府県等からの派遣について、事前に動物衛生課と協議する。さらになお困難な場合に事前に自衛隊と協議する。

▽衛生資材、薬品等の備蓄、特殊自動車等の調達先の確認、死亡獣畜保管場所の確保等を行なう。また、可能な限り、資材や特殊自動車の調達等に関する防疫協定の締結を進める。

②都道府県は、家きんの所有者に対する埋却地等の事前確保に係る指導等を徹底するとともに、周辺住民の理解の醸成に向けた取り組みを行なうよう指導等を行なうこと、これらの取り組みが十分でない場合は、焼却施設等、その所在地を管轄する都道府県、市町村等と調整し、可能な限り、防疫協定の締結を進める等の措置を講ずるとともに、家きん所有者に対して、必要な取り組みを求めることを規定。

③都道府県知事が必要と認める大規模所有者に対して、発生に備えた対応計画の策定を指導し、策定された対応計画を動物衛生課に報告することを規定。

④都道府県は、事前策定した動員計画をもとに、必要な人員に関する具体的な防疫計画を立てることを規定。

⑤他の都道府県または関係機関(自衛隊を含む)に協力要請する場合には、作業体制、作業要領、後方支援、報道対応等に係る方針を明確にすることを規定。

⑥本病が発生した場合に周辺農場へのまん延防止の観点から、発生農場と発生農場周囲1キロメートル以内の区域に位置する農場の小型野生動物対策の実施、散水車等を活用した発生農場周辺の地域全体の面的な消毒の検討を規定。

⑦移動制限の対象外となった農場で、移動の際に必要な措置が講じられていないことが判明した場合、移動制限区域内の複数の農場で本病の発生が継続する場合等、動物衛生課が特に必要と認めた場合には、家きん等の移動を禁止し、協議を見合わせる旨を規定。

⑧集中続発時の発生状況確認検査について、一部省略が可能となる場合について規定。

小委員会の議論の中で「大規模農場では機械化に伴い、人が少なくなる傾向にある。畜舎ごとの飼養衛生管理者の配置などについて、生産者団体と細かく協議して進めたほうがいいと思う」との委員からの意見について、農水省の担当者は「1人当たり最大10万羽としておけば、現場は回ると見立てている。7月にパブリックコメントを募集するタイミングで関係団体の方々に説明する」などと述べた。

「『殺処分等に多大な時間を要する』場合の目安はあるのか」との委員からの質問には、「具体的な数値は検討しているが、国から都道府県に見安を通知する予定。鶏であれば10万羽以上が対象になる」などと答えた。

埋却地について「周辺住民の理解醸成に向けた取り組みは、かなり難しいのではないか」との意見には、「日頃から養鶏場で何か起きた時の説明を丁寧にして、いざ発生したら協力していただく姿勢がより重要ではないか。この項目は、あくまで都道府県が生産者に指導するための指針であるため、埋却に困って時間がかかり、防疫作業が進まないことが二度とないようにしたい」などと述べた。