採卵鶏の経済性能など報告 千葉県・試験研究(養鶏)発表会
千葉県畜産総合研究センターは2月8日、成田市の成田国際文化会館で、1963年から続く56回目の『試験研究成果発表会(養鶏部門)』を開いた。
冒頭あいさつした渡辺博剛次長は、鶏卵・鶏肉生産者は飼料価格の高止まりや、自由貿易の進展などで厳しい経営環境にあるとした上で、同センターの活動内容について「このような情勢を踏まえつつ、生産コストの削減や、暑熱による影響の軽減、生産者の収益向上のための技術研究などを行なっている。千葉県は全国2位の鶏卵生産額を誇る養鶏県だが、地域間の競争と、生産者間の競争に勝ち抜くには生産物の差別化も有効な方策だ。これまでも当センターではその時々のトレンドに応じ、安価で有用な飼料原料について検証し、効果的な利用方法を開発してきた。今後も生産者のニーズに十分に目を向けながら、特色ある畜産物生産に向けての取り組みを続けたい」などと述べ、鳥インフルエンザ対策の徹底も呼び掛けて発表会に移った。
同センター養豚養鶏研究室からは3氏が発表。このうち市原光一研究員は、毎年、鶏卵生産者から特に注目されている『採卵鶏主要銘柄経済性能比較調査』の結果を報告した。
今回の調査期間は2017年11月3日から18年10月4日(476日齢)まで。鶏種はボリスブラウン、ゴトウもみじ、ノボブラウン、ジュリア、ジュリアライト、ハイラインマリア、ノボホワイト、バブコックの計8銘柄。成鶏期は開放鶏舎のケージで2羽飼い。
市原氏は調査のまとめとして、①育成期において全銘柄で育成率は良好②全期間におけるヘンデイ産卵率は全銘柄で88%以上③平均卵重は銘柄3が65.2グラムと最も重い④産卵日量は銘柄4、5が60.1グラムと最も多い⑤飼料摂取量は銘柄3が117.1グラムと最も多く、銘柄6が105.4グラムと最も少ない⑥ハウユニットは銘柄8では全期間で88を上回る良好な値⑦規格別鶏卵生産割合では赤玉鶏(銘柄1~3)でLの割合が高い。白玉(同4~8)では銘柄4、5、8でLの割合が高く、それ以外はMの割合が高い⑧第10期(393日齢以降)において産卵成績が低下する傾向がみられた――と報告。
伊藤香葉研究員は『飼料用米を利用した卵質向上技術』について、もみ米は配合率17.5%程度であれば、イエローグリースだけの添加で玄米給与時と同等の産卵・卵質成績が得られたことや、飼料用米給与によって卵黄中の脂肪酸組成が変化し、ビタミンE含量が増加したことなどを紹介。同氏の『育雛期からの25-OH-D3(ビタミンD3代謝物)の添加による産卵性および卵質への効果』発表では、卵殻強度や卵殻厚などは変わらないが、産卵後期の産卵率や卵重は影響を受ける可能性があるとした。
岡田浩子研究員は『新青色卵殻鶏の作出』の取り組みの途中経過を報告。約30年前にアローカナと白色レグホーンを交配して作出した種鶏「WA」は、近年では卵殻色(青色)の早期退色や卵殻質の劣化が目立ってきたことから、(独)家畜改良センター岡崎牧場の「岡崎アロウカナ」との組み合わせで新系統作出を試みているとした。
企画環境研究室の田中航輝研究員は『水洗式脱臭装置の能力改善のための装置内循環水からの窒素除去および粉じん抑制技術の検討』について情報提供した。
鶏病研究会技術研修会
試験研究成果発表会に続き、鶏病研究会千葉県支部が『第4回技術研修会』を開催。鹿児島大学名誉教授で、九州・沖縄アニマルウェルフェア(産業動物)連絡会の髙瀬公三代表が『どう考える・養鶏におけるアニマルウェルフェア(AW)の課題』のテーマで講演した。髙瀬代表はAWの定義や目的、国内外の動向などを話したほか、肉用鶏の脚が湿潤な床面に触れ続けることで起こる『接触性皮膚炎』の症状や発生状況についても数多くのデータを示して解説した。