家畜伝染病予防法改正へ 移動制限協力農家への補償を制度化
農林水産省は、高病原性鳥インフルエンザが発生した場合に、より的確なまん延防止措置を図るため、(1)届出義務違反に関するペナルティの強化(2)移動制限命令に協力した農家に対する助成の制度化(3)都道府県の防疫事務費用の国の負担――を内容とする家畜伝染病予防法の一部改正案をまとめ、4月6日の閣議で了承を得た。今国会に提出して成立を期す。
家畜伝染病予防法では、病気にかかった患畜や、病気の拡大を防ぐために殺処分される擬似患畜については一定の補償(手当金)があるが、病気の拡散を防ぐために設けられる移動制限区域内の農家などには補償がなかったため、被害補償の制度化を求める声が強かった。
改正案は、疾病発生時の届出義務違反に関するペナルティを強化し、(1)殺処分の対象家畜などの所有者に交付される手当金は、家畜伝染病のまん延防止に必要な措置を講じなかった者には支払わない(2)届出義務に違反した場合の罰則を、現行の「1年以下の懲役または50万円以下の罰金」から「3年以下の懲役または100万円以下の罰金」に引き上げる。
移動制限命令に協力した畜産農家には、助成を制度化し、都道府県が売り上げの減少額や、飼料費・保管費・輸送費などを助成する場合に、国がその助成費の2分の1を負担する。
このほか、従来から家畜防疫費補助として国が負担している都道府県の防疫事務費に、新たに(1)衛生資材の購入費または賃借料(防護服、車両消毒など)(2)家畜防疫員が自ら患畜などの死体や汚染物品を焼却・埋却した場合の費用――を追加し、その2分の1を国が負担する。
養鶏関係団体などでは、被害補償の制度化に当たっては、採卵養鶏、ブロイラーとも農場規模が大きくなり、しかもGPセンターや食鳥処理場、関連する種鶏・孵化業が一体となって運営され、ブランド化も進んでいるため、(1)農家(農場)段階だけでなく関連する業種を含めた補償が必要(2)一度移動制限の対象区域に入ると、鶏卵や鶏肉の販路を失い、しかも失った販路の回復は難しいため、商権を考慮した補償が必要――などとしていた。
今回の改正案は被害補償が制度化された点は評価されるものの、補償額などで不満が残るといえる。