すべての加工食品を義務表示に 原料原産地表示の中間とりまとめ
消費者庁と農林水産省は11月2日、東京都江東区の東雲合同庁舎5階会議室で「第10回加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会」(座長=森光康次郎お茶の水女子大学大学院教授)を開き、原則としてすべての加工食品に原料原産地表示を義務付ける『中間とりまとめ(案)』を示した。
同案では、前回の検討会で示された素案に沿い、「国内で製造し、または加工したすべての加工食品を義務表示の対象とすることが適当」と記述。加工地での販売や譲渡、容器包装なしで販売する場合などを除き、「重量割合上位1位の原材料の原産地を、義務表示の対象とする」としている。表示方法は「国別重量順表示」を原則とし、3か国目以降の原産地は「その他」と表記できる。
原則通りの表記では容器包装の変更が必要になる場合は、①過去の一定期間の使用実績を踏まえて複数国を列挙し、欄外に実績のあった期間を付記する「可能性表示」②3か国以上の外国の産地を「輸入」と一括りにする「大括り表示(「輸入」表示)」③「可能性表示」+「大括り表示」④原材料が中間加工品である場合に、その製造地を「○○製造」と表記する「中間加工原材料の製造地表示」――の4パターンを例外として認める。
表示媒体については、消費者調査で産地情報を得る手段について「ホームページを見る」と回答した消費者が18%にとどまったことや、特に高齢者の中にはインターネットを使わない人もいることから、「義務表示は容器包装への表示により行なうことが適当」とした。
同案に対する意見交換では、流通関係団体や一部の消費者団体、婦人団体などの委員から、特に可能性表示などの例外規定について「あいまいで同意できない」「可能性表示に反対」「国別表示以外は書かなくてよい」「優良誤認を招く」などの反対意見があり、中小の食品企業の団体からは「中小企業は対応できない。十分議論されておらず、今回のとりまとめは反対」との意見もあったが、生産関係団体や食品メーカー、別の消費者団体からは「大きな一歩で実行可能性も評価できる」「画期的で賛成。ただ、例外適用のしっかりしたルール化を」「義務化には反対だが、実施するのであればコンプライアンスを維持するために可能性表示は必要」「むしろ現在、加工食品に原料原産地表示がないことが消費者の誤認を招いている」との賛成意見が聞かれ、最終的なとりまとめは座長一任となった。
座長の森光教授は、検討会終了後の記者会見で同案について「中間とりまとめ(案)となっているが、これが最終的なとりまとめと考えている。1回目の検討会で示された設置要領に〝今秋を目途に中間的なとりまとめを行なう〟と記述していた通り、本日の検討会で方向性が固まったと理解している」と述べた。
原料原産地表示は来夏めどに交付へ
加工食品の原料原産地表示の制度化が進められた背景には、TPPの大筋合意など食のグローバル化が進み、国内の生産現場を取り巻く環境が大きく変化する中で、食品の産地に関する消費者の関心も高まっていることなどがある。
消費者庁が3月に実施した消費者調査では「加工食品を購入する際、原料原産地名を参考にしている」と回答した消費者が約77%に上ったほか、6月2日に閣議決定された「日本再興戦略2016」と「経済財政運営と改革の基本方針2016」の中では、それぞれ「原料原産地表示について、すべての加工食品への導入に向け、実行可能な方策について検討する」「生産者が有利な条件で安定取引を行なうことができる流通・加工の業界構造の確立、すべての加工食品の原料原産地表示、チェックオフ制度の導入を検討する」との文言が盛り込まれた。
今年1月29日に設置された加工食品の原料原産地表示制度に関する検討会の開催は今回までとなり、今後は文言の修正などを経て座長が答申する「中間とりまとめ」を踏まえて消費者庁内などで検討を深め、内閣府令「食品表示基準」の改正案とQ&A集の作成、パブリックコメントの募集、消費者委員会への諮問と答申、世界貿易機関(WTO)への通報などの手続きを実施。来年夏ごろをめどに、官報で公布される予定となっている。施行時期は今後検討される。