OIE総会結果など報告 農林水産省連絡協議会

鳥インフル改正と採卵鶏AWコード アドホックグループで議論

農林水産省は6月11日、令和元年度の第1回国際獣疫事務局(OIE)連絡協議会を東京都千代田区の同省会議室で開き、5月にフランスのパリで開催された第87回OIE総会の結果や、総会で採択されたOIEコードの内容などを報告した。

本紙関係では、2018年9月のコード委員会で一次修正案を提示した「鳥インフルエンザウイルス感染症」、同委員会で二次案を提示した「アニマルウェルフェアと採卵鶏生産システム」については、多くの国からのコメントに対処するため、さらなる専門家の意見を聴取する必要があるとして、アドホックグループ(特別専門家会合)でさらに議論することになったため、今回の総会では採択されなかったことが報告された。

コード委員会が提示した「鳥インフルエンザウイルス感染症」の一次案、「アニマルウェルフェア採卵鶏生産システム」二次案の改正ポイントなどは次の通り。

〈鳥インフルエンザウイルス感染症〉

一次案の主な改正ポイントは、緊急通報の対象を高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)のみとし、さらに、「家きん」の定義からバックヤード・ポートリー(裏庭養鶏)を除外する点。この案では、「H5やH7亜型の低病原性AI(LPAI)の発生は緊急通報の対象外となり、LPAIの発生を受けた輸入停止措置は課されないことが明記される。また、自家消費用の『裏庭養鶏』は『家きん』とみなされず、それらからAIが発生しても家きんや畜産物の輸入に影響を与えないことが明記される」。

これが問題となるため、日本は「①ウイルスはLPAIからHPAIに変異することがあるため、低病原性鳥インフルエンザの通報要件が維持されるように修正②自家消費用の鳥を含む飼養鳥における通報を維持するとともに、モニタリング対象とするよう修正」を求めるコメントを提出した。

5月のOIE総会では、6月のアドホックグループに議論を依頼しているとしてコード委員会からは特別な報告はなかったが、総会で日本(32か国・地域のアジア・太平洋地域の代表)は「疾病コントロールと国際貿易に使用する国際基準は、高病原性鳥インフルエンザと低病原性鳥インフルエンザの違いや、生産様式の違いを踏まえて策定されるべきであり、改正はしっかりとした科学的根拠に基づいて行なうこと」を求め、「今後の検討過程においても引き続き、すべての国からのフィードバックを考慮するように」と発言。このほか、ルーマニア(EU28か国の代表)からは、鳥インフルエンザ章の改正を早く進めてほしいとの発言があったとのこと。

〈アニマルウェルフェアと採卵鶏生産システム〉

コード委員会の二次案では、一次案の営巣の区域や止まり木が『設ける場合は』から『備えられるものとし』になるなど、いくつかの変更が行なわれていたことから、今年1月に日本は「敷料、巣箱が適切に管理されない場合、衛生上の問題が生じる場合があること」や、「良好なアニマルウェルフェア・健康の成果は、様々な舎飼いシステムで達成することができ、システムの設計や管理が重要であること」などを追記し、敷料、巣箱、止まり木などについては「提供・設置する場合は」との一次案の表現に修正したり、生産システムを具体的に制限しない表現に修正するコメントを提出した。

各国からコメントが提出された2月のコード委員会では、「著しい数のコメントが寄せられ、多くのコメントは、案の中で提案されている勧告のいくつかに反対していることに注目」し、案の修正を行なうアドホックグループに対し、①科学的根拠に基づき、動物の状態に基づいた測定指標に重点を置くこと②陸生コードの他のアニマルウェルフェアの章と調和すること③社会的・経済的考察や、食品安全保障への影響も考慮すること④根拠に基づくこと(エビデンスベース)――を勧告したとのこと。

OIE総会でも日本からは「気候、地理的な状況、文化、社会的要因などに応じて世界的に発展を遂げてきた多様な生産システムを考慮し、柔軟性が確保されたものであるべきであり、十分な議論を行なうよう」要請したほか、米国(アメリカ地域31か国の代表)からは「一次案では、多様な生産システムが認められる包括的な内容となっていたが、二次案では、広く普及しているケージ飼養を除外する内容が提案されており、支持できないため、一次案に戻すべき」旨の要請を行なったほか、コロンビア、インド、ジンバブエも、現状の飼養状況を踏まえた案となっていないことへの懸念が表明されたとのこと。

これに対しコード委員会は、「①多くの国が同様の懸念を有していることに注目②アドホックグループの4月会合では、すべてのコメントが検討され、現在の科学的情報とともに、生産システムの環境、社会的・経済的な面も検討された③OIEのすべての章は、採択されたらすぐに実施されるというよりも、時間をかけて実施されるだろう④コード委員会の作業のために、関連する科学的情報を提供することを加盟国に奨励する」などとコメントしたとのこと。

OIEの「鳥インフルエンザウイルス感染症」と、「アニマルウェルフェア採卵鶏生産システム」の両コードは、加盟国の支持が見込まれる案がまとまれば、早ければ来年5月の総会で採択され国際基準になるが、まとまらなければさらに検討が続く可能性もある。

5月のOIE総会で採択されたコードは、「動物衛生サーベイランス(改正)」、「疾病の予防および管理についての勧告の序論(新規)」、「アニマルウェルフェアの勧告の序論(改正)」、「狂犬病(改正)」、「アフリカ豚コレラ(改正)」の5コード。

また、今年(2019年)2月のOIEコード委員会で二次修正案を各国に提示し、9月に再検討予定の「用語集」、「馬インフルエンザ感染症」の改正案のポイントも報告された。