鶏卵生産者経営安定対策事業は52億円 飼料穀物備蓄量は60万トンに 平成25年度農水省予算案

政府は1月29日の臨時閣議で、平成25年度の予算案を決定した。養鶏関係では、3年目となる鶏卵生産者経営安定対策事業は、24年度と同額の約52億円となったほか、飼料穀物備蓄対策事業が16億1500万円(前年度13億7200万円)となった。

攻めの農林水産業の展開を目指す平成25年度農林水産省予算案は、2兆2976億円で、前年度当初予算を5.7%上回った。また、畜産・酪農経営安定対策予算は1.7%増の1770億円。このうち3年目を迎える「鶏卵生産者経営安定対策事業」は24年度と同額の51億8900万円。24年度補正予算案も加えた養鶏に関係する予算案の概要は次の通り。
鶏卵生産者の経営安定と鶏卵価格の安定を図る「鶏卵生産者経営安定対策事業」は、月ごとの鶏卵の標準取引価格が、補てん基準価格を下回った場合、その差額(補てん基準価格と安定基準価格の差額を上限とする)の9割を補てんする『鶏卵価格差補てん事業』と、日ごとの鶏卵の標準取引価格が、安定基準価格を下回った場合に発動する『成鶏更新・空舎延長事業』からなる。発動期間は、安定基準価格を下回った日の30日前から安定基準価格以上となる日の前日まで。この間に成鶏を更新し、その後60日以上の空舎期間を設けた場合、参加した生産者と、成鶏を処理した処理場に規定の奨励金を交付する。
「強い農業づくり交付金」のなかで、安全で高品質な国産食肉の供給体制を構築するため、産地食肉センター、食鳥処理施設、鶏卵処理(GP)施設、家畜市場の整備を行なうことにより、流通・処理コストの低減や製品の高付加価値化によって収益力の向上を図る『食肉等の安定供給のための施設整備への支援』は244億2200万円(前年度20億9300万円)の内数。補助率は2分の1または3分の1以内。24年度補正予算で見直された食鳥処理場の整備用件の基準は、25年度予算でも踏襲されるとみられる。
「水田活用の直接支払い交付金」は2517億1400万円。前年度の水田活用所得補償交付金と同じもので、水田で麦、大豆、米粉用米、飼料用米などを生産する農業者に、主食用米並みの所得を確保し得る水準の交付金を面積払いで直接交付するもの。飼料用米の交付単価は前年度と同額の10アール当たり8万円。
「飼料穀物備蓄対策事業」は、配合飼料の主原料であるトウモロコシやこうりゃんは輸入依存度が高く、海外からの供給途絶や国内の飼料工場での事故などで供給がひっ迫する事態に備え、(社)配合飼料供給安定機構が主体となって飼料穀物を備蓄し、安定的に配合飼料を供給する。24年度補正予算の71億5300万円と、25年度予算の16億1500万円の計87億6800万円で、備蓄する飼料穀物数量を35万トンから60万トンに引き上げる。昨夏の民主党政権の25年度要求予算では、事業主体を民間団体(配合飼料メーカー)とし、備蓄の飼料穀物を直接保管する民間団体に3分の1を助成する仕組みに改めたが、政権交代により、従来通り事業主体を(社)配合飼料供給安定機構とし、(独)農畜産業振興機構から定額補助する仕組みに戻した(24年度13億7200万円)。
「エコフィード(食品残さの飼料化)緊急増産対策」は、食品関連事業者と飼料化業者、畜産農家が、食品リサイクルによる資源の有効利用と飼料自給率向上に取り組むことを支援するもの。民間団体への定額補助で5700万円(24年度6700万円)。
「多様な畜産経営の推進と競争力強化」は、畜産経営の生産性・収益性を向上させる取り組みや、経営の維持・新規就農の促進、畜産農家の自己判断による経営の高度化・多様化の構築、原発事故の避難地域などにおける生産資材などの放射性物質のモニタリング体性構築などへ支援する。『強い農業づくり交付金』の244億2200万円(24年度20億9300万円)と、『産地活性化総合対策事業』のうちの農畜産業機械等リース支援事業22億7100万円(同52億8800万円)の内数。
「家畜排せつ物の利活用と畜産環境対策」は、環境と調和した畜産経営の確立を推進するため、水質汚濁と悪臭の適切な対処に必要な施設整備などを支援するもの。予算は『強い農業づくり交付金』の244億2200万円(24年度20億9300万円)と、『産地活性化総合対策事業』のうちの産地収益力向上支援事業22億7100万円(同52億8800万円)の内数。また、都道府県知事による処理高度化施設整備計画と共同処理施設整備計画の承認を受けた者の施設・機械の整備に対する日本政策金融公庫からの融資制度もある。
「家畜伝染病予防費負担金」は、家畜伝染病予防法に基づき、口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザなどの伝染病の発生予防とまん延防止を図るため、都道府県が行なう措置の全部または一部を国が負担するもので、前年度と同額の23億800万円。
「患畜処理手当等交付金」は、家畜伝染病予防法に基づき、と殺された家畜の手当金や死体の処分などに要した費用を、家畜などの所有者に交付(全額または2分の1)するもの。前年度と同額の9億2300万円。
「家畜衛生総合対策」は、口蹄疫や高病原性鳥インフルエンザなどの伝染病の発生予防とまん延防止、ならびにそれを支える産業動物獣医師の育成・確保の徹底を図ることによって、畜産の振興と畜産物の安定供給に寄与するもの。都道府県や民間団体への定額助成などで、53億5200万円(24年度56億7100万円)。
「家畜伝染病早期診断体制整備事業委託費」は、国家防疫上重要な家畜の伝染性疾病の早期診断のため、高病原性鳥インフルエンザや牛白血病検査のためのリアルタイムPCR用試薬や検査体制を整備するもの。民間団体への定額助成で、4500万円(24年度5300万円)。
「農場生産衛生向上体制整備促進事業」は、HACCPの考え方を取り入れた家畜の飼養衛生管理(農場HACCP)を推進し、取り組んでいる農場を平成19年度の約2000戸から平成25年度は約5000戸に拡大させ、わが国の畜産物の安全性の一層の向上と消費者の信頼確保を図るもの。民間団体への定額助成で、1500万円(24年度1800万円)。
「家畜衛生の推進」は、地方の自主性を生かし、家畜衛生に関する監視・危機管理体制の整備や、生産性を阻害する慢性疾病などの被害低減対策などの取り組みをソフト、ハードの両面から進めるもの。地域と一体となったネズミなどの野生動物の侵入防止・駆除や、農場バイオセキュリティの向上のための取り組みや防鳥ネットの整備、移動式レンダリング施設などの整備を含む。都道府県、市町村、農業者団体などへの助成で、『消費・安全対策交付金』20億9600万円(24年度26億600万円)の内数。
「動物検疫所の検疫事業費」は、海外からの家畜の伝染性疾病や人獣共通感染症の侵入を防止するため、動物検疫措置の充実強化を図るもので、18億4100万円(24年度9億3300万年)。
継続事業の「獣医療提供体制整備促進総合対策事業」は1億1200万円(24年度1億1000万円)、ダイオキシンなどの「有害化学物質リスク管理推進事業費」は4300万円(同5100万円)、飼料や動物用医薬品、農薬と肥料の調査・試験実施の「生産資材安全確保・試験事業委託費」は3億3100万円(同3億1600万円)、「生産資材安全確保推進事業」は2億6500万円(同2億9400万円)、都道府県での飼料の安全の確保や動物用医薬品のリスク管理機能の強化を支援する「畜産物の安全の確保」は、『消費・安全対策交付金」20億9600万円(同26億600万円)の内数、アジア地域で流行する疾病に対応した動物用医薬品の開発と供給体制の基盤を整備する「感染症対策等の域内協力体制確立に向けた動物用医薬品開発・供給体制整備事業」は1900万円(同2200万円)、「動物用医薬品安全等対策事業」は2400万円(同2900万円)、動物医薬品検査所での「動物用医薬品等の検査の実施」は3億500万円(同3億2100万円)、都道府県への「薬事監視事務委託費」は前年度と同額の400万円、サルモネラやカンピロバクターなど6品目の「微生物リスク管理基礎調査事業委託費」は8600万円(同9600万円)などで、このほか「食品の安全性向上措置の検証」も『消費・安全対策交付金」の内数に含まれる。

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