令和2年度のHPAI発生を踏まえた提言

1、人・車両、野鳥を含む野生動物を介したウイルスの農場内と家きん舎内へのウイルス侵入の防止

(1)人や車両を介して農場内・家きん舎内にウイルスが持ち込まれることを防止する観点から、飼養衛生管理基準の順守を改めて徹底する必要がある。

①特に、家きん舎に入る際に、手指消毒や家きん舎ごと専用の手袋・長靴を使用することが重要であり、家きん舎の数に応じた手指消毒設備の設置もしくは手袋・長靴を用意するとともに、それらの更衣の際に交差汚染を防ぐ手順で実践することが求められる。

②従業員一人一人が手順を確実に順守できるよう、飼養衛生管理マニュアル(令和4年2月施行)は、図示や多言語化により全従業員が理解できる表現形式とするとともに、従業員に対する講習会の開催頻度など、手順の周知方法や、手順に沿った更衣・消毒ができているかを事後確認するため、入退場と更衣・消毒の記録の方法についても併せて規定することが有効と思われる。

(2)今シーズンは国内の多くの地点で野鳥の感染が確認され、様々なウイルス株が確認された。また、今シーズンは欧州でもこれまでにない多くの農場で発生が確認されている。わが国の今シーズンのウイルスは、前シーズンのヨーロッパ由来のウイルスや、それと野鳥株との遺伝子再集合株であることが確認されていることから、今シーズン世界各地で発生したウイルスを野鳥がシベリア等の営巣地に持ち帰り、来シーズンにわが国に持ち込まれる可能性は十分にあると考えられる。このため、来シーズンも引き続き野生動物対策を徹底する必要がある。

①このため、家きん舎周辺の整理・整頓(野生動物の隠れ場所となる物品を置かないことや、家きん舎周辺の草刈り)や、外部からウイルスを持ち込む可能性が否定できない野鳥などの小型の野生動物が侵入困難な2センチメートル以下の網目の防鳥ネットの家きん舎への設置・破れがあった際の速やかな修繕に取り組むこと。

②ウインドレスの家きん舎であっても、除糞ベルトや集卵ベルトの通過口等からの野生動物侵入を防止するためカバーやシャッターの設置等の対策を行なうことを、日常の点検方法・体制についてマニュアル等に明記することで、従業員すべてが危機感を共有すべきである。

(3)複数の発生事例が確認された地域では、ウイルス量が増大していたことが推察されるが、野生動物等によりウイルスが保持・拡散された可能性や、発生農場との人や物の動きで感染拡大した可能性について、今シーズン発生したウイルス株に関する調査研究などにより明らかにすることが今後の対策の検討に有効と考えられる。

また、養鶏密集地域では環境中ウイルス量の増大を考慮し、農場内の消毒に加え、畜産関係車両が通行する主要道路の消毒といった地域全体の取り組みも対策の一つとして有効と考えられる。

2、初動防疫を迅速に措置するための早期通報

(1)今季の鶏での発生事例では死亡の増加、アヒルでも産卵率の低下や神経症状が確認されていることから、本病の特徴を周知し、該当する異常所見が確認された場合に速やかに家畜保健衛生所に通報する体制を整えることがまん延防止に有効と考えられる。

(2)冬季は室温の低下、乾燥、他疾病による死亡が増加する傾向があるが、まずは鳥インフルエンザ感染の有無を確認することが重大な被害を防ぐ上で何よりも重要である。このためには早期通報の基準(通例の2倍以上の死亡や、チアノーゼ等の症状)について具体的な数値や写真を用いて日頃、飼養管理に携わる従業員などの関係者に周知し、認識を共有した上で、実践することが重要と考えられる。