甲州地どり生産組合直売店で『食べ比べ会』

地鶏のファンと理解者増やしたい

6次産業化を目指して10年間に建てた『甲州地どり市場』

当日は参加者数を絞って開催。地鶏肉の特徴を紹介した

さばきたての甲州地どりの正肉、砂肝、レバー

地鶏肉のおいしさを感じ、情報を広めてほしい――。(農)甲州地どり生産組合(加藤健代表理事)は10月29日、甲府市伊勢の直売店『甲州地どり市場』にSNSに親しむ消費者や流通関係者ら7人を招き、銘柄鶏との食べ比べ会を開いた。

約3年前から毎月1度開いてきたイベントで、コロナ禍の影響で一時中断していたが、今回は参加者数を絞って再開した。料理研究家の守屋若奈さんが腕を振るい、加藤健代表と加藤政彦会長が味の特徴や甲州地どりならではの〝ストーリー〟を伝えた。

加藤会長は食べ比べ会を始めた経緯について「以前、マスコミ関係者に地鶏と銘柄鶏を一緒くたに扱われ、非常に悔しい思いをした。銘柄鶏にも生産者の工夫があるが、それを『地鶏』と書かれるのは…。腹が立つというよりも無力さを感じ、それならば自分たちでファンや理解者を増やしていこうと決めた」と説明。

令和元年の食鳥流通統計によると、肉用若どりの年間処理羽数は約7億1200万羽。これに対し、3か月以上肥育するその他の肉用鶏(地鶏や長期飼育型の鶏など)は約850万羽と1%程度で、その中でも甲州地どりは2万羽前後と非常に希少。

当日はそれぞれの鶏種や飼育基準、価格帯をまとめたリーフレットを配り、甲州地どりの特徴について①交配様式は山梨県保有の雄系シャモ×雌系ホワイトプリマスロック②約120日間の長期肥育③全期間にわたり抗生物質無投与かつ3.3平方メートル当たり10羽以下の飼養密度④45日齢以降は自然豊かな農場で放し飼い⑤エサは非遺伝子組み換えのトウモロコシと植物性たんぱく質がメイン⑥県の認証食品に選ばれている――と紹介。グルメ漫画『美味しんぼ』に加藤会長と同地鶏が登場したり、テレビ番組『キッチンが走る!』『うまいッ!』などメディアで特集されることも多い。

肉の価格は若どりの3~4倍だが、加藤会長は「どうしても高価になってしまうのは、甲州地どりを体重3.3キロに育てるには15キロのエサが必要で、これは一般的な鶏の約3倍に当たるため。ただ、地鶏というのは日本の食文化である『刺身』の延長線上というか、素材の味を大切にしながら、在来種の血統を守って改良してきたもの。私たちはプライドを持ち、皆さんの『本当においしい』との言葉を励みに頑張ってきた。経済的にはものすごい悪いが、味は良いと言い切れる。まずは、普通の鶏とは全然違うものと理解していただきたい」と、甲州地どりへの想いを話した。

参加者はブランド名を伏せた2種類の鉄板焼きを食べ比べ、肉の色味やコク、食感からどちらが甲州地どりかを予想。感想も用紙にまとめて提出した。

その後は守屋さんが同地鶏を調理した『皮入りサラダ』『手羽先のハーブから揚げ』『とりぶしのせ厚揚げ』『ささみのワサビ焼き』などが振る舞われ、メインは肉と内臓をタレで味わう『鶏すき焼き』。同氏は肉はもちろん、副産物も最高の品質と評価し「特にレバーのなめらかさと、砂肝の絶妙な食感は他にない。この地鶏には豊かなストリー性もあるので、それを知ってもらうことで余計においしく感じてもらえる」とコメント。同席した山梨県畜産酪農技術センターの小泉伊津夫所長と松下浩一研究管理幹も消費者と交流し意見交換した。

食事や催事のできる直売所『甲州地どり市場』のオープンから10年。3年前に組合のかじ取りを引き継いだ加藤健代表は「今年のコロナ禍を含め良いことばかりではないが、店を建てたことで拠点ができ、食べ比べ会や料理教室など、できることの幅が広がった。たとえば飲食店からオーダーを受けたら、ここですぐに手さばき・加工できるのも強みで、小回りの良さが武器になっている。今後も消費者と実需者への情報発信とともに、ご意見をいただき、甲州地どりのブランド力を高めたい。それと同時に、県民の皆さんが気軽に味わえる機会や、商品開発にも力を入れていく」と話している。