日本の「たまごニコニコ大作戦」とキユーピーが受賞 IEC京都大会

京都大会に参加した若手養鶏家らも登壇して「Two Eggs!!」とアピール

IEC京都大会(グローバル・リーダーシップ会議)では、日本の鶏卵業界人も多数登壇し講演したほか、表彰でも日本の『たまごニコニコ大作戦』が鶏卵マーケティング部門の「ゴールデン・エッグ・アウォード」、キユーピーが加工卵部門の「クライブ・フランプトン賞」を受賞した。

赤木氏がオープニングスピーカー

10日には、フュージョン㈱の赤木八寿夫社長がオープニングスピーカーとして「日本の鶏卵市場の動向」の演題で講演。来日した300人を超える世界の鶏卵業界人に向けて、日本の多様な食文化を紹介しながら、日本の卵料理の豊富さや、日本人がどれほど卵を愛し、どれくらいの頻度で食べているかを説明した。

このうち日本の卵文化については、卵百珍の「黄身返し卵」から、職人が焼き上げる伝統の厚焼き卵、錦糸卵の生産現場、卵を入れる食べ方を日常的に放映している「日清チキンラーメン」のコマーシャル、「寝冷えネコ」や「ぐでたま」などのキャラクターを使ったオムライスアート、コンビニエンスストアの卵を使った多種多様な総菜、さらにパスタやハンバーグなどの洋食にも、好んで卵をトッピングしていることを挙げ、「日本人は、他国の食べ物をカスタマイズすることが大好きだ。その際に我々は、卵を焼いたり、半熟にしたり、あるいは生のままやソースにしたりしてよく使う。暖色系の食材は料理をよりおいしく感じさせるが、黄色の食材はとても少ない。卵はその数少ない食材として、それ自体がおいしく、また料理全体を引き立てる。つまり、これは重要なことだと思うが、卵は人を幸せにする」と強調。

会場周辺にも多いコンビニエンスストアや、卵のトッピングが定番の讃岐うどんのチェーン店での注文の仕方なども紹介し、日本の卵文化を体験してほしいとPRした。

中原氏はアジアの飼料畜産業について

DSM㈱の中原雄司社長は「アジアの飼料畜産業のバリュードライバーとしてのサステナビリティー」の演題でプレゼンテーション。世界人口が急増する中で①安全な食料の安定供給②温室効果ガスの排出削減③水資源や抗生物質の使用抑制④食料廃棄問題の解決――など、人類の持続可能性にかかわる諸課題に対処するために、特にアジアでは鶏卵産業の役割が拡大していると解説し、「この約半世紀で人口が2.3倍に増えた一方、鶏卵生産量は4.9倍に増えた」「鶏卵1キロの生産に必要な水資源は豚肉の約半分、牛肉の約5分の1と少なく、同量のたんぱく質を生産するために使う水資源は穀物や豆類と同水準にある」ことなどをデータで示した。

飼料業界の役割については、サステナビリティーに関連する①破卵・汚卵率の一層の低減②生産性の向上③窒素やリンの排出量低減④産地が限られている大豆への依存度の低減――などの課題解決に、ビタミン、ミネラル、カロテノイド、酵素などの飼料添加物が貢献できることを説明。

さらに他のアプローチとして、輸送技術にはまだ改善の余地が大きいことなどを指摘したうえで「仮に、レイヤー産業全体が使う年間1億4900万トンの飼料に酵素技術を導入すると、温室効果ガスの削減割合は産業の年間総排出量の7%、二酸化炭素換算の削減量は自動車520万台が1年間走った際の排出量に相当する1240万トンとなり、白熱電球4億3900万個を1年間LED電球に交換したのと同等の効果がある」と試算。「この数字は決して小さくないが、また大きくもなく、実現に向けて取り組んでいけるものと考えている」とし、「飼料添加物の技術は、すべての人々にとってのサステナビリティーの向上につながる」と述べた。

尾崎氏は日本の鶏卵市場を紹介

㈱キユーピーエッグワールドトレーディングの尾崎雅人社長は、「日本の鶏卵市場の紹介と、キユーピーの挑戦」について講演。市場の構造や特徴については、日本の1人当たり年間鶏卵消費量や典型的な卵料理、卵百珍に代表される卵好きな国民性、卵黄色や柔らかさなどの物性にも繊細な配慮が必要なこと、コンビニエンスストアでの加工卵の活用事例などのほか、日本の鶏卵総生産量の約50%がテーブルエッグとなり、残りの約30%が外食業界、約20%が加工業界で使われていることを紹介した。

加工卵市場の展望については「人口減と少子高齢化、人手不足や共働き世帯の増加が進む日本では、外食や加工食品への需要は、今後も安定的に伸びていくとされている。家庭で調理する機会が減る中、消費者の『3つのLess』(タイムレス、スキルレス、ストレスレス)に対応して食品を開発しなければならない。このため、キユーピーグループも〝混ぜるだけ〟〝温めるだけ〟など時間がかからない商品、外食業界において調理技術がなくても簡単に調理できるメニュー、パッケージが簡単に開けられる食品の開発などに注力している。さらに鶏卵生産量全体に占める加工向けの割合は、米国の約35%や、EUの20~25%に比べると低く、加工卵や外食向けの鶏卵需要は、今後もまだまだ成長の余地があるとみている」と説明。

鶏卵消費量全体の見通しについては「2021年までに、1人当たり年間340個にまで増やしたいと考えている。そのためには、新商品を開発し、新しい市場を創っていかなければならない」と述べ、現在取り組んでいるイースターの普及活動や、スーパーなどでの卵の栄養価値の普及活動を紹介。「このようなイベントを、業界の多くの関係者と協力しながら実施できれば、より大きな運動になると期待している」とし、創業者の中島董一郎翁の〝優れた製品は良い素材からしか生まれない〟との言葉を引用して「キユーピーのビジネスが成長しているのは、養鶏産業の皆様が大変優れた卵を生産しているおかげであり、そのことに深く感謝している。今後も、我々のビジネスを皆様と共存する形で進めていきたい」と述べた。

国別近況報告や各賞受賞も

毎年秋のIEC会議で実施される、各国鶏卵産業の近況報告では、日本の概況やAI発生、国際競争などの諸課題について、㈱アキタの藤井治人生産管理部部長代理が報告した。

秋のIEC会議では、その年に最も活躍した国際的な鶏卵業界人に贈られる「デニス・ウェルステッド賞」や、その年の最も優れた鶏卵のマーケティング活動に贈られる「ゴールデン・エッグ・アウォード」、品質や技術、販売、持続可能性などの評価基準から最も革新的かつ特筆すべき活躍をみせた加工卵メーカーや人物を表彰する「クライブ・フランプトン・エッグプロダクツカンパニー・オブ・ザ・イヤー」の受賞者も発表される。

今年のデニス・ウェルステッド賞は、英国の代表的な鶏卵業界人として長年活躍し、国際団体の役職も歴任したアレッド・グリフィス氏(オークランズ・ファーム・エッグス)が受賞。

ゴールデン・エッグ・アウォードには、日本、中国(大手鶏卵企業の徳青源〈DQY〉)、タイ(同国ブロイラー最大手の正大食品〈CPグループ〉の中国での鶏卵事業)、カナダ(生産者団体のエッグ・ファーマーズ・オブ・カナダ)の4チームがエントリー。各チームの代表は11日午後に、それぞれのマーケティング活動について発表し、13日の閉会式で日本の『たまごニコニコ大作戦(Two Eggs Project 2018)』の取り組みが今年のアウォードに選ばれたことが発表された。

プレゼンテーションは㈱愛鶏園の齋藤大天社長と、共和機械㈱の友末琢磨社長が交代で担当。「卵は1日1個まで」との誤解を解くだけでなく、〝卵の素晴らしさ〟を広く普及させることで、卵の生産者と消費者、関連産業のいずれもが「ニコニコ」の笑顔になれるよう、鶏卵業界人自らが「卵を1日2個食べよう」とPRするイベントを全国各地で催した結果、今春は①鶏卵産業の200社以上が協力し、5万6000人以上を集客②イベントを中継したフェイスブックページへの1日当たり平均リーチ(閲覧ユーザー数)は1159人、合計エンゲージメント(いいね!などの反応数)は2万3993回、エンゲージメント率は23.3%に達した③各地方のマスメディアにも取り上げられ、鶏卵消費量にも増加傾向がみられた――ことなどを紹介。

京都大会に出席した日本の若手鶏卵業界人も黄色い「たまニコTシャツ」で登壇し、齋藤氏が「ゴールは年間1人730個の達成(笑いと拍手)。トゥー・エッグス・プロジェクトを世界中に広げていこう!」と呼びかけると、会場から大きな拍手が送られた。

クライブ・フランプトン賞は毎年、公式晩餐会で発表され、今年はキユーピーグループが受賞。トロフィーを受け取った尾崎氏は「大変驚いているが、鶏卵産業の多くの方々に感謝したい。我々は生産をしておらず、高品質の鶏卵を生産されている皆様に支えられている。このトロフィーはとても重く、プレッシャーを感じているが、引き続き鶏卵産業のさらなる発展に向けて励んでいきたい」と喜びを語った。