HPAIの最新情報と対策を共有 越境性動物疾病防疫対策強化推進会議
農林水産省は、9月28日に令和3年度「越境性動物疾病防疫対策強化推進会議」をオンライン形式で開き、都道府県の家畜衛生担当者らと高病原性鳥インフルエンザ(HPAI)や豚熱、アフリカ豚熱などに関する最新情報を共有するとともに、発生予防とまん延防止対策を確認した。
省令・指針を改正し防疫体制強化
冒頭あいさつした野上浩太郎農林水産大臣は「昨シーズンはHPAIが18県で52事例発生し、殺処分羽数は過去最大の約987万羽となった。
昨年はシーズン前の10月に加え、1月にも当会議を開催し、関係者が一丸となって発生予防とまん延防止に努めた。シーズン後には防疫措置を通じて判明した課題に対応するため、飼養衛生管理基準などを改正し、家畜の伝染性疾病の発生に備えて対策を強化した。
9月10日に農林水産省鳥インフルエンザ防疫対策本部を開催したが、海外の状況を踏まえると、次のシーズンも引き続き注意が必要である。本格的な渡り鳥の飛来シーズンを迎えるに当たり、都道府県の皆さんにも今回の改正を踏まえた家畜伝染病対策の実効性を高め、発生予防とまん延防止に努めるようお願いする。
家畜伝染病の発生時には地域の畜産業を守るため、全県的な対応により防疫措置に万全を期すことが必要である。机上演習の実施などを通じて、都道府県内の危機管理部局、警察、市町村、関係団体の協力を得て、実効性のある全県的な体制を確立するよう、私からも強くお願いする」などと述べた。
会議では、動物衛生課の担当者が海外での越境性動物疾病の発生状況と10月1日付で一部改正・変更する家畜伝染病予防法施行規則(飼養衛生管理基準など)、飼養衛生管理指導等指針、特定家畜伝染病防疫指針ついて報告した。
鳥インフルエンザの世界的な発生状況については「韓国では昨シーズンに109件で発生し、約1043万羽が殺処分された。これを受けて韓国では新たなHPAI対策として、施設・設備やバイオセキュリティの状況、過去のHPAI発生歴に応じて採卵鶏農場を3つの型に分類し、予防的殺処分から逃れられる選択肢を農家に与える方策を試行中である。この目的は農場の防疫管理水準の向上で、仮に自分の農場で発生すると補償金が減額されるなどの条件がある。
ヨーロッパでも昨シーズンは発生が多く、10月の段階では2016-17年シーズンに比べて西側での広がりが早かった。4月の段階では野鳥、家きんともに発生件数が多くなり、渡り鳥だけでなく留鳥にもウイルスが広がったおそれがある。
昨シーズンは、19-20年シーズンの春から夏にかけて、ヨーロッパからの渡り鳥が持ち込んだウイルスがシベリアの営巣地で広がり、20年秋に日本に持ち込まれたという状況であった。このことを考えると、20年秋にヨーロッパで大発生したため、21-22年シーズンのアジアにウイルスが持ち込まれる可能性は十分に考えられる」と紹介。
また、昨シーズンの防疫対応などを踏まえた省令・指針の主な改正点(10月1日付)として次の3点を挙げた。
▽大規模農場の畜舎ごとの飼養管理者の配置=畜舎ごとに担当の飼養衛生管理者を選任することを義務付ける。同一の者が複数の畜舎を担当する場合には、1人が担当する飼養頭羽数に上限を設定する(鶏は10万羽)。
▽埋却等に備えた措置=①「家畜所有者」埋却地または焼却施設を確保することを規定。これらが困難な場合は、代替措置として埋却・焼却・化製に関して都道府県が求め取り組みを実施する②「都道府県」家畜所有者による埋却地の確保が困難な場合は、代替措置(焼却施設との事前協定締結、移動式レンダリング装置の活用準備等)について家畜所有者と共同で対応する。また、埋却地の確保と周辺住民の理解醸成に向けた取り組みを指導する。
▽大規模農場の事前の発生対応計画の策定=家畜の頭数が多く、殺処分等に多大な時間を要すると都道府県知事が認める家畜所有者は、発生に備えた対応計画を策定することを義務付ける(鶏は20万羽以上)。
鳥インフルエンザの国内外の発生状況について説明した農研機構動物衛生研究部門人獣共通感染症研究領域振興ウイルスグループの内田裕子氏は野鳥の飛行経路や、ヨーロッパで発生したHPAIウイルスに由来するHAを持つウイルスの推定移動経路などを示し、「令和2年度の発生も国外からの渡り鳥がHPAIウイルスを運搬し、家きんでの発生を引き起こした。10月下旬には日本国内に侵入していたため、今年度も早めの対策が必要である。昨年冬に発生した遺伝子系統のHPAIウイルスが4月以降もヨーロッパ、アフリカを中心に報告されており、同系統のウイルスが野鳥を介して国内に侵入する可能性がある」と指摘した。
また、動物衛生課の担当者が9月10日付の消費・安全局長通知「令和3年度における高病原性鳥インフルエンザ等の防疫対策の徹底について」の内容(10月5日号1面既報)を説明し、①家きん飼養農場での飼養衛生管理基準の順守指導の徹底(10月~3月まで7項目の一斉点検と結果の取りまとめ・報告)②早期発見・早期通報③的確な初動対応の徹底と連携体制、埋却地等の確認④防疫演習(机上演習を踏まえた防疫計画の検証・改善)⑤その他(野鳥のサーベイランス)――を都道府県に要請した。