2030年に5兆円 農林水産物・食品輸出額の新目標

政府は3月6日に「農林水産物・食品の輸出拡大のための輸入国規制への対応等に関する関係閣僚会議」を開き、農林水産物・食品の輸出額を2030年に5兆円とする新たな目標を示した。

2019年の輸出額は前年比0.6%増の9121億円で、7年連続で過去最高を更新したものの、政治・経済の情勢や生産量の減少などにより、目標としていた1兆円には届かなかった。

このため、今年4月に農林水産省内に「農林水産物・食品輸出本部」を設置し、工程表に基づき輸出先国との協議の加速化、輸出向け施設整備・認定の迅速化、輸出証明書の申請・発行の一元化を図る。

さらに農林水産物・食品輸出プロジェクトによるマッチングやグローバル産地づくりの支援、戦略的なプロモーションの実施、生産基盤の抜本的強化による生産量の拡大、魅力発信による販路拡大などを進め、2025年に2兆円、2030年に5兆円の輸出額を目指す。

工程表に示された相手国・地域との協議への対応のうち、鶏卵・鶏肉関係は次の通り。

▽シンガポール=対象事項は「鶏肉、鶏肉製品、鶏卵、鶏卵製品の施設認定権限がシンガポール側にある」ことで、①輸出実績を踏まえて、鶏肉、鶏肉製品、鶏卵製品について、厚労省が輸出施設を認定する仕組みとするよう、シンガポール政府と協議を開始②鶏卵については農家登録が要件であるため、農水省が対応――する方針。

▽台湾等=対象事項は「他国に対し、家畜伝染病にかかわる地域主義が適用されていない」ことで、農水省が引き続き協議を実施する方針。台湾については、高病原性鳥インフルエンザの地域主義にかかわる質問票への回答を作成・提出する。

▽中国=対象事項は「鶏肉の解禁協議」「鶏卵の解禁協議」で、①高病原性鳥インフルエンザに対する中国側の輸入禁止令解除のため、農水省は中国側と協議②厚労省と農水省は、中国向けの輸出解禁に向けて協議を実施――する方針。

▽フィリピン=対象事項は「豚肉・家きん肉の解禁協議」で、家きん肉の輸出については、厚労省と農水省が質問票への回答を作成・提出する方針。

▽米国=対象事項は「家きん肉の解禁協議」で、①厚労省は、米国農務省食品安全検査局(FSIS)評価への回答を提出②厚労省は現地の調査受け入れ③厚労省と農水省は、衛生条件・証明書様式を合意し、輸出要綱を公表――する方針。

▽EU=対象事項は「原材料中の卵・乳の使用割合が50%未満の加工食品については2021年以降、原材料の施設認定が必要となる予定」で、①農水省は、2021年4月21日以降の新制度の適用について、保健衛生・食の安全総局(DG-SANTE)から回答を受けた後、新制度の概要を事業者へ周知②厚労省と農水省は、EU規則施行後、速やかに要綱を策定――する方針。

▽ロシア=対象事項は「家きん肉・卵の解禁協議」で、厚労省と農水省は①ロシアから最終報告書が提示されれば、これに基づき輸出条件、衛生証明書を協議し、合意②輸出要綱を公表(合意の翌月)――する方針。両省は、外交ルートを通じて引き続き最終報告書の提出を要求し、ロシアから追加質問があれば、これに対する回答を提出する。

▽UAE(アラブ首長国連邦)=対象事項は「加熱処理家きん肉の解禁協議」で、①UAEから追加で質問や資料提供の依頼があれば対応②衛生証明書様式に合意をした後、1か月以内に厚労省と農水省は輸出要綱を公表――する方針。農水省は輸出に必要なハラール対応について情報提供する。