農林水産省 AI警戒で各県に通知 防疫対策の徹底を確認
農林水産省は9月9日、消費・安全局長名で都道府県に高病原性鳥インフルエンザ(AI)の防疫体制を強化するよう通知した。また18日には、都内の三田共用会議所で都道府県の家畜衛生担当者を集め、「平成27年度AI防疫対策強化推進会議」を開き、国と都道府県、家きん飼養農場が情報を共有して防疫対策を徹底し、発生防止に万全を期すことを確認した。
AIは近年、世界的な流行がみられるほか、特に昨年から今年にかけて韓国、台湾で大きな発生が確認され、米国でも約5000万羽の家きんが殺処分された。昨シーズンは、わが国では単発の5例の発生にとどまったが、農水省の通知では、世界の野鳥によるウイルス分離状況、渡り鳥の飛来ルートなどを考慮すると、「北米大陸で感染した渡り鳥によってロシアなどの営巣地に運ばれたウイルスが、今秋以降の渡り鳥のシーズンに日本に持ち込まれる可能性は否定できない。また、近隣諸国の発生状況を踏まえると、今年度もウイルスが海外からわが国へ侵入する可能性は非常に高い」とし、家きん飼養農場へのウイルス侵入防止策を的確に講じることで発生リスクを低減させることが重要だと強調。
具体的には、発生予防対策では、①家きん飼養農場での飼養衛生管理基準の順守状況の確認と適切な指導の徹底②野鳥、ねずみなどの野生動物対策の徹底(鶏舎の隙間など、野生動物が侵入しないようにするほか、池などの野鳥生息地の近くや、野生動物の生息しやすい環境にある農場では、定期的に点検を行なうよう指導することなど)③AIに関する情報の共有④野鳥のサーベイランスの実施など。まん延防止対策では、①早期通報の再徹底②的確な初動対応の徹底と連絡体制の再確認③AI発生に対する必要な人員の確保④防疫資材などの確保⑤低病原性AIの監視体制の強化――などを求めている。
18日のAI防疫対策強化推進会議は、①昨シーズンにおけるAIの発生②各都道府県における防疫体制の取り組み③最近のAIをめぐる情勢④AIの防疫体制の強化⑤その他――などについて農水省から説明され、家きん飼養者の飼養衛生管理基準の順守の徹底や、異常鶏の早期発見・早期通報などの指導、発生時の的確な防疫の初動対応など、防疫指針や通知に基づいて、適切な防疫体制で発生防止に万全を期すことを確認した。
鳥インフル対応で日中韓が覚書締結
日本と中国、韓国の農業大臣会合が9月12、13日に都内のホテルで開催され、食料の安全保障や動植物の疾病など9項目での協力を盛り込んだ共同声明を採択するとともに、鳥インフルエンザなどの越境性動物疾病への対応で日中韓の協力覚書を締結した。
昨冬のAI、渡り鳥が持ち込む
疫学調査、鶏舎へは野生動物や野鳥から
農林水産省のAI疫学調査チームは9月9日、昨年12月から今年1月にかけて宮崎、山口、岡山、佐賀の4県で発生したAI(H5N8亜型)疫学調査報告書を公表した。
H5N8亜型AIウイルスは、これまで国内で確認されていない3系統で、うち1系統が鶏で発生。祖先は平成26年に韓国で流行した株であるが、同年9月から12月にかけて韓国で流行した系統や、26年4月に熊本県で確認されたウイルスとも異なっていることから、「26年秋から冬季にかけて、越冬のために南下するウイルスに感染した渡り鳥によって持ち込まれた可能性が高い」とした。
農場への侵入経路については、人・車両や飼料・飲水から鶏舎のウイルスが持ち込まれたことを示唆する情報は得られなかったが、発生農場付近は、共通して豊かな自然環境がみられることから、「ウイルスが野生動物や野鳥により持ち込まれた可能性は否定できない」との見方を示した。
今後の発生予防については、①家きんの異常に気づくことができる健康観察と早期通報②野鳥・野生動物によるウイルス侵入防止対策の徹底③農場・鶏舎の消毒などのバイオセキュリティの再徹底④情報収集――などを提言している。