広がる中国のH7N9型鳥インフルエンザ 侵入防止へ万全な防疫対応を
中国のH7N9型鳥インフルエンザウイルス感染者の拡大が止まらない。4月21日現在の感染者は103人、うち20人が死亡した。感染源や感染経路、人から人への感染が起きているのかどうかなど、まだ分からない部分が多い。中国農業省は、今年4月から家きんの低病原性H7N9型ウイルスの検出をOIE(国際獣疫事務局)に報告するようになったが、これまでは低病原性鳥インフルエンザウイルスの検出件数を報告していないため、家きんの感染実態に不安が残る。現段階でウイルスがわが国に侵入する可能性は低いとみられるが、万全な防疫体制を維持することが重要である。
中国は世界最大の家きん飼養大国。レイヤー羽数は、IECの2011年報告で14億羽、FAO(国連食糧農業機関)の2010年統計では、鶏の飼養羽数(レイヤー、ブロイラーの合計)48億羽、鶏の生産羽数(食肉用の羽数とみられる)81億5524万羽となっており、飼養形態も企業的に飼養する大規模なものから、10羽、20羽の庭先(放し飼い)のものまであり、衛生水準も千差万別。加えて、鶉(うずら)は本紙が得た情報で約2億羽、これ以外に多くのあひる、ガチョウ、食用の鳩や諸鳥類などが各地で分散して飼育されているようで、正確な飼養実態は当局も把握不可能といわれている。しかも低病原性の鳥インフルエンザウイルスは、鳥では発病しない場合が多いため、中国の家きんや野鳥に広く感染しているのでは、と疑われている。
中国人にとって、生きた鳥をその場で処理した肉は、鮮度や偽装の心配がなく、一番おいしいと考えられているため、どの市場でも生鳥が売られている。今回の鳥インフルエンザの発生で発生地を中心とする生鳥市場が閉鎖され、消費者の家きん肉離れも深刻化して、価格は大暴落していると伝えられる。
わが国でも中国の鳥インフルエンザの影響から鶏肉や鶏卵の風評被害が心配されたが、幸い現在までは、スーパーや食鳥専門店の売れ行きに悪影響は出ていないようだ。
中国からの輸入については、生きた家きんや家きん肉は禁止され、加熱処理されたものだけが認められている。しかも生産農場では(1)鳥インフルエンザワクチンが接種されていない(2)と殺前の少なくとも21日間は高病原性鳥インフルエンザなどの発生がない――ことが条件となっている。
中国で食用鳩や野生の鳩から低病原性のH7N9型鳥インフルエンザウイルスが検出されたことを受け、農林水産省は国内のレース鳩と伝書鳩を鳥インフルエンザの検査対象に加えるように各県に通知した。また環境省も、春に中国から日本に渡ってくる可能性のある野鳥のシギ・チドリ類とサギ類、日本に生息する鳩のうち、移動距離が長いキジバトの体液や糞などを鳥インフルエンザの検査対象に加えた。
低病原性のH7N9型鳥インフルエンザの脅威は今年だけの問題ではなく、渡り鳥の移動により、来年は中国以外の国で感染が拡大する可能性も指摘されている。わが国でパニックを起こさないためにも、防疫体制を一層徹底し、養鶏現場への侵入防止に万全を期さなければならない。