2回目の「鶏卵の需給見通し」 日本養鶏協会が公表

当面は供給源で価格も堅調 安定供給に万全を期す必要も

(一社)日本養鶏協会(齋藤利明会長)は3月31日、令和2年度で2回目となる「鶏卵の需給見通し」を公表した。1回目(昨年9月)の段階では、需要面は新型コロナウイルスの影響で内食需要が増加したものの、業務・加工用は減少。供給面では生産過剰の状況が続いていたため、生産者個々の判断で「需要に見合った生産が必要」としていた。2回目の今回は、需要面では新型コロナの影響が継続しているが、生産面では鳥インフルエンザの発生で約900万羽の採卵鶏が殺処分されたため、供給減に転じ、鶏卵価格も上昇傾向で推移し、安定供給に万全を期す必要があるとしている。短期的と長期的な見通しの概要は次の通り。

短期的な見通し

①需要

新型コロナウイルス感染症の影響が継続し、新たなライフスタイルが浸透していく中での需要動向を見通す必要がある。

《国内消費》家計消費用では、2020(令和2)年秋からの新型コロナウイルス「第3波」の感染拡大の懸念から、引き続き内食ニーズが高く、当面は堅調な推移が見込まれる。

一方、業務・加工用については、3密(密集、密閉、密接)の回避、大人数や長時間におよぶ飲食の回避、ソーシャルディスタンスの確保など、感染防止のための意識や行動が定着する中、テイクアウトやデリバリーに一定の需要はあるものの、行楽・インバウンド需要の回復は期待しがたい。

外食やホテル料飲向け、菓子・土産物用についても本格的な荷動き回復が見込みにくく、引き続き厳しい状況が予想される。さらに「第3波」が継続して飲食店での営業時間短縮、人数制限、イベント開催の制限・縮小等が長引けば、需要の回復も遅れる恐れがある。

こうしたことから、依然として需要は全体的に厳しく、内食・中食需要の動向に左右される不透明な状況が続くと想定される。

また、当協会のアンケートにおいても、テーブルエッグ向けを「増やす」が30%と一定割合みられている。今後、堅調な家計消費を受けて弁当・総菜、家庭用卵加工品など中食ニーズにも対応した商品の販売が拡大すれば、需要全体が緩やかに回復することも考えられる。

《輸出》協会アンケートによれば、2021(令和3)年における輸出に関する意向は、「増やす」が22%、「現状維持」が77%、「減らす」が2%となっており、特に10万羽以上でみると「増やす」が27%、「現状維持」が73%、「減らす」が0%と、「増やす」意向がやや高くなっている。

実際に2020(令和2)年は、主な輸出先の香港、シンガポールなどでも新型コロナの影響で内食化が進み、他の輸入先国(マレーシア、タイ)のロックダウン等も契機に高品質な日本産鶏卵への需要が高まったことで、輸出量は前年比約2倍と大きく伸びた。2021(令和3)年1月も前年同月比約2.5倍の増加となっている。

今後、輸出量の伸び幅は緩やかになる可能性はあるが、当面、日本産鶏卵に対する需要は継続的・安定的に推移することが期待される。

②供給

《国内生産》協会アンケートによれば、2021(令和3)年における飼養羽数の増減予定に関する意向は「現状維持」が85%、「増やす」が5%、「減らす」が10%。飼養規模別にみると、10万羽未満では「現状維持」が86%、「増やす」が2%、「減らす」が12%となったのに対し、10万羽以上では「現状維持」が84%、「増やす」が10%、「減らす」が6%で、「増やす」意向の割合が若干多くなっている。

一方、2020(令和2)年11月5日に、国内では2018(平成30)年以来となる高病原性鳥インフルエンザの発生が家きん農場で確認され、以降も西日本各地と関東の一部県で相次いでいる。これまでのところ約900万羽以上の採卵鶏が殺処分となり、全国の飼養羽数約1億8237万羽(平成31年2月1日現在)に占める比率は約5%となっている。

こうした中、国内需給や価格については新型コロナの影響で業務・加工用需要が減少している一方で、鳥インフルエンザ発生による殺処分数の増加による供給減が影響し、価格は上昇傾向で推移している。

現時点では、全国的に欠品が生じる状況にはないものの、安定供給に万全を期すよう関係者間での需給状況の共有等を行なうとともに、必要に応じて①成鶏の共用期間を可能な範囲で延長し成鶏羽数を確保する②加工用の凍結卵や粉卵を業務用に活用することで業務用殻付卵を家計消費用に振り向ける――などの対応を検討することも必要である。

長期的な見通し

①需要

わが国の人口は、1億2616万7000人(総務省「人口推計」=2019〈令和元〉年10月1日現在)であるが、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(2017〈平成29〉年)によれば、2030(令和12)年には2019(令和元)年よりも約5.3%減少する見込みとなっており、このトレンドを踏まえ試算すると1億1949万8000人となる見込みである。

また、わが国の1人当たりの鶏卵消費量は、すでに年間338個と世界第2位の高水準であり、将来的に大幅に増加することは期待しがたいものの、近年のトレンドを踏まえると2030年の1人当たり鶏卵消費量は22.1キロと微増する見込みである。

この結果、2030(令和12)年の全体の需要量は約268万トンとなり、2019(令和元)年より約7.4万トン(約2.7%)減少する見込みである。

②供給

生産量は近年の旺盛な需要、堅調な卵価を背景に、生産者の増産意欲が高まったことから増加傾向で推移している。近年のトレンドを踏まえると2030(令和12)年の供給量は約282万トンとなり、2019(令和元)年より約6.1万トン(約2.2%)増加する見込みである。この結果、2019(令和元)年の需給状況を基準とした場合、2030(令和12)年の供給量は需要量を約13.5万トン上回る見込みとなっている。