鶏肉需給は当面弱含み

食鳥協理事会

アフターコロナの準備も

(一社)日本食鳥協会(佐藤実会長)は6月4日、令和3年度の第1回理事会をオンライン形式で開いた。
佐藤会長は「家庭消費に支えられ、鶏肉市況はしばらく好調が続いたが、ここにきて明らかに荷余り感が出ていきた。新型コロナのワクチン接種が進む欧米では全体の消費が戻りつつあり、ヨーロッパの豚肉、米国・豪州の牛肉、タイの鶏肉は強含みで、さらに値上がりするという情報もある。国内の鶏肉市況は当面、弱含みが続くと思うが、日本でもタイムラグがあって欧米と同様の動きが起こることも予想される。コロナが収束した暁には、大量消費が期待できるという明るい見通しに備えておく必要もあるだろう」とあいさつした。
理事会では、令和3年度事業計画・予算や、第61回定時総会に上程する議案などを了承した。
最近の鶏肉の需給動向について、各部会から次のように報告された。
▽生産加工部会=暖かくなり、各社の生産成績は改善されてきたが、まだ全国的に大腸菌症が出ており、腹水症も従来より多い。ひなが寒さに弱くなってきたという話や、オスの体型が少し変わってきたのではないかという意見もある。
販売状況は思わしくなく、もも肉の売れ行きが弱い。年末用の骨付きももを取り始めたインテも出てきた。居酒屋などの休業により内臓系の動きは依然として悪い。むね肉、ささみ、手羽は何とか売り切っている。
コロナが発生して処理場を一時休業したインテから説明があったほか、ワクチン接種が進んだ場合の処理場での対応について情報交換した。また、技能実習生の入国に関して食鳥協会から国への働きかけを期待する意見もあった。秋以降に野菜などの肥料が大幅に値上がりする予定で、鶏糞灰の需要が少しずつ高まることを期待したい。
▽荷受部会=昨年の販売量を100とすると、今年は95~97くらい。一昨年対比では105だが、昨年のような爆発的なことはない。むね肉は売れている。タイ産鶏肉のオファーがEUの需要回復やコンテナ不足などにより高騰し、加工仕向けは国産むね肉が強い。
もも肉の売れ行きは昨年と比べると悪く、少しずつ凍結に回るケースが出てきた。今年の年末・クリスマス需要を見込んだ備蓄も始まっているが、相場が高くて凍結しにくい環境。量販店が特売を仕掛けても、牛肉や豚肉の売れ行きも悪く、もも肉相場が高値で張り付いているため、特売価格が98円レベルでは、消費者には響かない。
副産物の中で手羽先、ささみは何とか売れている気配だが、内臓肉の砂肝は若干余り気味で、手羽元、レバーは売れていない。皮、テール、軟骨も外食・居酒屋が休業しているため、さばき先がない。
銘柄鶏は不調で、需要がブロイラーにシフトしている。新しい生活様式に対応した家庭需要が増え、味付けされた半製品が少しずつ売れているが、全体的に昨年のような元気はない。
▽小売部会=業務卸は一番の打撃を受けており、居酒屋、焼き鳥、ホテル関係は特に厳しい。酒類の提供禁止や、緊急事態宣言の発令で取引先も休業し、さらに厳しくなっている。6月20日以降も再延長になると「経営がどうなるか分からない」という悲痛な声も聞かれる。少しでも補うために路面でのテイクアウトのから揚げ店や、他業種とのコラボによる通販に力を入れているところもある。物が動かないため、特にレバーや砂肝、手羽元、最近ではもも肉の在庫が増えている。
小売りは全般的にスーパーと同じような動きで、生肉は昨年の反動減もあり、特にゴールデンウイーク明けから動きが鈍っている。バーベキューや家飲み需要により半製品や、生の焼き鳥串などが好評で、外食がない分、希少部位や地鶏などの串も売れている。昨年は買い物頻度の減少から売り上げを落とした加工品は、調理疲れなどと合わせて現在は好調。今後は気温上昇に伴い、半製品や加工品の強化が必要だと言われている。
ワクチン接種が50%以上進んだ国では、外食やレジャーなどの動きが回復しているため、日本でもその時の対応を考える必要があるのではないかという話や、その動きが落ち着いた時点で顧客が戻る業種と、十分に戻らない業種があるため、今から対応できるように準備していくことも必要との意見も出された。
▽種鶏ふ卵部会=6月のひなえ付けは少ないという印象を受けている。働き方改革の中で8月のお盆休みが例年と異なることや、早い段階での夏場対策が影響したのではないかと分析している。現在オーダーを受けている7月のひなえ付けは、その反動から増えている印象。日本種鶏孵卵協会では前年比101・5%のひなえ付けを見込んでいるが、6月と7月のギャップは大きいものの、6~7月平均では前年比101・8%前後とみている。
今年は前年に比べて1か月早く、7月後半から全国的に種卵が不足傾向になると予想しているが、各社が対策を立てているため、市場が混乱することはない。現在は種鶏1羽当たりの獲得種卵数でカバーしているため、夏場に種鶏が熱死するとダメージが大きいことを理解してほしい。
鶏病関係では、IB(伝染性気管支炎)ワクチンの変更要請や、IBD(伝染性ファブリキウス嚢病)ワクチンの接種要望が全国的にかなり増えている。3~4週齢のコマーシャルひなで大腸菌症が非常に多いため、ワクチンの変更要望や接種要望が増えているのではないか。今のチャンキーは種鶏、コマーシャルを問わず温度差に弱いとみている。
木材と鉄鋼の価格が計画段階より1・5~2倍に高騰し、新しい鶏舎や設備関係の建設を遅らせるという話が出ていることも、ひな需給のポイントになる。