白玉鶏、赤玉鶏の経済特性などを報告 群馬県が成果発表会
群馬県畜産試験場が実施する採卵鶏の鶏種比較試験
群馬県は2月6日、前橋市の群馬県庁などで平成30年度農林水産業関係機関成果発表会を開き、畜産分科会では、群馬県畜産試験場養鶏係の後藤美津夫係長と櫛渕隆之独立研究員が「採卵鶏の鶏種別能力比較試験」の結果を発表した。
同試験場では11鶏種を対象に実施した平成29年度「採卵鶏の鶏種別能力比較試験」を73~90週齢(30年8月下旬~12月下旬)まで延長。
生産性については育成期の飼料摂取量・育成率・体重、成鶏体重、50%産卵到達日、ヘンデイ産卵率、平均卵重、飼料摂取量、飼料要求率、生存率。
鶏卵品質については卵形指数、卵殻厚、卵殻強度、ハウユニット、卵黄色(カラーファン)、卵黄・卵白のBrix(赤玉鶏種のみ肉斑の出現率、卵殻色を追加)。
経済性については鶏卵販売代金からひな代と育成を含めた飼料費を差し引いた差益(農林規格による重量取引、定重量パックによる個数取引)、鶏卵1キロ当たりの飼料費が最も低くなる週齢、LL-MS規格卵1個当たりの飼料費が最も低くなる週齢――などについて調査した。
白玉鶏種の結果
櫛渕研究員は、白玉鶏のジュリア、ジュリアライト、ハイラインマリア、バブコックB400、ジュピター、ノボホワイトの成績の比較について報告。
90週齢までの生産性については、①成鶏体重は50週齢以降、4鶏種が1800グラム以上、2鶏種が1800グラム未満で推移したが、鶏種ごとの指標値に準じていた②体重の変動係数は全期間を通して平均10%未満で良好だったが、夏期に当たる70週齢(30年8月)は暑熱の影響により値が大きくなった③ヘンデイ産卵率やヘンハウス産卵個数から、ほとんどの鶏種が高い産卵持続性を示した④平均卵重が大きく、飼料要求率が良いジュリアとジュリアライトは重量取引に有利。平均卵重が小さく、産卵個数が多いバブコックB400とジュピターは個数取引に有利な鶏種と考えられた――とした。
鶏卵品質については、①卵形指数が高いと卵は丸く、低いと細長くなる。鶏種にかかわらず加齢に伴い低下して70週齢以降は横ばい、または微増となった②卵殻厚は加齢に伴う変動が少ない。卵殻強度は加齢に伴い低下したが、問題のない範囲の強度が保たれていた③ハウユニットは加齢に伴い低下するが、多くの鶏種が90週齢時でも80以上を示した④卵黄色はおおむね11~12の範囲で、鶏種や週齢により若干変動した⑤卵黄Brixは加齢に伴いわずかに低下するが、90週齢には30週齢と同等の値に回復。卵白Brixは加齢に伴い低下し、60週齢以降はおおむね横ばいで推移した――とした。
経済性については、①重量取引による差益は日産卵量と鶏卵販売代金が多い鶏種が高かった②個数取引による差益は産卵個数が多く、飼料費の低い鶏種が高かった③鶏卵1キロ当たりの飼料費は飼料要求率の推移と同様で、ジュリアとジュリアライトが低かった。この2鶏種は累計値が最も低くなった時点の値(ピーク値)も低く、その時点の週齢(ピーク週齢)も90週齢に近い83、85週齢であった④LL-MS規格卵1個当たりの飼料費は産卵個数の多いジュピターと、飼料摂取量の少ないバブコックB400が低かった――とした。
これらの結果について櫛渕研究員は「ハイラインマリアはピークが早いため、換羽誘導が前提の鶏種になるが、その他の鶏種は長期飼育に適応できると考えられる。ヘンハウス産卵個数が450個以上の鶏種は、100週齢時に500個以上に到達することが期待できる。昨年の猛暑時でも高品質の鶏卵を生産する白玉鶏の存在が確認できた。長期飼育では、ジュピターとバブコックB400は個数取引に有利。ジュリアとジュリアライトは重量取引に有利だが、飼料の質的制限や卵重コントロール、飼料コストの低減を図れば、個数取引でも有利な鶏種になる」などと述べた。
赤玉鶏種の結果
後藤係長はピンク卵鶏のハイラインソニア、赤玉鶏のボリスブラウン、マース、ノボブラウン、もみじの成績の比較について報告。
90週齢までの生産性については、①成鶏体重は40週齢以降、平均2100グラム以上で推移。夏期の70週齢に若干減ったが、加齢に伴い増加した③体重の変動係数は全期間を通して平均10%未満で良好だったが、夏期の70週齢は暑熱の影響で値が大きくなった④ヘンデイ産卵率、ヘンハウス産卵個数、飼料要求率は白玉鶏より低く、昨年の猛暑の影響が白玉鶏に比べて大きいことが示唆された⑤平均卵重は、赤玉鶏では飼料摂取量の多いマースが最も重く、もみじが最も軽い。ピンク卵鶏のハイラインソニアはさらに軽かった――とした。
鶏卵品質については、①卵形指数は鶏種にかかわらず加齢に伴い低下し、70週齢以降は横ばい、または微増した。白玉鶏に比べて丸みを帯びた卵が多い②卵殻厚は加齢に伴う変動が少ない。卵殻強度は加齢に伴い低下したが、問題のない範囲の強度が保たれていた③ハウユニットは加齢に伴い低下したが、白玉鶏に比べて若干低い値(80未満)がみられた④卵黄色はおおむね12前後で、鶏種や週齢により若干変動した⑤卵黄Brixは加齢に伴いわずかに低下したが、90週齢には30週齢と同等の値に回復。卵白Brixは加齢に伴い低下し、60週齢以降はおおむね横ばい。白玉鶏より高い値で推移した⑥3ミリメートル以上の肉斑の出現率は加齢に伴い増加した⑦卵殻色は加齢に伴いL値(明るさ)は高く、a値(赤色)とb値(黄色)は低くなったが、変化の程度は鶏種により異なった――とした。
経済性については、①重量取引による差益は長期飼育の生産性で鶏種ごとに一長一短があり、おおむね同等で17万円前後②個数取引による差益も重量取引と同様の理由で、おおむね同等。ピンク卵鶏のハイラインソニアは飼料要求率が良くて20万円を超えたが、他の赤玉鶏は18万円前後となった③鶏卵1キロ当たりの飼料費は飼料要求率の推移と同様で、ボリスブラウンとノボブラウンが低い。70~75週齢が最も効率的であった④LL-MS規格卵1個当たりの飼料費も飼料要求率の低いボリスブラウン、ノボブラウンが低い。70週齢くらいが最も効率的であった――とした。
これらの結果について後藤係長は「赤玉鶏は暑熱への適応力が比較的低いことが分かったが、昨年の猛暑時でも、高品質の鶏卵を生産する赤玉鶏の存在も確認できた。赤玉鶏は白玉鶏に比べ、長期飼育の経済性で若干劣ることが明らかとなった。育種改良の進展に期待したい。国産鶏種もみじの生産性は外国鶏とそん色なく、鶏卵品質も良好であった。差別化などで有利販売ができれば、経済的にも優位になる可能性がある」などと述べた。