共立製薬が鳥インフルエンザでセミナー

国内農場での鳥インフルエンザ(AI)の続発を受け、共立製薬㈱(髙居隆章社長―本社・東京都千代田区)は12月25日、ウェブ会議システムを使った『鳥インフルエンザセミナー2020』を開き、約350人が聴講した。

講師は同社営業企画本部の吉川透テクニカルアドバイザーで、自身が以前、鶏肉企業に勤めていた際にAI被害を経験した立場から、いま求められる防疫対策と農場管理について話した。

同氏は、AIにかかった個体を見つけるのは非常に難しいとした上で「死亡鶏が突然増えた時の『鶏舎内の異様な雰囲気』を管理者が感じ取り、通報に繋がっている事例が多い。AI発生後に、トサカ周辺のチアノーゼ状の黒ずみなどに気づくこともある。日々、管理者が死亡鶏の解剖を実施し、管理獣医師らと連絡を取り合って異常を早期発見することも重要」と呼びかけた。

また、今シーズンは香川県での相次ぐ発生に続いて西日本各県や千葉県で発生しているが、広がり方に一定の規則性がみられないことから「香川から広がったのではなく、すでにウイルスが各地に浸潤していたと思われる。各自が国の環境調査にもっとアンテナを広げ、敏感になる必要がある。今期は遅かれ早かれ、どこかで出てしまう状況であったのでは」との見方を示した。さらに、香川県の3例目発生頃から近隣農場でネズミが増えたとの声が多く、行政もネズミ対策の強化を指導していたことにも触れ、防鼠の重要性を改めて指摘した。

同氏はため池や河川に飛来し、糞などを通じて鶏への感染源となり得るカモ類の飛び方についての検証結果も報告。カモ類は体重の重さに加え、飛翔時に敵から目立たないようにするため急上昇はしないとし、水場から木々・障害物のない方向や、木々のすき間を狙って飛び立つと解説。鶏舎周辺や、上空を通過しにくい環境づくりも防疫につながるのではと提言した。

産地には引き続き手指の消毒、鶏舎出入口での長靴の交換、壁や天井のすき間を埋めるなど基本的な飼養衛生管理基準の順守を呼びかけ、万一の発生時に備えては①入場者(車)を含む農場の管理状況を正確かつ詳細に記録しておく②発生後の鶏や鶏糞、種卵などの埋却予定地が実際に使用できるか確認する(近くに鶏舎や水脈があると埋却できない場合も多い)――ことが求められるとし、「適切で迅速な対応が感染拡大の防止になる。ただ発生農場の管理者らは2週間程度の自宅待機となり、精神的に相当ショックを受けるため、周囲が電話連絡などで心のケアをすることも欠かせない」などと述べた。