コロナ禍で農業景況DIは大幅に悪化 日本政策金融公庫
設備投資マインドは高い水準を維持
㈱日本政策金融公庫農林水産事業は、このほど融資先の担い手農業者を対象に今年1月に実施した「農業景況調査」の結果を公表した。融資先1万8060件のうち、5786件(回収率32.0%)から回答を得た。このうち採卵鶏は96件、ブロイラーは79件。
令和2年の農業全体の農業景況DIはマイナス24.9で、前年実績の6.0から30.9ポイント低下し、マイナス値に転じた。令和3年の見通しはさらに7.5ポイント低下し、マイナス幅が拡大する見込み。
採卵鶏の令和2年の農業景況DIはマイナス43.8で、前年実績から4.9ポイント低下したが、令和3年の見通しは14.7ポイント上昇し、マイナス29.1。
ブロイラーの令和2年の農業景況DIは6.4で、前年実績から8.3ポイント低下し、令和3年の見通しはさらに15.3ポイント低下してマイナス8.9。
令和2年の収支DIは、採卵鶏はマイナス40.6で、前年実績から5.4ポイント上昇。ブロイラーは8.9で、前年実績から3.5ポイント上昇。
資金繰りDIは、採卵鶏はマイナス32.3で、前年実績から3.7ポイント低下。ブロイラーは5.0で、前年実績から12.4ポイント低下したがプラス値を維持した。
販売単価DIは、採卵鶏はマイナス57.5で、前年実績から4.3ポイント低下。ブロイラーは5.1で、前年実績から33.4ポイント上昇し、プラス値に転じた。
生産コストDIは、採卵鶏はマイナス41.7で、前年実績から5.2ポイント上昇。ブロイラーはマイナス20.3で、前年実績から7.7ポイント上昇。
雇用状況DIは、採卵鶏はマイナス33.3で、前年実績から5.6ポイント上昇。ブロイラーはマイナス21.8で、前年実績から15.6ポイント上昇した。
令和3年に設備投資予定がある比率は、採卵鶏は56.8%で、前年実績から4.4ポイント上昇。ブロイラーは49.4%で、前年実績から9.3ポイント低下した。設備投資額については前年より「増加する」が48.8%、「前年と同程度」と合わせると82.8%となり、積極的な姿勢がうかがえる。
今後の経営方針については「生産性向上に向けた設備増強」が56.1%で最も高く、次いで「生産規模の拡大」の48.2%、「新技術・新品種の導入」の47.0%。最優先する経営方針として選択した回答は「生産規模の拡大」が36.7%で最も多かった。
今後の経営方針について「生産規模の拡大」と回答した先に、その阻害要因を聞いたところ「農地・農場の確保」が58.9%で最も高く、次いで「設備・機械の調達」の52.3%、「労働力の確保」の50.6%。畜産では、養豚、酪農(都府県)、採卵鶏、ブロイラーは「労働力の確保」、肉用牛は「資金調達」、酪農(北海道)は「設備・機械の調達」が最も高かった。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、売上高にマイナスの影響があると回答したのは64.6%。採卵鶏では「マイナスの影響がある」が71.3%、「ほぼ影響がない」が22.3%、「プラスの影響がでている」が6.4%。ブロイラーでは「マイナスの影響がある」が27.8%、「ほぼ影響がない」が55.7%、「プラスの影響がでている」が16.5%であった。
新型コロナウイルス対策として活用した支援策は、畜産では肉用牛を除くすべての業種で「特に活用していない」が最も高かった。
新型コロナウイルス感染症の拡大により、取引量が増えた販売先について「特に変化はなかった」が72.7%で最も高かった。畜産では採卵鶏を除くすべての業種で「特に変化はなかった」が最も高く、採卵鶏では「小売業者(スーパーなど)」の41.8%が最も多かった。
コロナ禍でのインターネット販売の取り組みについては、関心がないとの回答が最も高かった。すでにインターネット販売に取り組んでいる、またはこれから始めたいとする回答は果樹の65.4%が最も高く、次いで施設花きの56.3%、採卵鶏の53.3%となった。