2013年の養鶏産業の課題 『国産の優位性』で差別化を
鶏卵・鶏肉ともに需給失調でかつてない相場低迷に苦しんだ昨年、国内生産と輸入品とのバランスをどのように調整していくか、大きな課題を残した。
生食文化を誇るわが国の鶏卵は、消費の半分を占める家庭用や、レストランなどの飲食店・給食向けの業務用とも、鮮度、安全性の面から国産に対する信頼が圧倒的に高く、多少の価格変動があっても、海外産に変わる懸念はほとんどないといえる。
問題は、消費の約20%を占める加工用への対応だ。国内の卵価が高くなると、加工原料卵や液卵、粉卵の輸入が増え、その結果、需給が乱れ、卵価を引き下げる。ユーザーである製菓・製パンや食品メーカーは、国産卵を使った液卵の品質の高さは十分に理解し、価格さえ安定しておれば、国産卵を使いたい思っていながら、ほとんどが定価製品のため、原料価格に敏感にならざるを得ず、国産から輸入への切り替えスピードは速くなる。相場その他の策で、緊急に加工向け原料卵を輸入卵に対抗できる価格にすることだ。液卵や粉卵の輸入が増加すると、仕事を失う割卵メーカーと生産者の利害も一致しており、全生産量の約10%ほどとみられる格外卵を含む加工向け原料卵への対応は、業界全体で知恵を出し合うことが重要だ。
家庭用の割合が消費量の約38%を占める鶏肉は、一昨年の鳥インフルエンザや東日本大震災の影響から、ブラジル産がスーパーの店頭にも並び、家庭用にも輸入物が定着するのではないかと一時心配されたが、消費者は安全・安心でおいしく、高品質な国産鶏肉を基本的に「支持している」との声が強い。消費者目線に立ち、利用しやすい商品づくりで差別化を図れば、輸入物には十分対抗できる。
ただ、国内消費の約56%を占める業務・外食向けは、大手外食チェーンやコンビニの多くが、輸入した鶏肉調製品(チキンナゲットや唐揚げなど)で、大量流通による価格の安定も求めているため、国産は安全・安心、高品質だけでなく、鶏舎設備、舎内の温度や飼料、水、点灯などの管理までを含めてさらに見直し、一層のコストダウンを図る必要がある。
「安全・安心は当たり前」だが、サルモネラやカンピロバクターなどによる食中毒が発生すると、鶏卵や鶏肉の消費はたちまち落ち込む。農場HACCPに取り組む事例も増えているが、生産から流通までの一貫した安全のための基準の確立が急務だ。スーパーや外食の自主基準を上回る業界として統一した『安全基準』に基づいて国産の鶏卵、鶏肉が生産・流通されている事実をきちんと消費者に示せば、国産の価値と魅力が一層高まり、家庭用だけでなく、輸入の業務、加工用との差別化がより可能になる。
さらには、高止まりしている配合飼料価格の引き下げと安定化にも取り組まなければならない。特に政権の交代によって戸別所得補償政策が見直される可能性がある中で、せっかく定着化しつつある飼料用米の活用を後退させてはならない。
また、わが国のコスト高の要因とされる鶏舎の建築基準法の改正や、養鶏諸資材価格の引き下げにつながる規制緩和などにも積極果敢に取り組むべきだ。