ローマン社が京都で販売代理店会議 最新遺伝情報など説明

白玉鶏のジュリア、ジュリアライトの育種会社であるドイツのローマン・ティアルツクト社(ローマン社)の第54回販売代理店会議が9月26日から28日まで、京都市東山区のウェスティン都ホテル京都で開かれ、世界各国から約150人の関係者が参加した。
初日のウエルカムパーティーであいさつしたローマン社のルドルフ・プライジンガー社長は、来賓の門川大作京都市長、(一社)日本卵業協会の馬場昭人会長、(一社)日本養鶏協会の齋藤利明会長、㈱ナベルの南部邦男社長を紹介し、会議の開催準備に尽力した関係者に謝意を表したうえで「私はこの会議で良いプレゼンテーションと、すばらしい議論が行なわれることを信じている。ただ1つリスクがあるとすれば、プレゼンテーションよりも美しい寺社仏閣を見たいという人がいることだが、心配はいらない。皆さんにはすばらしい文化プログラムも用意しているため、明日の私のプレゼンテーションを聞き逃さないでほしい」と述べた。
祝辞を述べた門川市長は「〝卵〟と〝かしわ〟のすばらしい食文化の基礎を作っていただいている皆さん、ようこそ京都へ。京都の大きな誇りである和食には、卵とかしわがたくさん使われており、私の好物は卵焼きとチキンである。京都は伝統産業とイノベーションの町で、ナベルのような会社も生まれるし、トランプを作っていた会社が任天堂になった。すばらしい研修の場であることを祈念すると同時に、京都の文化を楽しんでいただきたい」と歓迎。
馬場会長は「日本で1979年に販売された白玉鶏のジュリアは当初、ピーク産卵率は高いものの、産卵の持続に課題があると言われたが、ローマン社の高い育種改良技術によって成績は年々改善され、ここ数十年は圧倒的なトップシェアを獲得している」と紹介し、齋藤会長は「ローマン社はわが国の養鶏産業の発展に大いに貢献されたすばらしい企業であり、日本養鶏協会の会員の相当数がローマン社の恩恵を受けている」と述べた。
来賓と各国の販売代理店の関係者による鏡開きで乾杯し、なごやかに歓談。中締めではナベルの南部社長が「京都の町は1200年前に、中国の西安(長安)をモデルに私たちの祖先が作った。完成した時から城壁がなく、その後1100年間は日本の首都であった。皆さん京都に来ていただき、ありがとうございます」とあいさつし、一本締めを行なった。
2日目のセミナーではローマン社のハビエル・ラミレス社長のウエルカムスピーチの後、㈱ゲン・コーポレーションの渡邉周治社長が日本の種鶏市場、日本レイヤー㈱の橋本亘社長が日本の鶏卵市場の概要を紹介。
渡邉社長は、2015年の日本の種鶏の鶏種別シェアについて紹介し、「各鶏種を普及するうえで最も重要なことは、いかに市場のニーズを把握して育種に反映していくかである。このため、わが社では生産者や孵化場はもとより、飼料メーカーや流通業者を含めた養鶏業界全体から、各鶏種の評価や育種に対する要望をとりまとめて育種会社に報告している。同時にペディグリーテスト、コマーシャルバラエティーテスト、フィールドテストなどを積極的に実施して、我々自身も市場の評価、他鶏種との比較、育種改良の進捗状況を確認し、育種会社と情報を共有している。
我々が扱う商品は生き物であり、あらゆる飼育条件や環境下でも最高の結果が求められる。そのためのサポートとして生産者向けのテクニカルスクール、孵化場向けのミーティング、孵化場の経営者を対象とした会議を開催し、さらにお客様別のサポートを通じて育種改良の進捗や国内外の有益な技術、優良事例などの情報を提供している」などと説明した。
橋本社長は、日本の鶏卵市場では白玉60%、赤玉30%、ピンク卵10%の割合を維持していることや、生産者が寡占化していること、1人当たりの消費量が世界で3番目に多いこと、生産された卵の50%が家庭用、30%が業務用、20%が加工用で消費されていることなどを紹介し、「生産量は1990年代半ばまで増え、その後は横ばいで約250万トンとなっている。え付け羽数が年々減少しているのに生産量が増えている理由は、1羽当たりの産卵個数が増えたことや、飼育期間が長くなったことが挙げられる。
1960年代の卵の値段は現在とあまり変わっていないが、生産量は少なく、日本人の平均賃金も低かったため、都市部に住む人にとって卵は特別な食べ物だった。生卵をお酒に混ぜた卵酒は、風邪を引いたときに薬の代わりに飲まれていた。卵油は卵をフライパンであぶり、最終的に残った黒い液体で、これをカプセルに詰めたものが販売されている。卵酒や卵油は今日の〝エナジードリンク〟と同じ役割を果たしていた。その後、平均賃金が上がり、卵の値段は安定していたため、卵は日常の食品となり、朝食、昼食、夕食にも食べられるようになった。
日本には卵を使ったメニューが豊富にある。300年前に出版された料理本には、すでに100種類の卵の調理方法が紹介されていた。日本は仏教の影響で長い間肉食を避けてきたが、その代わりにたんぱく源として大豆や卵が食べられてきたのではないか。
日本では、少子高齢化によって卵の消費が増える可能性があまり大きくないことや、労働力の確保の問題があり、鶏糞や悪臭などの環境問題もある。鳥インフルエンザは我々にとって大きな脅威となっている。しかし、どの時代でも何らかの問題はあったわけで、先人たちはそれらに対処して乗り越え、生き残ってきた。このような会議は非常に良い機会だと思う。皆さんと新しいネットワークを作り、新しいアイデアを皆さんから得て日常の問題を解決できると信じている」と述べた。
ローマン社のプライジンガー社長が遺伝学・最新遺伝情報、IEC(国際鶏卵委員会)のジュリアン・マデリー局長が国際的鶏卵事業とローマン社との共同事業、ラミレス社長がローマン社の事業について説明した。
文化プログラムでは二条城、金閣寺、清水寺を観光し、鶴清の鴨川納涼床で夕食を楽しんだ。
3日目のワークショップでは経済的事例、技術的事例に分かれて討議。経済的事例ではトルコの販売代理店から世界で一番難しい市場で成功に導く方法、オランダの販売代理店からデータの収集と活用、技術的事例ではデンマークの販売代理店からアニマルウェルフェア、コロンビアの販売代理店からウェビナー(オンラインセミナー)による情報提供などの取り組みが紹介され、最後に全体的な課題について意見交換した。
文化プログラムでは、雨天で保津川下りが中止となったため、東映太秦映画村ツアーと、京都御所、祇園ツアーに分かれて最終日の京都観光を楽しみ、ホテルでのガラディナーで全日程を終了した。

【ウエルカムパーティーでは関係者による鏡開きで乾杯】

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