十文字チキンカンパニーの鶏ふんバイオマス発電所が竣工 最大発電規模6250kW
㈱十文字チキンカンパニー(十文字保雄社長―本社・岩手県二戸市石切所字火行塚25)は9月28日、軽米町晴山に建設していた鶏ふんバイオマス発電所が完成したことから、現地で落成式を行なうとともに、二戸市福岡の二戸パークホテルで竣工祝賀会を開いた。
完成した鶏ふんバイオマス発電所は、敷地1万7773平方メートルに、鉄骨造4階建てで延床面積6700平方メートル。約65億円で建設したもので、国内の鶏ふん発電所としては5番目、本州では初めてで、規模も国内最大とのこと。
グループの飼育農場などから集めた鶏ふん(1日約400トン、年間約12万6000トン)を燃焼させた熱で生じた蒸気でタービンを回して発電する。発電規模は2系列で1時間当たり約6250kW、売(送)電量は同約4800kW、稼働日数315日。年間売(送)電量約3630万kWh(約1万世帯分)を、パルシステム生活協同組合連合会の子会社、㈱パルシステム電力に売電する。
また、1日40トン出る燃焼灰は、リン酸やカリの成分を多く含み、肥料メーカーに販売される。
竣工祝賀会であいさつした十文字社長は、発電所建設の経緯を説明するとともに、「地元の皆様が誇れるような、開かれた発電所として、しっかり運営していくことをお誓い申し上げる」などと述べた(要旨別掲)。
来賓の鈴木俊一衆院議員(代理・秘書)、八重樫一洋岩手県県北広域振興局局長、山本賢一軽米町長、原秀一パルシステム生活協同組合連合会専務理事がそれぞれ祝辞を述べ、「地域経済の活性化」や「環境保全と低炭素エネルギーの実現」、「鶏ふん処理と飼料用米によるブロイラー生産の循環モデルの確立」、「安定した電力供給」への貢献に期待を寄せた。
工事を請け負った倉敷紡績㈱の藤田晴哉社長、㈱タカヤの望月郁夫社長、㈱ユアテック岩手支社の乳井隆明支社長に感謝状が贈呈され、3氏からも記念品贈呈とあいさつがあり、全農チキンフーズ㈱の工藤裕治常務の発声で乾杯し、歓談した。
この間、十文字健助会長と夫人の鈴江元監査役なども登壇して、鶏ふんバイオマス発電所完成のお礼を述べ、農林中央金庫仙台支店の榎本浩巳支店長の中締めで閉会した。
十文字社長あいさつ要旨
当社のチキン飼育農場は、岩手県北を中心に約160か所に点在し、これまで鶏ふんは発酵や炭化処理をし、東日本全域に主に農業用資材として利用されてきたが、業界全体では有機肥料は供給過多の様相を呈していた。
チキンの最大産地である鹿児島、宮崎では、十数年前から鶏ふん発電が開始され、もくろみ通りの実績を上げ、一定の解決法になっている状況を、健助会長自らが率先して現地視察を重ね、ずっとタイミングを見計らっていた。
そこに5年前の東日本大震災により、新エネルギーへの需要が高まり、FIT法(再生可能エネルギー固定価格買取制度)の成立により、売電の買取価格が底上げされ、鶏ふんをエネルギーに変えるという長年の夢が現実味を帯びてきた。
当初は、発電所の建設は外部に任せ、原料の供給のみ自社で行なうとの案もあったが、創業者の一貫生産の思想の延長線上において自社で経営を行なうべしと、直接投資を決断させていただいた。
ど素人集団の発注者にもかかわらず、プラントメーカーの倉敷紡績さん、建物工事のタカヤさん、電気工事のユアテックさんには全力でこの仕事に取り組んでいただき、ほぼ予定通りのスケジュールで完成にこぎつけていただいた。心より感謝申し上げる。また、農林中央金庫を幹事とする5行の銀行団や、日本政策金融公庫には、資金面で大きな支えになっていただき感謝している。
発電は当社にとって未知なる世界であるが、チキンの生産は粘り強い仕事をしていただける地元の人材あっての仕事であり、気候変動をはじめとするトラブルを何とか吸収して、定時定量の生産を実現するという意味では、発電も同じといえる。
バイオマス発電のスタッフ(約20人)のほとんどは、これまで鶏ふんを発酵または炭化する工場のスタッフで、5S(整理・整頓・清掃・清潔・躾)の実践度は社内でも一番高いレベルのため、安心して任せられ、非常に高いモチベーションで、いま試運転を行なっている。
現在の予定では、11月1日から売電開始となる。電力の供給は、弊社のチキンを買っていただいている首都圏のパルシステム生協の子会社、パルシステム電力さんで、資源循環を非常に高く評価していただき、それは売電価格にも表れているかと思う。
地元の皆様が誇れるような、開かれた発電所として、しっかり運営していくことをお誓い申し上げる。
【完成した鶏ふんバイオマス発電所㊤。あいさつする十文字社長㊦】