個人会員増加へ会費減額と定款変更 日本養鶏協会が臨時総会

(一社)日本養鶏協会(栗木鋭三会長)は1月19日、東京都港区のホテルアジュール竹芝で臨時総会を開き、会費の負担を軽減し、個人会員を増やす組織改革案の基となる平成28年度会費の改定や、定款の一部変更議案を原案通り承認した。
冒頭あいさつした栗木会長は、昨年6月17日の総会で会長に就任した思いについて「TPPの進捗状況が気になる中で、我々の業界は必ずしも一丸となって波乱の時代を突き進んでいくという体制にはなっていないため、何とか業界の全員が大同団結して日本養鶏協会に参加し、業界をより良くしていくことが一番の課題だろうと思いながらお引き受けした。新しい理事さんも大勢選出されて7か月くらいになるが、私なりに精一杯努めさせていただいていると考えている」とした。
その上で「10月初めにアトランタでTPPの大筋合意がなされた。我々もTPP交渉会合に他の畜産団体とともに参加して鶏卵生産業界のことをお願いしてきたが、同じ畜産でも肉牛、乳牛、豚の3団体の活動と比べると、やはりその弱さを痛感せざるを得なかった。
そのような中で、何人かの自民党の先生方には大変お世話になり、鶏卵生産業界の意見をずいぶん聞いてもらった。大筋合意後の意見聴取の際も『卵の方はどんな意見があるか』『今回のTPP締結で影響はどうか』ということも本当に熱心に聞いていただいた。
ただ、政府のTPP経済評価では、卵は『影響は軽微』との評価をされている。私は『うまくやれば軽微であるかもしれないが、何の手もなければ大変なことになる』と思っている。
いまは品目によって8%、17%、21%などの関税で守られている部分があるが、これがいずれゼロになる。そのときに加工卵は大きな影響が出てくる。現在、鶏卵は95%の自給率を誇るが、過去の歴史が証明しているように、1%、2%の需給変動によって利益が吹っ飛んでしまうような価格に下落してしまう。数パーセントの輸入増によって需給失調となれば、これは軽微どころか、大変な影響を及ぼす。
ここ2年余におよぶ好調な卵価に支えられ、我々は大変傷んでいた経営を立て直すことができた。しかし、昨年暮れから年明けにかけて、どうもそろそろ何かおかしい、大変苦しんだ以前のような状況になる可能性が大きくなってきたと思っている生産者の方もいると思う。我々役員一同は、業界が一致団結して事に当たることが一番必要だと考え、委員会を作って今日まで一生懸命検討を重ねてきた。
まずやらなければならないのは、来年度に向けた会員拡大で、皆さんが入りやすい協会にしていく。そして大勢の会員が結集することによって強い業界になり、課題である輸入卵対策となるTPP対応や、セーフティーネットとなる来年4月から始まる第3期の養鶏生産者経営安定対策事業を拡充していく必要がある。さらに生産者が自らやらなければならないコスト低減への対応についても、国の支援をお願いしなければならない。
このようないくつかの課題に向けて、組織改革となる会費や定款改正を提案させていただいている。本日の総会を成功裏に終わらせていただき、4月から新しい会員拡大に向けて皆が協力し、6月の定期総会が大勢の会員で盛大に行なわれ、我々の業界が『発展をしていけるんだ』ということになれば、『鶏卵は軽微な影響で済む』可能性が出てくると思う。本日はそのための臨時総会である」などと述べた。
農林水産省生産局畜産部畜産振興課の菊池淳志畜産技術室長があいさつし、議長に群馬県養鶏協会の都丸高志会長(日本養鶏協会筆頭副会長)を選任して各議案を審議した。
議案審議に先立って、廣川治専務理事が「日本養鶏協会の財政課題」について説明。第1号議案の平成28年度の会費は、財政課題を踏まえ、個人会員の加入を増加させるために、鶏卵生産者経営安定対策事業の事務手数料を含めて見直し、個人会費の負担額は鶏卵1キログラム当たり約4銭相当に減額させ、かつ地方活性化資金を確保する方針で各会費を決めたもの。
①個人会員で年間配合飼料契約量4000トン以上の経営者はトン19.05円(前年度23.81円)、年間配合飼料契約量4000トン未満の経営者はトン9.52円(同11.9円)
②都道府県会員(県養鶏協会)は一律1万円(同11.5~103.5万円)
③全国団体は全農208万円(同416万円)、日鶏連60万円(同119万円)、全鶏会議73万円(同146万円)、(協)日本飼料工業会45万円(同90万円)、(一社)日本種鶏孵卵協会30万円(同60万円)、日本成鶏処理流通協議会30万円(同60万円)。
第2号議案の定款の一部改正は、①鶏卵生産者経営安定対策事業の内容に『成鶏更新・空舎延長事業』を明記する②解散した(一社)日本鶏卵生産者協会を会員から除く③役員の副会長数を3名以内から5名以内に変更④鶏卵生産者経営安定対策事業の生産者積立金の増額に伴い会計監査人を置く――への変更で、これにより昨年6月の総会で副会長を5人とすることを決め、定款が改正されていなかったために『副会長扱い』となっていた2人が正式に副会長に就任する。
【組織改革への一歩を踏み出した日本養鶏協会の臨時総会】

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