食鳥相場がもも・むね合計で880円台に 年内は強基調で推移へ

飼料価格がかつてない高水準で推移する中、食鳥相場(日経・加重)は約2年間にわたって再生産が不可能な厳しい水準が続いていたが、8月以降上昇し、10月29日現在は、もも・むね合計で889円となった。AIや震災なども影響した2011年7月以来の880円台の回復だが、産地では「ようやく上がってきた」との思いが強いようだ。
相場上昇の要因は夏場の“酷暑”。ブロイラーの肥育面では出荷体重も回復してきたが、種鶏の生産性低下の後遺症からひな不足となり、影響はしばらく続くとみられる。インテ各社はジュニア雛の活用などで、当面の計画羽数は何とか揃えたと聞くが、「まだ不足している」との声も聞かれるほか、出荷体重がどこまで乗るかも懸念されている。
最近の需給については、むね肉の冷凍物が300円台半ばで取引されているほか、荷受や卸からは「もも肉が本当にない」との声も聞かれるなど、荷不足感が強い。大手量販店と取引しているインテからも、「荷不足で計画通りの数量が納められないことが続くと、来年以降の発注に影響しないか心配」との切実な声が聞かれる。
ただ、もも肉を中心とした国産鶏肉の業務向けの売れ行きは不振で、首都圏の食鳥専門店や卸からは「アベノミクスの恩恵は全くない。特に業務売りの販売減に非常に苦慮している」との声が多い。
国産むね肉は、以前は相場が270円台を超えるとブラジル物に代替されるとする声が強かったが、近年はヘルシーさや安全性の高さ、価格面での利用しやすさなどが食品メーカーに浸透し、チキンカツや蒸し鶏など“代替の効かない食材”として需要が定着してきたため、「相場が300円台に乗っても需要は減退しない」との見方も出ている。
ブラジル産などの輸入鶏肉の陳列が少しずつ増えてきた量販店もみられるが、日本食肉輸出入協会の輸入見通しは「10月は前年比7.4%減の3万2500トン、11月は26.3%減の3万4200トン」で、「ブラジルからの出し値が上昇傾向にあるため、引き続き慎重な対応から輸入数量としては減少傾向で推移する」とみている。
鶏肉調製品については、今年7月に稼働停止が報じられたタイの大手インテの工場は現在も再開していないが、輸入各社はタイ国内の他の工場や、中国製などで代替品を手当てしているため、調製品全体の輸入数量には影響しない見通し。
ただ、円安で輸入コストが上がっているため、輸入各社は調製品の販売価格の値上げを進めており、価格が高くなった分、高付加価値の年末商材の売れ行きを不安視する声も出ている。
農畜産業振興機構が10月23日に公表した鶏肉の需給予測でも、10、11月の出回り量や月末在庫は、過去5年平均は上回るものの、前年同月は下回る予想。
年末に向けた相場展開は「例年、年末になるとどこからか出てくるため、もも・むね合計で860円程度を見込むべき」との慎重な声も聞かれるが、生産サイドからは直近のひなや鶏肉需給、生産現場の状況などを踏まえて高めの予想が多く、「11月はもも620~630円、むね270円前後、12月はもも630~680円、むね270~280円」と、もも・むね合計で900円超えを予想するインテも出ている。
当面はタイトな需給が続くが、来年春以降には生産が回復し、ひっ迫感も緩和されてくると見込まれている。

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