東日本大震災 飼料供給が急務の課題 鶏卵・肉の生産減続く
東日本大震災で、混乱していたライフラインは徐々に復旧してきているものの、配合飼料や燃料の供給ストップ、停電、断水などの影響が現在も尾を引き、東北の鶏卵・肉の生産量は急減したままで、依然として厳しい状況が続いている。
ブロイラー鶏舎は比較的高台にあったため、地震による倒壊、半壊など、直接被害はつくなかったが、配合飼料工場が被害を受けて飼料がストップし、停電、断水も加わって餓死したり、生き残った鶏もやせ細った。各インテとも、処理工場のラインの損傷はただちに復旧させたものの、生鳥の入荷が少なく、4月に入ってもフル操業ができず、肉の製品サイズも小さい、などの悩みを抱えている。
採卵鶏も、地震と津波による鶏の死亡のほか、配合飼料工場の被害による飼料不足から東北一帯の2~3割が強制(自然)換羽になっているとの推測もある。その中で、「飼料米で助かった」とする生産者も多く、飼料米への期待はますます高まっている。
農林水産省では、飼料関係団体を通じて、九州や北海道からの配送(内航船運搬、トラック)を要請するとともに、備蓄穀物(最大40万トン)の無償・無担保での貸し付けを行ったが、本格的な復旧には、飼料工場の復興が急務となる。
茨城県の鹿島港には、11の飼料工場があり、全国2位の月産約33万トンの飼料を製造していた。地震と津波で関東グレーンターミナル、鹿島サイロ、昭和産業の鹿島工場サイロ、全農サイロのほか、飼料工場も被害を受けた。備蓄原料を各飼料工場に供給し、各工場も徐々に復旧して生産量を増やし、震災前の生産に戻った工場もある。本格的な復旧のために、大型船の接岸による原料供給が待たれているが、福島原発の影響も心配。
東北の飼料供給基地がある青森県の八戸港は、飼料原料を貯蔵する東北グレーンターミナルの貯蔵サイロに被害はなかったが、海外から大型船で運ばれてくる飼料原料を搬入する大型荷役機器3基が津波で破損・水没した。津波や停電で被害を受けた飼料会社6社は復旧を急ぎ、被害を受けなかったサイロで貯蔵していた原料で順次製造を再開した。特に、北日本くみあい飼料と中部飼料の回復は急ピッチ。ただ、全体の復旧には東北グレーンターミナルの大型船からの荷役作業の復旧が急務となっている。
大きな被害を受けた釜石、石巻、仙台地区の飼料工場の復旧はさらに数か月かかるとみられ、八戸を含む東北全体の飼料工場の再編と一体的に考えなければならないとの意見も出ている。