卵は決して高くない! 正しい鶏卵情報と業界の努力を説明

2008年9月のリーマンショック以降、世界的な景気後退から、消費者は節約・安値志向に向かい、鶏卵の消費も低迷した。しかし昨年末、相場が240円(東京・M加重)にようやく回復しただけで、マスコミから『高騰』と言われたことに大きな違和感を感じていた生産者は、1月24日に全国紙に掲載された意見広告『卵は決して高くない。』に共感、胸のつかえがおりたとしている。

昨年末に鶏卵相場が240円(東京・M加重)に上昇し、日本経済新聞は『5年7か月ぶりの高値』の記事や、『物価の優等生も嘆く農政』の社説を掲載した。これに対し、各地の生産者から「年末に一時的に東京・M加重相場が240円になったからといって、なぜ、記事や社説で大騒ぎして取り上げなければならないのか。鶏卵相場はこれまでがコスト割れで大変だったのだ」と、一斉に批判の声を上げた。
特に、昨年12月22日、『物価の優等生も嘆く農政』との見出しで掲載された日本経済新聞(日経紙)の社説の内容は、鶏卵の現状・実態と乖離した極めて不適切な内容で、一般消費者に誤った情報を提供するとともに、鶏卵業界への不信感をも増幅させかねないため、(般)日本鶏卵生産者協会(JEPA)と(社)日本養鶏協会は1月14日、日本経済新聞社に『新聞報道内容の適正化に係る要請』を行なうとともに、日本鶏卵生産者協会は、1月24日付の5大全国紙(朝日新聞、読売新聞、毎日新聞、日本経済新聞、産経新聞)に意見広告を掲載した。
全国紙に掲載された意見広告は、鶏卵の価格は戦後、長期にわたって安価で推移し、昨年の年平均価格187円は「決して高くない」ことを消費者に訴える内容となっている。
日経紙の社説では、鶏卵相場が5年半ぶりに高騰したのは、猛暑による影響より、成鶏を更新して60日以上の空舎期間を設けて鶏舎環境の衛生水準を良くした場合に支援金を支払う『成鶏更新緊急支援事業』の影響の方が大きく、「過剰生産の付けを消費者にまわし、生産集約を遅らせる政策はやめてほしい」とした。
さらに、鶏卵が物価の優等生であるのは、大規模化によるコスト削減に成功した農業の優等生であるからで、「野菜などの高騰対策に政府が動くのは当然だが、生産の優等生でもある鶏卵で、業界ぐるみの減産を誘導するような政策は理解できない。
すでに鶏卵は価格が一定水準を下回った場合に差額を補填する対策事業があり、それで十分だ」と断じた。
日本鶏卵生産者協会と日本養鶏協会の、日本経済新聞社に対する『新聞報道内容の適正化に係る要請』では、(1)鶏卵生産者は常に、過剰生産・供給を強いられ、再生産可能な販売価格の維持が困難な実情にあること(2)鶏卵産業は行政の支援がほとんどないことから、生き残りのため、生産者は常に過当競争を強いられていること(3)現状の鶏卵価格は、昭和20年代の価格以下のため、倒産・廃業が続き、実質的な生産者の経営維持権も、商社や飼料メーカーなどに握られ、廃業さえも困難な一種の小作に近い経営実態となっていること――などを、飼養戸数の減少や鶏卵価格の推移を示して鶏卵生産者の実情を説明。
そのうえで日経紙が年末の相場を『鶏卵の卸値が5年半ぶりの水準に高騰』と記したことについて、「価格は少なくとも単月ではなく、年単位でみるべきもの」で、昨年の年平均187円は特段に高い実態にはないとした。
『鶏卵の高値は、農林水産省が主導する市況対策の影響が大きい』『生産調整の規模は、採卵用の国内飼養羽数の2割に及ぶ』についても、通常1か月の空舎期間を1か月延長して2か月とすることは、1年の12分の1の空舎効果でしかない。成鶏更新緊急支援事業の目標規模は3000万羽であったが、実質は3分の1の1000万羽で、1/12×1/3=1/36レベルの生産抑制に過ぎず、指摘の2割の表現は間違っていると指摘。
そのうえで、「生産者団体が推測する卵価の上昇要因としては、国の事業による影響をすべて否定するものではないが、(1)例年11~12月は最も卵価高の月であり、この時期に空舎延長を希望する生産者は、特殊事情を除いて現実的にありえないこと(2)昨年夏の猛暑により、ほとんどすべての農畜産物が生産減少・品質低下を引き起こしており、生産減少問題は鶏卵だけが特殊事例ではないこと(3)昨年3月18日付で、賞味期限表示を産卵日から21日以内と厳格化したことから、年始の暴落相場が形成し難くなった――ことなどが複合的かつ相互に関係して価格が上昇傾向を示したものと理解している」としている。
日経紙の記事によって各マスコミも『鶏卵の高値報道』に一斉に同調したため、生産者だけでなく、流通業者も批判的。今年1月13日の(社)日本卵業協会と全国たまご商業協同組合の合同新年賀詞交歓会では「昨年の記録的猛暑の影響を受けた青果物(葉物類)の相場が2倍、3倍と跳ね上がったのであればともかく、Mサイズの相場がキロ240円になったからといっても、末端では1パック200円前後であり、それほど驚く価格ではないという気がしている」(飯塚信夫全国たまご商組理事長のあいさつ)と、各マスコミの「騒ぎすぎ」を批判した。
日本経済新聞社への要請や、全国紙への意見広告は、マスコミのキャンペーンを放置しておくと、それが間違ったことでも真実と受け取られかねないと心配したため。平成10年の卵のサルモネラ食中毒の際にも、業界が自主的に賞味期限を表示することを宣言する『たまごの願い』の広告を全国紙に掲載し、消費者の理解を求めたことによってマスコミキャンペーンが終息した。
今回の業界団体の行動が反映したのか、1月25日の産経新聞インターネット版が「『物価の優等生は』は健在卵値上がり一時的で、生活への影響は小幅」とする記事を掲載したように、まともな記事に戻りつつある。
対照的なのは、同じ平成10年のO157食中毒で濡れ衣を着せられたカイワレ業界。マスコミの集中砲火に対抗するだけの力がなかったために、政治、行政の救済もなく、壊滅的な打撃を受け、いまだに産業として回復していない。
養鶏業界が結束して間違った見解や、事実に反する報道に『泣き寝入りしない』との強い姿勢を示すことは、マスコミだけでなく、消費者、政治、行政にも業界の現実を認識してもらう大切な手段である。