伸ばそう国産の鶏卵・鶏肉

高病原性鳥インフルエンザの苦い教訓から、昨年は「何としても国内で再発させない」との強い決意で関係者は臨んだものの、6月末に茨城県を中心に確認された弱毒タイプ(H5N2亜型)は、41農場の約612万羽(12月25日現在)に感染した。このうち殺処分羽数は約259万羽にもなり、今も約353万羽が要監視羽数として残っている。誠に悲惨である。
安心して養鶏経営に取り組み、消費者に安全・安心な鶏卵・鶏肉を供給したい、と念願する茨城県内はもとより全国の養鶏関係者は、新たな感染の広がりへの恐怖を抱えたままの越年となった。
強毒タイプ(H5N1亜型)が世界的な広がりをみせ、人への感染や新型インフルエンザの出現が懸念されているが、一刻も早く鳥インフルエンザを終息させないと、ニワトリ産業は本当に崩壊しかねない。
感染経路の究明はもとより、六月末から現在までの長期にわたって感染が長引いた理由を真に検証し、緊急に対策を立てなければならない。
生産者は感染が確認されると倒産の危機に直面するため、検査結果が出るまで眠れぬ夜を過ごす中、検査の実務や殺処分などを担当した家畜保健衛生所の防疫員らが激務の一方で、現場段階での混乱や一部に不祥事があったことは誠に残念である。さらに、業界が未曾有の危機に直面している中で、それ以上に厳しく問われるべきは、国の防疫指針が正しく機能しているのかどうか、家きん疾病小委員会や国の防疫判断が正しかったのかどうか、である。
防疫対策の3原則である感染源と感染経路、家畜の感受性の総合的な対策が必要でありながら、「ワクチンは使わない」「ウイルス分離主義」の判断が、終息を長引かせたのでは、との指摘もある。鶏病との戦いである養鶏産業は、民間の経験や知恵を活用しながら克服してきたともいえる。このため、特に鳥インフルエンザについては、産官学一体どころか、それを乗り越えた発想の転換なくしては、解決への糸口は見出せない。
ニワトリ産業のもう一つの転機となるのは国際化と人口減である。
日・タイEPA交渉の大筋合意に象徴されるように、鶏肉や鶏卵の関税障壁がどんどん下がり、本番となる多国間のWTO交渉も控えている。
鶏肉は、鳥インフルエンザによって冷凍鶏肉の輸入は減ったが、それ以上に調製品が増加している。鶏卵も一昨年後半から昨年前半にかけての高卵価を契機に、殻付卵や粉卵の輸入が増え、調理済みおでん用の卵も今後定着化することが懸念されている。
鶏卵は国産志向に支えられて家庭消費は、まだ全体の5割をかろうじて維持しているが、鶏肉は3割強にまで落ち込んでいる。その家庭消費を支える日本の人口が減少に転じ、少子高齢化が予想を上回るスピードで進んでいることから、国産物の消費をいかにして伸ばすかが、業界にとっての大きな課題である。
消費者に安全・安心の国産の鶏卵・鶏肉を安定供給することは、ニワトリ産業に携わる者にとって当然の使命である。今こそ業界が抱える需要に見合った計画的な生産や価格形成、消費促進、適正表示、環境問題などに精力的に取り組みたいものだ。

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