ワクチンの使用 生産者の要望と食い違い 家きん疾病小委員会が防疫指針をまとめる

農林水産省7月16日、食料・農業・農村政策審議会消費・安全分科会家畜衛生部会の第8回家きん疾病小委員会を開き、高病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針(案)やワクチンの使用方針などについて協議した。
防疫指針は国、都道府県、市町村が連携して取り組むべき防疫の基本方針などを示したもので、これまでの検討結果を了承、21日の家畜衛生部会に報告した。
ワクチンの使用方針については、農水省が6月9日の第7回小委員会に「早期摘発・淘汰のみでは根絶が困難になった場合に限定して使用する」との論点メモを示し、都道府県や生産者団体などの意見を聞いていた。
都道府県では、予防的なワクチン使用を行なわないことに賛成とする意見があった一方、「朝鮮半島などの発生状況を考慮すると、予防的なワクチン使用を検討すべき」や、「免疫獲得に約3週間を要するため、制限区域内での使用は合理的でなく、区域外での予防的接種の方が合理的」とする意見などがあった。
養鶏生産者団体が、ワクチン使用を求めている理由としては(1)渡り鳥でのウイルスの持ち込みの可能性があるとすれば、わが国は極めて危険な状況にあり、ここ数年だけでもワクチン接種を認め、免疫力を高めるべき(2)ワクチンで感染、まん延リスクは相当程度低減できるはずであり、モニタリングさえきちんと行なえば、ウイルスの常在化もなく、人への感染云々はない(3)発生すれば倒産すると思っているし、風評被害は抑えきれない。今後発生させないことが重要であり、予防的なワクチン接種は不可欠(4)ワクチン接種は生産者側で実施し、モニタリングにも協力する。なぜ予防的に接種することを認めてもらえないのか理解できない(5)発生してからの接種では、密集地では間に合わず、早い段階から作業面で負担の少ない育成鶏に接種したい(6)ブロイラー農家や中小経営者は接種しないかもしれないが、大規模農場や密集地域だけでも接種しておけば発生時の混乱は少ない――などを挙げている。
養鶏関係獣医師は、現行ワクチンの不完全な点を理解しつつも、「発生時の経営面の影響を考えれると、生産者の要望は理解する」や、「現場での迅速な診断体制の整備や、より有効なワクチン開発を急ぐべき」との意見。
小委員会の委員からは「接種した方が良いか、しない方が良いかでは、しない方が良いとの考えで、生産者とはワクチンへの期待感が違う」や「生産者が不安に思うことはわかるが、基本的な衛生管理を地道にやることによって抑えていける」などの意見が出され、依然として生産者側の要望とは開きがあった。ワクチンの使用について農水省は、今後も生産者の意見などを聞いて検討を進めていくとした。

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