家畜伝染病予防対策で提言 自民党

飼養衛生基準順守、埋却地確保で

自民党は5月11日、鳥インフルエンザ等家畜防疫対策本部(本部長=江藤拓前農相)と家畜伝染病予防対策検証プロジェクトチーム、農林・食料戦略調査会、農林部会の合同会議を開き、今シーズンの鳥インフルエンザや豚熱の発生を踏まえた家畜伝染病予防対策に関する政府への提言をまとめた。

江藤前農相を座長とする家畜伝染病予防対策検証プロジェクトチームでは、今年4月に完全施行された改正家畜伝染病予防法について、各畜種の生産者からヒアリングを実施するとともに、昨今の家畜伝染病の発生状況を改めて検証し、制度の見直しを含めたさらなる対策の強化方策について検討した。

議論を重ねた中で、①発生予防措置については飼養衛生管理を徹底することに尽きるが、いまだ生産者によって意識に大きな差があり、繰り返しの指導や地域一体となった取り組みが必要であること②まん延防止措置については、家畜の所有者による埋却地の確保等が不十分であることと、都道府県による対応(特に埋却地の調整、動員体制)に課題があり、結果的に防疫措置の長期化や自衛隊に大きな負担をかける例が多かったこと――などが課題として浮かび上がり、飼養衛生管理基準を順守しない農場名の公表や、家畜の所有者に対する埋却地確保の義務化などの厳しい意見も出されたが、まずは政府・都道府県が改正家畜伝染病予防法を厳格に運用することが必要として提言をまとめたもの。

自民党の発生予防対策とまん延防止対策の提言内容は次の通り。

発生予防対策

(1)飼養衛生管理基準の順守徹底・順法意識の向上

①都道府県は、改正家伝法の核である飼養衛生管理指導等計画を着実に実施することにより、農家の飼養衛生管理基準の順守を徹底させるべきである。

②政府は、飼養衛生管理基準等指針に、地域協議会等の積極的活用・発生状況を踏まえた一斉点検などを明確に位置付けるべきである。また、都道府県ごとの飼養衛生管理の順守状況の公表や、法に基づく是正措置の運用の徹底を図るべきである。さらに、家畜の所有者による埋却地の確保等を確実にするため、飼養衛生管理基準の改正を行なうべきである。加えて補助事業や制度資金にその性質を踏まえ、飼養衛生管理基準の順守を要件としたクロスコンプライアンス(交差要件)を導入すべきである。

(2)大規模農場の畜舎ごとの飼養衛生管理の徹底

大規模農場のうち、飼養頭数・羽数の多い畜舎が複数所在する場合には、当該農場の飼養衛生管理者について飼養衛生を統括管理する責任者に位置付けるとともに、畜舎ごとに責任者を配置するようにすべきである。

まん延防止対策

(1)埋却地の確保と焼却処理施設との事前協定締結
①家畜の所有者は、埋却地の確保や焼却施設との事前協定締結など、発生時に備えた対応を徹底するとともに、事前に周辺の地域住民への説明と合意形成を図るべきである。

②都道府県は、埋却地の確実な確保や、焼却・移動式レンダリング装置の併用等の方針の具体化を進めるべきである。また、政府は、埋却地の確保状況等を都道府県ごとに公表すること。

(2)都道府県防疫体制の改善

都道府県は、最大規模の農場での発生を念頭に、全庁的な職員の対応、畜産・農業団体以外の団体を含む全県的な動員計画と、防疫資材の調達計画を事前に策定し、これに基づき責任を持って防疫措置を行なうべきである。

なお、自衛隊への災害派遣要請は、前記の対応でもなお不足する場合に行なうこととすべきである。

(3)大規模農場の事前の発生対応計画の策定
大規模農場は、都道府県と連携して発生時の対応計画を平時から策定しておくこと。