EUのケージ飼養 50%以下6か国、50%以上10か国 IECの2018年各国報告データ(下)

前号に続き、IEC(国際鶏卵委員会)の加盟各国から報告された2018年のデータと、過去のIECの会員向けデータベースを参考に、本紙が集計した各国の採卵鶏飼養羽数と鶏卵生産量、鶏卵自給率、飼養システム、卵殻色割合、鶏卵の農家販売価格と小売価格などを紹介する。

採卵鶏飼養羽数

各国のレポーターがIECに報告した2018年の採卵鶏飼養羽数が、1億羽以上の国は次の通り。①中国12.5億羽②米国3.30億羽③インド2.89億羽④メキシコ1.61億羽⑤ロシア1.60億羽⑥トルコ1.41億羽⑦日本1.39億羽⑧ブラジル1.16億羽。1位の中国は前年に比べ2億羽減で、その他の上位国の飼養羽数は前年を上回っている。このほか、飼養羽数が減少したのは、フランス、スペイン、オランダ、ポーランド、イタリア、カザフスタン、ニュージーランド、オーストラリア、アルゼンチン。

鶏卵生産量と自給率

2018年の鶏卵生産量の上位10か国は、①中国2200万トン②米国573万トン③インド570万トン④メキシコ280万トン⑤ロシア271万トン⑥ブラジル267万トン⑦日本263万トン⑧トルコ152万トン⑨アルゼンチン97万トン⑩フランス89万トン。鶏卵生産量が前年より減少したのはデンマーク、フランス、スロバキア、スペイン、キプロス、中国、オーストラリア、アルゼンチンで、特に中国は400万トン減の報告であった。

鶏卵の自給率が最も高いのは、オランダの300%で、次いでポーランド160%、トルコ127%などと続き、100%以上の国は16か国。

飼養システム
採卵鶏の飼養方法は次の3通り。①ケージ=従来型のバタリーケージに加えエンリッチドケージやコロニーシステムを含む②平飼い=床面での平飼いや多段式立体のエイビアリーシステムを含む③放し飼い=鶏が鶏舎外に出られるフリーレンジとオーガニック飼養を含む。主に、キリスト教圏を中心に動物愛護団体による政治・経済活動への圧力が高まり、EUでは2012年から従来型ケージの使用が禁止され、エンリッチドケージや平飼い、放し飼いなどへの転換を与儀なくされている。EUに加盟していないスイスは1981年からケージ飼養を全面的に禁止し、EUに加盟しているオーストリアは2020年までにエンリッチドを含むすべてのケージシステムを禁止するとしている。

EUでケージ飼養が50%を切っているのはドイツ、英国、オランダ、スウェーデン、オーストリア、デンマークの6か国(ベルギーは報告なし)。ケージ飼養が50%を上回っているのはフランス、スペイン、ポーランド、イタリア、ポルトガル、ハンガリー、スロバキア、フィンランド、アイルランド、キプロスの10か国。EU以外の国では、スイスやオセアニアの2か国を除いてケージ飼養が多い。

EU主要国の飼養システムの変化をみると、
〈ドイツ〉13年=ケージ11.5%、平飼い64.4%、放し飼い(オーガニック含む。以下同じ)24.1%。18年=ケージ6.7%、平飼い62.7%、放し飼い30.6%。

〈オランダ〉13年=ケージ16%、平飼い63%、放し飼い21%。18年=ケージ11%、平飼い61%、放し飼い28%。

〈英国〉13年=ケージ51%、平飼い3%、放し飼い46%。18年=ケージ44.2%、平飼い1.4%、放し飼い54.4%。

〈フランス〉13年=ケージ68%、平飼い7%、放し飼い25%。18年=ケージ61%、平飼い8%、放し飼い31%。

〈スペイン〉13年=ケージ93%、平飼い2.5%、放し飼い4.5%。18年=ケージ83%、平飼い9%、放し飼い8%。

〈ポーランド〉13年=ケージ90%、平飼い8%、放し飼い2%。18年=ケージ88.3%、平飼い9.1%、放し飼い2.6%。

北米や中南米はケージ飼養が中心。その中で米国は、

〈米国〉13年=ケージ94%、平飼い3%、放し飼い3%。18年=ケージ83.4%、平飼い11.9%、放し飼い4.7%。

英連邦加盟国の中でオーストラリアとニュージーランドはケージ飼養が少なくなりつつあるが、

〈オーストラリア〉13年=ケージ68%、平飼い7%、放し飼い25%。18年=ケージ54.5%、平飼い9.1%、放し飼い36.4%。

〈ニュージーランド〉13年=ケージ82%、平飼い3%、放し飼い15%。18年=ケージ66.4%、平飼い3%、放し飼い30.6%。

有色・白色卵鶏

有色卵鶏(ピンク卵鶏)と白色卵鶏の割合は17年と18年で大きな変化はなかったため、18年のみを掲載。有色卵鶏が80%以上を占めているのはフランス、スペイン、ポーランド、英国、イタリア、オーストリア、ポルトガル、ハンガリー、スロバキア、アイルランド、キプロス、オーストラリア、ニュージーランド。白色卵鶏が80%以上を占めているのは、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、インド、トルコ、イラン、カザフスタン、米国、メキシコ、カナダ。日本は前年と同じで白色卵鶏60%、有色卵鶏40%。中国も前年と同じで白色卵鶏35%、有色卵鶏65%。

農家販売価格と小売価格
各国のレポーターが報告したケージ卵1ダース当たりの平均的な農家(農場)販売価格と小売価格をみると、卵の価格が最も高いのはスイス。同国はケージ禁止のため平飼いの卵となるが、農家価格2.91ドルに対し小売価格は2.19倍(前年は2.22倍)の6.38ドルとなっている。次いでイタリア、デンマークは前回と同じ順位。イタリアの小売価格は農家価格の3.07倍(同3.53倍)、デンマークは4.16倍(同4.08倍)、フィンランドは3.33倍(同3.44倍)、オランダは2.68倍(同2.56倍)と続き、日本は農家価格1.33ドルに対し小売価格は1.77倍(同1.76倍)の2.36ドルとなっている。農家価格と小売価格の差が大きいほど、流通マージン率が高いことになる。