食鳥相場は全体的に需給が緩む 先行きに不安感も
(一社)日本食鳥協会(佐藤実会長)は3月23日に理事会を開き、平成29年度事業の実施状況などを報告したほか、30年度事業計画案と予算案を了承した。
理事会であいさつした佐藤会長は、国産チキン産業の状況について「ここ3~4年とは様変わりした。日経相場そのものは底堅く推移しているが、相場ほど順調に荷物が動いているとは思えない。この要因の1つには国産豚の枝肉相場が4年ぶりにキロ400円を切り、なかなか浮上できないことが挙げられる。背景には輸入豚肉の大幅増加がある。豚肉が安いと、スーパーや量販店では鶏肉の売り場が狭まり、荷余り感に直結する。そういう意味では危機感がある。
昨年後半から年初にかけては増産意欲から羽数も増えると予測し、実際に増えていく兆候にある。先行き軟調な市況予測に対し、我々は国内の内需を高める活動を会員と共に進めていく必要があると考えている」とし、国産チキンの良さや優れた機能性などを記したパンフレットを会員企業の従業員に配布して広めてほしいと要請した。
鶏肉の需給動向については、各部会から次のように報告された。
▽生産加工部会=生産状況は、寒い時期に大腸菌症などで少し崩れたところもあったが、春に向けて回復してきており、おおむね順調と言える。販売についてはまちまちであったが、ささみ、もも肉、むね肉の順で余剰感が出てきていると認識している。むね肉が硬くなることについては、USチャンキーからUKチャンキーに替わって様々な意見があり、実態がつかめていない。
▽荷受部会=1月ごろまではテーブルミート向けも好調であったが、3月に入り、全体的に需給が緩んでいる。産地での育成が良好で入荷が潤沢であるにもかかわらず、売れ行きはむね肉、ささみ、好調だった手羽元、手羽先も動きが鈍っている。もも肉は冷凍に回さないように特売などでさばいているが、年度末を控えても若干冷凍に回っており、在庫を積み増している荷受もある。国産豚肉の相場が輸入チルドポークの過剰出回りの影響で下がり、国産チキンの売り場が減っている。
輸入鶏肉については、ブラジル産のサルモネラ検査結果改ざんなどの問題はほとんど影響ないが、タイ産むね肉がEU向けに一部ストップしていることもあり、日本向けにキロ210~230円の安い価格で入ってきている。原料原産地表示の問題はあるが、何と言っても安いため、タイ産むね肉にシフトするメーカーも見込まれ、相場が下落する懸念もある。
人手不足、配送運賃や資材関係の値上げなどの要請が来ているが、末端売価が上がっていない中での交渉となるため、非常に厳しいのではないか。荷受部会としては先行きに不安がある。
▽小売部会=昨年12月の売り上げは非常に良かったが、今年に入り、1月中旬以降は厳しくなった。原因の1つは天候不順で、関東では大雪で閉店時間を早めたり、入荷できずに売り上げに影響した。もう1つは野菜の高騰で、葉物や大根の価格が例年の2倍以上で品質も悪く、品薄感もあって鍋物をする頻度が減り、畜産物や水産物、豆腐などの鍋物材料が影響を受けた。
2月には平昌オリンピックがあり、フィギュアスケートの羽生結弦選手が登場した17日や25日には放映時間もあり、売り上げが減少した。3月には豚肉価格の下落などの影響も出てきている。
こうした中で特に影響を受けているのは若鶏や銘柄鶏、ささみなどで、地鶏や半製品については横ばい。加工品はそれほど影響を受けていないが、コンビニや総菜店などがチキン総菜をかなり出している。節分やバレンタインデーといったイベントでは集客力はあるが、それ以外の平日については消費者の財布の紐は固い。今後の花見や行楽シーズンには天候も含めて期待している。
業務卸では、1~2月は雪、3月は気温差などで飲食店が苦労している。昨今は休みが増えてお金の使い方が変わってきており、居酒屋などの飲み屋は苦戦している。個人の飲食店は後継者問題もあり廃業するところが多い。チェーン展開や新規の焼き鳥店も多く、店舗数は増えているが、1店舗当たりの納品数量は減ってきている。業務卸でも、むね肉の蒸し鶏がよく売れており、用途はサンドイッチやサラダなど多岐にわたる。配送に関しては人手不足もあるが、トラックも不足しているとの話もある。
仕入れは比較的潤沢で特に手羽元、ささみ、砂肝などはダブついている。地方ではホテル、居酒屋、学校給食でも地産地消が求められている。
▽種鶏ふ卵部会=ひな需給は、今年2月に各社とも不足と予測していたが、3月に入り、ほぼ計画通りでバランスはとれていると感じている。この最大の要因はチャンキー種鶏がUSからUKに替わったこと。もう1つは、増産に関してコマーシャル農場の建設が予定通りに進んでいないことがある。当初の予定では8月から需要に対応できる種卵の数が出せないと予測していたが、このまま農場建設が遅れると、8月の不足分もチャンキーの成績改善分でトントンになるのではないかとみている。いずれにせよ、夏場の気温がどうなるか読めないため、天候次第で変わってくる。
▽インテ部会=豚肉の需給が1月下旬ごろから非常に調子が悪い。カナダ産豚肉の品質が上がっており、国産に対抗し得るものになっている。売り場にも浸透した影響で国産相場の下落につながり、その影響を鶏肉が受けている。3月中旬から各商社とも輸入量を減らしており、国産豚肉は上昇局面を迎えると予想されるが、今までの局面と少し変わってくる。