薬剤耐性対策が課題に G7サミットでも宣言 抗菌剤の慎重使用へ

薬が効かなくなる薬剤耐性(AMR)の問題が世界的に増えたことから、2015年5月の世界保健機関(WHO)の総会で、薬剤耐性に関する国際行動計画が採択された。
背景には、①人に対する抗微生物薬の不適切な使用などにより、病院内を中心に新たな薬剤耐性菌が増加している②先進国の主な死因が結核などの感染症からガンなどの非感染性疾患へと変化する中で、新たな抗微生物薬の開発が減少している③多剤耐性・超多剤耐性結核(抗酸菌)、耐性マラリアなどが世界的に拡大している④動物における薬剤耐性菌は動物分野の治療効果を減弱させるほか、畜産物などを介して人に感染する可能性がある――ことなどが指摘されている。
このため、畜産分野でも、家畜の伝染病予防対策を示した飼養衛生管理基準の順守の徹底、安全な畜産物を生産するための生産衛生管理ハンドブックの普及やワクチン使用の推進などに取り組むとともに、動物用抗菌薬の使用も、これまでの“適正使用”から“慎重使用”(使用すべきかどうかの判断を含め、耐性菌の出現を最小限に抑える使用)とするよう求められている。
薬剤耐性の問題は、5月26~27日に、三重県で開催された伊勢志摩サミット(G7首脳会合)でも、共同で取り組むことを誓約した「G7伊勢志摩首脳宣言」の中に取り上げられ、「人および動物の健康、農業、食品並びに環境を含む分野を考慮し、多分野にわたるワン・ヘルス・アプローチを積極的に実施し、強化する」「分野横断的なサーベイランスを強化するため、また他の国や民間部門のパートナーとの協力により効果的な抗微生物剤へのアクセスを向上するため、既存の抗菌剤の保存を含め、抗微生物剤の有効性維持のために特段の努力をする。また、AMRに直面する中で(中略)研究開発(R&D)の促進を検討することなどにもコミットする」などとされた。
日本は、WHOの要請を受け、今年5月に内閣府が日本版の行動計画を作り、その中で畜産分野では、2014年を基準とし、2020年(目標)には、牛・豚・肉用鶏由来の大腸菌のテトラサイクリン耐性率(平均)を45%から33%以下に、大腸菌の第3世代セファロスポリン耐性率を1.7%(G7各国とほぼ同水準)からG7各国の2020年の数値と同水準に、大腸菌のフルオロキノロン耐性率を4.7%(G7各国とほぼ同水準)からG7各国の数値と同水準にすると定めた。農林水産省はこれを基に、今年度内をメドに畜種別の実行計画と工程表を作る予定。
最近、岩手県の定期立ち入り検査で、処理した鶏肉から抗生物質のテトラサイクリン類が国の基準の約2倍に当たる0.41ppm検出されたとして、回収命令が出された(この鶏肉を食べたとしても、ただちに健康への悪影響はない)が、出荷元によると、これまでも飼料にテトラサイクリン類を使用しておらず、現段階では原因不明とのこと。各インテでも、農場段階での安全・安心の取り組み指導を徹底していかなければならない。

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