TPP大筋合意 鶏卵肉の関税撤廃
TPP(環太平洋経済連携協定)交渉に参加する日本や米国、オーストラリアなど12か国は、9月30日から10月5日まで米国ジョージア州アトランタで開催した閣僚会合で、包括的な市場アクセスなどで大筋合意した。
農畜産物の重要5項目(米、麦、牛肉・豚肉、乳製品、甘味資源作物)は、一定の関税を維持するなどの影響緩和策が導入されたが、重要5項目に含まれない鶏卵・鶏肉の関税は一定期間を置いて撤廃される。
鶏卵の凍結卵白と卵白粉(現行8%)はTPP発効時に即時撤廃。
凍結全卵(21.3%または51円/キログラムのいずれか高い方)と凍結卵黄(20%または48円/キログラムのいずれか高い方)は毎年段階的に引き下げて6年目に撤廃。
ゆで卵などのその他殻付卵(21.3%)は毎年段階的に引き下げて11年目に撤廃。
生鮮・冷蔵殻付卵(17.0%)は発効時に20%削減して6年間据え置き、7年目から毎年段階的に引き下げて13年目に撤廃。
全卵粉(21.3%)は発効時に50%削減して6年間据え置き、7年目から段階的に引き下げて13年目に撤廃。
卵黄粉(18.8%)は段階的に引き下げて6年目で撤廃。
鶏肉のその他鶏肉(11.9%)は段階的に引き下げて6年目で撤廃。
骨付きもも(8.5%)は段階的に引き下げて11年目で撤廃。
牛豚肉を含む鶏肉調製品(6.0%)は段階的に引き下げて11年目で撤廃。その他の調製品(6.0%)は段階的に引き下げ6年目に撤廃。
家きん肉(9.6%)や七面鳥肉(3.0%)は発効時に即時撤廃など。
重要5項目の中で、米は、関税を維持する代わりに特別輸入枠(SBS方式、発効13年目以降は米国=7万トン、オーストラリア=8400トン)を新設し、米国産米の中粒種・加工用枠優遇策(6万トン)を新設する。
麦は、国家貿易制度を維持するが、事実上の関税である政府管理経費相当のマークアップ(売買差益)の徴収を45%削減する。飼料用小麦や大麦は、食用への横流れ防止措置を講じた上で、マークアップを徴収しない民間貿易に移行させる。
牛肉は、現行38.5%の関税を段階的に削減し、16年目以降は9%まで下げる。TPP参加国からの輸入量が一定水準を超えた場合にはセーフガード(緊急輸入制限措置)を導入するが、16年目以降4年間、セーフガードの発動がなければ廃止する。
豚肉は、差額関税制度を維持するが、範囲を縮小し、低価格帯豚肉の従量税は、現行1キログラム482円を125円に下げ、10年目に50円にする。高価格帯従価税の4.3%は2.2%にし、10年目以降に撤廃。関税削減期間中は、輸入急増に対するセーフガードを11年目まで確保するが、12年目に廃止。
乳製品では、現行の国家貿易制度と、枠外税率を維持するが、脱脂粉乳やバターの低関税輸入枠をニュージーランドと米国、オーストラリア向けに設定する。チェダーやゴーダなど一部のチーズの関税は16年目、ホエイ(乳清)は21年目までの長期の関税撤廃期間を設定するなど。
関税撤廃により鶏卵・鶏肉とも加工用や業務用で輸入量が増加すると予想される。政府の試算でも、鶏卵は国内生産量が17%、鶏肉は同20%程度の減少が見込まれている。鶏卵では平成26年の成鶏めす羽数約1億4000万羽のうち約2300万羽分、鶏肉ではブロイラーと地鶏の年間出荷羽数約6億9000万羽のうち1億3400万羽分の需要がなくなる計算で、影響緩和策などが必要とみられる。
TPPは、全参加国が2年以内に議会承認するか、またはGDPの合計が85%以上を占める6か国以上が合意すれば発効する。