産地の不安解消、増産期待 農水省が飼料用米でシンポジウム

農林水産省は4月15、16の両日、同省講堂で「飼料用米生産・利用拡大シンポジウム」を開き、飼料用米の生産者や農協、流通業者、配合飼料メーカー、畜産生産者、都道府県、研究機関など、700人を超える関係者が参加した。
政府が閣議決定した新たな「食料・農業・農村基本計画」で、飼料用米の10年後(平成37年度)の生産努力目標を現状の10倍の110万トンと設定した。この目標の達成には、飼料用米の生産から消費にわたる幅広い関係者の理解を深めていくことが重要であることから、同シンポジウムを開いたもの。
林芳正農林水産大臣は主食用米の需要が毎年8万トンずつ減少していることを挙げ、「稲作農家の経営安定のためにも飼料用米、加工用米への転換を円滑に進めていくことが大事だと考えている。
畜産に目を転じると、畜産経営に占める飼料代の割合は牛で4~5割、濃厚飼料中心の豚と鶏で6~7割にのぼり、原料のほぼすべてを輸入に依存している。飼料用米は数少ない国産の飼料穀物であり、飼料自給率を向上させ、畜産が地域の水田農業とともに発展するうえでも、飼料用米に取り組むことが大変重要だと考えている」などとあいさつした。
皆川芳嗣事務次官は講演の中で「飼料用米の生産拡大については、与野党間でもいろいろ議論されているが、『飼料用米の助成策をしっかり講じながら、新基本計画の生産努力目標に向けてがんばる』と、閣議決定した文書に明記し、大臣、副大臣も国会の農林水産委員会で答弁している。我々は継続的にしっかりと対応していく」と決意を表明した。
JA全農営農販売企画部の谷清司専任部長は、平成27年産飼料用米の60万トンへの生産拡大に向けて、県別生産ガイドラインを決定したと報告。新たにJA全農が生産者から直接買い取るスキームを構築し、生産者が安心して飼料用米の生産に取り組める環境を整えるほか、流通・製造対策では①産地別の供給数量と飼料工場別の使用数量を想定した効率的な保管・中継基地と輸送手段の確保②カントリーエレベーターからのバラ出荷など流通コスト削減③原料受入口の整備、粉砕能力の増強など製造設備の整備の検討――などを進めると説明した。
(協)日本飼料工業会の平野昭専務理事は、工業会組合員へのアンケート調査で飼料用米の需要量は41万トン、中長期的需要量は196万トンであったが、平成26年は4万4000トンしか確保できなかったと報告。米流通の経験や実績が乏しく、保管施設の整備や流通ルートの確保など、多くの課題があるとしたうえで、「我々が供給している畜産農家の飼料用米に対する需要は非常に大きいため、これらの課題を解決することによって、飼料用米の流通効果が大きく発揮されると思う。110万トンを見据えた体制の構築が急務である」などと述べた。

27年産の飼料用米需要量は約105万トン

農林水産省が4月10日に公表した「米に関するマンスリーレポート」では、27年産飼料用米の需要量について、全農グループ飼料会社が年間60万トン(使用可能数量で、MA米・備蓄米含む)、(協)日本飼料工業会組合員工場が同40万8000トン(MA米・備蓄米含まず)、畜産農家の新規需要は102件、4万5055トン(うち確保済みが23件、9135トン)で、全体では105万3055トンとなっている。
【飼料用米生産・利用拡大シンポジウムであいさつする林芳正農林水産大臣】

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