需給大失調で混乱する鶏卵業界 暴落卵価からの脱却を

安くて健康にも良い価値ある“タマゴ”が市場にあふれ、暴落相場でも消費者はバカにしたのか、あまり食べてくれず、ある流通業者は「売れないタマゴをつくっている生産者は罪だ」と、〇〇の鶏飼いでない、聡明な生産者を恨んでいる。
暴落卵価は、生産者だけでなく流通業者、スーパーなどの量販店、関連業者を含め、かつて経験したことのない厳しさに見舞われ、みんな苦しい。卵価の暴落は何一つ良いことはない――と悲嘆にくれる。
これまでなら、生産者は養鶏危機だ、と大騒ぎしたかもしれないが、驚くほど静かである。国際化や規制緩和で、養鶏を取り巻く環境が変化したことから、大多数の生産者は計画生産(生産調整)の継続よりも、主体的判断による自由を望んだ結果、懸念されたように増羽が進み、低卵価を招いたのだから最悪である。
今年は、卵価安定基金の補てん財源に比較的余裕があるため、加入者は何とか乗り切ることができるかもしれない。しかし、エサ高や、消費の低迷が依然として続き、低卵価が続くようであれば、来年はさらに大変な事態になる。
しかも鶏卵を取り巻く環境は激しく変化している。これまですべて国産の卵を使っていたフリーズドライの卵スープが、海外で生産されて日本に輸入されるとか、ゆで卵用の小玉の手当てが海外で行なわれるとかの話が伝わっているように、海外から卵や卵加工製品がこれまで以上に輸入されると、国内の需給や価格に影響を与えることは必至である。
加えて、ピークに達した消費人口は、今後は少子高齢化が一段と進み、数年先には人口そのものが減少する。当然、消費の絶対量の減少と同時に、消費構成も変わってくることが予想される。
環境面では、鶏糞の処理問題だけでなく、排水、悪臭も含めた規制は今後もますます厳しくなる。
食の安全性に対する法整備も今国会で強化された。鶏卵や鶏肉の適正表示は当然のこと、一層の安全・安心を保証するためのHACCP手法や、トレーサビリティシステムの導入も求められる。
さらに、鳥インフルエンザをはじめとする新たな鶏病の侵入も心配される。特にサルモネラを含む人畜共通感染症は、鶏の被害の問題以上に、生産物である鶏卵や鶏肉の消費にも影響するだけに、十分な危機管理体制を備えておかなければならない。
現在、検討されている生産分野の組織強化についても、参加すべきかどうか迷いがあるように感じるし、金の面でタイミングが悪いことも察せられる。
しかし、業界全体の将来を考え、少しでも実りあるものにしようとするならば、飼養羽数でトップリーダーと言われ、影響力の大きい大規模層、なかでもトップ10の生産者はすべて参加し、会長、副会長などの役職を率先して引き受け、業界をより望ましい方向にリードすべきと思う。
それをすることによって、関連産業にも多大な迷惑をかけない、生産者組織にすることにつながるのではなかろうか。
レイヤー産業に携わっていて本当に良かった、とつくづく思えるような業界に1日も早くしてほしいものだ。

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