国内初の英国・EU 向け卵製品輸出認定施設に 籠谷の浜風工場
㈱籠谷(栗原直樹社長―本社・兵庫県高砂市)の浜風工場(同市荒井町新浜2-9-21)が4月12日付で、英国を含む欧州連合(EU)に輸出可能な冷凍液卵を生産できる「欧州連合向け卵製品取扱施設リスト」に国内で初めて登録された。EU向けの卵製品などの取扱要綱で定められた要件を満たしたことが、厚生労働省から認定されたもの。
EU向けの卵や卵製品の輸出については、2019年3月に日EU・EPAが発効し、日本が第三国リストに掲載されたことで、卵の割合が50%未満などの条件を満たすマヨネーズやカステラなどは基本的に可能となっていたが、この条件から外れる殻付卵や液卵などは、生産・加工施設が認定を受けてリストに登録されないと輸出できない。
EUは食品の管理や安全性について極めて厳格なことで知られ、輸出に際しては非常に多くの要件や書類の準備が求められている。卵製品についても様々な要件に加えて、前述の要綱(英国および欧州連合向け輸出食肉製品、乳製品、殻付き卵および卵製品の取扱要綱)で「施設の構造設備および衛生管理等に関する基準」や、HACCPに基づく衛生管理などへの対応を求めている。
籠谷は早くから第三者認証による衛生管理に注力し、15年には最も厳格とされる食品安全マネジメントシステムの国際規格「FSSC22000」認証も本社工場と浜風工場で取得。昨年には香港への輸出も開始している。ただ、EU向けについては、前述の衛生管理に関する基準で、卵の洗浄などに使う水が「水道水または飲用に適する水」に限定され、日本の「液卵の製造等に係る衛生確保について」や「卵選別包装施設の衛生管理要領」などで示されている次亜塩素酸水などを使った洗浄が不可となっている。このため籠谷では、EU向け製品の原料卵については水だけで洗浄できるように、洗卵設備を増設して対応。昨年12月に厚労省やEUの職員の査察を受け、今年の認定に漕ぎつけた。
今後は、日本の卵を使った冷凍液卵を欧州の食品メーカーに販売し、卵焼きや菓子などに活用してもらうことで、日本食の一層の普及や日本の魅力のPRを図る。
国内初の輸出認定取得で最も苦労した点と、今後の抱負について同社は「これまで受けてきた国際認証とは異なり、国内での前例が全くない中で書類や工程を作り上げることが大変でした。日本と欧州の衛生に対する規格・考え方の違いなどもあり、これまでの製造工程を一から見直しながら、一つひとつすり合わせていくことが一番苦労した点です。コロナ禍の中で対応に苦労したところもありましたが、本認定の取得を機に、これから日本の安全・安心な食材を世界に一層広めていきたいと考えています」とコメントしている。