鶏卵・鶏肉需給は厳しい状況が続く 成鶏更新・空舎延長事業が発動
政府は5月14日、39県の緊急事態宣言を解除。東京や大阪など8つの都道府県でも、5月21日に解除の是非が判断される。ただ、宣言の解除後も密集・密閉空間を避ける行動などが、引き続き求められるため、激減した業務・外食需要は当面、それほど回復せず、厳しい需給情勢が続くとみられている。
鶏卵
5月の鶏卵相場(全農M基準)は、大型連休明けの7日に各地で下押しし、11日には大阪と福岡でさらに5円下落。18日にもさらに各地で5円下がり、東京相場は前年同日と同じ165円に下落。標準取引価格は、安定基準価格を1円下回る160円となり、成鶏更新・空舎延長事業が発動した。
需給失調は業務・外食需要の大幅な減退によるもの。既に飲食業界では、休業で固定費だけが出ていく中、経営維持が限界に来ており、各社は持ち帰り総菜・弁当の販売のほか、本格的な営業再開を模索し始めている。これにより業務筋の引き合いも部分的に増えているが、消費者には引き続き3密を避ける行動が求められており、全体では平年を大きく下回る状況に変わりはない。関東からは依然「4~5割減」、関西からも「5~7割減」など、厳しい声が聞かれている。
仕入れを再開した店舗についても「営業再開に伴う在庫のための発注で、仕入れが一段落すれば、再び大幅に減少するのではないか」との指摘が多い。ホテル・観光関係や学校給食の需要なども、まだ戻る見込みが立っていない。
加工関係も、人が動かないため贈答用の菓子向けのニーズなどの激減が続く。全体でも「平年の2~3割減」などの声が聞かれ、加工筋の手当ては期待しにくい情勢。
テーブルエッグは、関東で「5%~1割増」、関西で「2割増」など、平年を上回る推移は続いているものの、一時よりは落ち着いており、鶏卵需要の半分を占める外食・加工の減少を補うまでには至っていない。
生産は引き続き順調に推移することが見込まれるため、業務・外食需要が回復しなければ、相場の回復も難しい。成鶏更新・空舎延長事業が発動したが、成鶏処理場も販売先の休業やキャパシティーの問題から受け入れが難しくなっている。このような環境下でいかにして需要に見合った生産体制を構築し、国産卵のフードチェーンを守っていくかが課題になってくるとみられる。
鶏肉
4月の食鳥相場(日経・東京、正肉加重)は、もも肉は前月比7円高の582円(前年比19円安)、むね肉は同2円安の241円(同9円高)で、ほぼもちあい傾向となった。この傾向は連休中も続き、5月18日時点では、もも肉611円、むね肉254円と強もちあいで推移している。
これは、国内の潤沢な供給を「量販店の正肉販売でさばいている」(東日本の鶏肉卸)ためで、もともと外食の消費割合が高い国産の副産物や、高付加価値の銘柄鳥や地鶏の荷動きは、きわめて厳しい状況が続いている。特に地鶏は、企業の宴会やホテルなどの需要が激減。在庫を抱える産地も多く、「飲食店などが通常営業に戻らない限り、荷動きは回復しない」と指摘されている。
鶏肉の小売り需要については、他の食肉に比べた安さなどから消費者の節約志向を捉え、前年を上回る推移を維持している。業務需要が激減している輸入鶏肉も、量販店の特売などでかなり売れたとのこと。買いだめ需要に対応した凍結品も、国産・輸入問わず量販店でよく売れているという。
量販店需要については「ピークは過ぎた」と指摘する声も聞かれるものの、今後も基調としては量販と外食で明暗が分かれる状況が続くとみられ、相場はもちあい圏内で推移すると予想されている。