新たな畜舎建築基準 中間とりまとめ案の概要

制度の位置付け、対象畜舎、手続き

○新制度は国際競争力の強化に向けた畜産振興と建築・経営コスト削減の観点から位置付け、一定の安全性を確保した上で建築基準法の特例として措置し、一定の基準を満たす事業者(畜産農家など)のみ新制度の活用を選択できる。

○畜産農家などからの要望を踏まえ、新築・増改築の際に事業者が「新制度による基準」または「建築基準法による従来の基準」を選択できる仕組みとする。

○新制度に基づく基準は農林水産大臣が示すこととする。

○新制度による基準の概要

①対象畜舎

▼新制度の対象となる施設は、畜舎(家畜の飼育施設)とその関連施設(たい肥舎と搾乳施設)とし、それが建築基準法上の建築物か工作物かは問わない。

▼対象の畜舎は新制度施行後に新築、増改築(既存畜舎部分についても新基準への適合が必要)されるものに限る。また、建築士の設計に基づき、建築されたものに限る。

▼市街化区域と用途地域などを除いた地域に建築される平屋の畜舎を対象とし、高さ、軒高は、今後検討する(現行建築基準法の下で緩和措置が適用される高さは13メートル、軒高は9メートル)。

▼延べ床面積の上限は定めない。

②手続き

▼新制度で、畜舎の利用に関する計画と畜舎の設計に関する計画を事業者が作成し、行政はその内容がそれぞれソフト基準とハード基準を満たしているか確認する。

▼ハード基準の確認手続きについては、一定の基準を満たすものは除外するなど、簡素化する。
(例…ハード基準に関する確認が不要となる面積〈建築基準法では木造500平方メートル、その他200平方メートル〉の大幅な引上げ)

▼ソフト基準に従って畜舎として利用されているかなど、行政が定期に確認する。

○JIS部材でない部材(海外規格を満たしている部材を想定)とシステム(海外製ドーム畜舎などのユニット)については、強度試験などを行なった上で使用を認める方向で検討する。

基準

〇新制度を選択した場合には、2基準(A基準とB基準)のどちらかを事業者が選択できる。

○畜種固有の事情があれば、畜種ごとに必要な基準を定める。

【A基準】簡易なソフト基準(後記)+現行の畜舎建築基準に準じたハード基準(当初は現行と同程度のものとし、現行法上の運用を明確化したものを想定。A基準のハード基準は、新制度施行後に技術的な検討〈実物実験など〉を踏まえた上で緩和を検討)→A基準全体として、現行の畜舎建築基準と同等の安全性を確保(新たに手続き簡素化のメリット・将来のハード基準緩和のメリット)

【B基準】ソフト基準(後記)+新ハード基準(畜舎の建て替えの頻度と規模別の地震の発生頻度などを考慮し、例えば震度5強程度の地震では倒壊しないが、震度6強~7に達する程度の地震では倒壊するおそれを否定できない基準を想定し、今後リスクへの対応のあり方などを踏まえて検討)→B基準全体として、畜舎に必要な最低限の安全性を確保(手続き簡素化のメリットに加え、即時のハード基準緩和のメリット)

ソフト基準のイメージ

〔畜産振興の観点からの基準〕

①プロセス(作業・動線)の改善や省力化機械の導入などによる作業の効率化に関する計画②プロセス(作業・動線)の改善や機械導入などに伴う作業人員の減少見込み③家畜排せつ物の処理など、法令順守に関する事項――など

〔安全面からの基準〕

A基準=滞在密度の規制、避難路の確保などの簡易な基準

B基準=①「B基準で建設されたものであること」の明示②作業効率化による畜舎内滞在時間の削減などを十分加味した滞在密度の規制③避難手順の明確化など確実な避難路の確保④避難に時間がかかる場合などにおける避難スペースの確保――など

新基準を定める際に検討すべき事項

〇新ハード基準・ソフト基準を定めるに当たっては、農林水産省で以下の事項について検証し、具体的な案とすることが必要である。

〔検証すべき事項〕

①新ハード基準のコストの検証

▼作業の効率化などによる国際競争力強化の効果を最大化できる基準とする。

▼現行の基準と比べて基礎・構造部材などについて、どれくらいの削減(量・金額)が見込まれるかを意識し、コスト削減が実現できる新ハード基準とすべき。

▼防災の観点からの要件で必要となるコストがあった場合であっても、経営として十分なコスト削減となる新ハード基準とすべき。

▼新ハード基準の検討に当たって、海外の畜舎の事例や、国内の膜構造畜舎の事例などを参考とすべき。

▼基準の決定に当たっては畜産農家の意見を聴いて行なうべき。

②ソフト基準の検証

▼防災の観点から確保する必要のある安全性は、避難路や避難スペースの確保などのモデルのほか、プレハブ(ユニット)工法を導入したモデルと作業の効率化による畜舎内の滞在密度減を前提とするモデルなど、複数のモデルを設定して検証すべき。

▼プロセス(作業・動線)の改善や省力化機械の導入などによる作業効率化などのコスト削減効果について検証すべき。

▼基準の決定に当たっては畜産農家の意見を聴いて行なうべき。