鶏卵・鶏肉生産は安定的に推移 自粛要請で店頭は一時品薄も

都の外出自粛要請後、都内のスーパーでは畜産物も一時的に品薄に。3月26日には売り切れ状態となる卵売り場もみられた

新型コロナウイルス感染者数の急激な増加を何とか抑え込もうと、各国政府は人の交流を閉ざす政策を拡大している。

日本でも厚生労働大臣の報告を受け、安倍首相は3月26日、改正新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を一定の条件下で可能にする「政府対策本部」の設置を指示。

自治体単位でも、東京都の小池都知事は3月25日、「感染爆発の重大局面」にあるとして、平日は可能な限りの自宅勤務、週末は不要不急の外出自粛を要請し、神奈川、埼玉、千葉、山梨の各県知事らと共同メッセージを発信。これを受けて、多くの消費者がスーパーに集まり、都内の小売店などでは、食料品がにわかに品薄になった。

ただ、国内の鶏卵や鶏肉の生産・処理・流通は通常通り稼働している。特に生産現場は、高病原性鳥インフルエンザなど様々な困難に対応する中で進化してきた厳格な衛生管理の下、安全・安心で栄養豊富な鶏卵・鶏肉の生産を続けている。

食鳥処理場や鶏卵加工施設などでも、新型コロナウイルスが問題とされる以前から、始業前の従業員の体温測定や、手指の殺菌、器具や設備の定期的な消毒、専用の衣服やマスク・靴の着用などに取り組み、現在は直接食品に触れない営業や事務などの担当者も、手洗いと手指の消毒などの徹底や、体温が37.5度Cを上回った際の自宅待機などの対応を強化するところが増えている。

農水省では江藤大臣が「食料品は十分な供給量を確保している」とのメッセージを発信し、落ち着いた購買行動を呼びかけたが、本当に必要な人のところへ食べ物が届かないと別の危機を生じさせるため、行政からは人々が冷静に行動できるような情報を適切に周知するとともに、必要な食品の購入や生産流通関係者を外出自粛の除外対象と明示するなど、細かな目配りをした獅童が必要と考えられる。

直近の鶏卵需給については、内食・中食や通販・宅配需要が急激に高まる一方で、業務・外食需要が急減。鶏卵相場は3月3日以降、もち合いを続けたが、首都圏での外出自粛要請後の27日に各地で5円上昇し、3月30日現在の月間平均は前月比12円高、前年同月比は28円高の197円となった。

鶏肉も家庭消費などは増加したが、学校給食やホテル、レジャー施設、飲食店の需要が激減し、もともと潤沢な供給もあって相場(東京・正肉加重)は弱含みで推移。3月28日現在の月間平均は、もも正肉が前月比22円安の575円(前年同月比52円安)、むね正肉が前月比9円安の243円(同5円高)となった。

今後についても、東京五輪の1年程度の延期が決まったことや、自粛要請などの終息がみえないことから、当面、鶏卵・鶏肉相場の上昇の可能性は薄いとみられている。